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133:Dランクパーティーですけどガメオウ山に突入します



 翌朝、未だ私をガメオウ山に行かせたくない両親の引き留めを「はいはい」と振り切って、いざ出陣。


 どうやら夜に村を襲ってくる魔物は居なかったようだ。

 もちろん皆無なわけないので、間引きか警備担当の冒険者パーティーが村に迫る前に倒したのだろう。


 冒険者パーティーは【蒼き風(ブルーブロー)】と【銀の鎖(シルバーチェイル)】の他に今は五組ほど来ているらしい。


 ランクはBかCのベテランだそうだが、実績的に見て【蒼き風(ブルーブロー)】と【銀の鎖(シルバーチェイル)】が上。

 冒険者全体の統括はモーブビィさんの役割との事。



 そんな人たちでも苦戦したというガメオウ山の調査。

 不安な気持ちよりも「やったるぜ!」という気合いが勝つ。

 夜を徹して戦い続ける冒険者や騎士団、衛兵の人たちに北門付近で挨拶を交わし、私たちは村を出た。



 村からガメオウ山までは森を突っ切って行く事になるが、一応道らしきものはある。ほとんど獣道だが。

 ガメオウ山にも山道めいたものはあるらしい。念の為ルートは聞いている。



 早速森へ入り、警戒を密にしながら進む。


 進み方はダンジョンの探索と変わらない。

 サフィー、ポロリンが前。ネルトとリーナが中。私とソプラノが殿だ。

 森である以上ネルトの<ホークアイ>も使えず、<グリッド>及び私とサフィーによる察知で索敵を行っている。


 やってる事はダンジョン探索と同じなのだが、違う点も多々ある。当然だけど。

 地下迷宮のような造りではないから四方八方から敵の強襲を警戒する必要があるし、見通しも悪ければ足元も悪い。


 逆に罠を心配する必要がなかったり、ダンジョンでは使えなかった<ホークアイ>やサフィーの<轟雷>なども使えるという利点も。まぁどっちも場所を選ぶんだけどね。



 そんな一風変わった探索なので、気になった事は口に出しつつ、改善と対応を重ねながら進む。



「んー、<グリッド>のタイミングが分からない」


「ダンジョンみたいに曲がり角とかないですからね、使いまくったらすぐMP切れますよ」


「補充が厳しい事を踏まえればMPポーションもあんまり使いたくないね。索敵は私とサフィーだけにしよう。サフィーは<忍術>も控えるようにね」


「私が<マジックヒールバブル>を使うにしても<MPドレイン>が可能な敵ばかりとは限りませんからねぇ」


「継戦能力の維持を優先ですね。そうなると攻撃はわたくしとピーゾンさん中心ですか」


「索敵能力は下がりますけれど、むしろ一度ポロリンさんに当てるくらいでもよろしいのではなくて? そうすれば近接物理を叩き込みやすいでしょうし」


「そうした場合だとさ――」



 こうした作戦会議と探索と特訓を兼ねるようなものって言うのは、それこそ『禁域』での日常だった。


 少しでも気になれば口に出す。不安があれば解消する。

 そうして改善していかないと、あのレベルのダンジョンで探索など出来ないのだから。


 同じような事が我が故郷の近所でも行われているという恐ろしさ。

 私はどんな魔境に住んでいたのかと、いや今だけなんだろうけどさ。

 ともかくそうした”いつもの探索”をしなければ危険に思える場所だという事だ。



 森に入るや否やゴブリンの集団の中にはゴブリンナイトやメイジ、ホブゴブリンまで混じっている。キングは居ないけど。

 昨日戦ったばかりのフレイムヴァイパーも居るし、スピニングビーという大きな蜂の群れも居た。

 森の浅い所でさえ、E~Dランクが基本でしかも数が多い。


 Cランクのダークボアが村まで迫った事を考えれば、この先Cランクが出てくるのは確実だ。

 ガメオウ山の麓に行くまででもこの有様。【銀の鎖(シルバーチェイル)】が撤退したのもよく分かる。



 まぁ『禁域』に慣れた私たちからすると平常運転ではあるんだけど。

 油断は出来ないが対処出来ないほどではないと。ソプラノが加わった事もあり余裕さえある。



「ここで<呼び込み>したらどうなるんだろうね」


「ちょっとしたスタンピードになりますよ……」



 そんな軽口さえ出る。いかんな、気を引き締めよう。




■■■




「マニュエズさーん、例のパーティーが向かって来るみたいですよー」



 ツナギを来た少女、イグルが一応とばかりに報告する。


 イグルは大小様々な鳥系の魔物を使役する【鳥獣匠】という固有職(ユニークジョブ)

 鳥と意思を通わせる事によって、その鳥が見た光景をイグルに伝える事が出来る。

 【幻惑の蛇(ステルスネーク)】では偵察の役割が主となる。



 イグルが言った「例のパーティー」とは、ガメオウ山から一番近いファストン村に昨日来たという″豪華な馬車″に乗っていた六人だ。


 鳥の目では人間の顔の詳しい特徴まで伝える事は出来ないが、大まかな印象や人数などは把握出来る。



「ふむ……一応警戒を密にするか。プラティにも声を掛ける」



 眼帯の男――【幻惑の蛇(ステルスネーク)】隊長のマニュエズが思案したのは、昨日の報告に受けたそのパーティーの事。


 騎士が守る馬車に乗ってきた六人は、鳥の報告によれば「動物みたいな服を着ている」というのだ。

 何らかの偽装でもしているのかと訝しんだが、それにしては豪華な馬車と騎士を引き連れるという目立った登場。

 どこかチグハグな印象を受ける。



 しかし六人という事であれば冒険者パーティーである可能性が高い。

 騎士に守られるほどの冒険者というのは限られるが、マニュエズが知る王国の有力冒険者――SランクやAランクにはそんな特徴のパーティーなど存在しない。



 さらに気になるのは『禁域』の氾濫により現れたフラッドボス、エビルクラーケンを観察していた鳥による報告。


 鳥の目では騎士団と多くの冒険者がエビルクラーケンを囲むようにして戦ったという事しか分からない。

 大体の人数、大体のイメージから想像出来る部分もあり、そこに【誇りの剣(プライドブレイド)】や【唯一絶対(ザ・ワン)】といった王都では有名なクランも参加していたというのは分かっている。


 その冒険者の集団の中に、同じように「動物みたいな服」を着ているのが数名居たという情報があった。


 はたしてそれが同一人物か、それとも同じ服を着ているだけなのかは分からない。

 いずれにしても「動物みたいな服」は戦う為の″装備品″であり、だからこそ今、ガメオウ山に向かっている六人も冒険者なのだろうと想像がつく。



 マニュエズに油断はない。慎重に可能性を吟味する。


 出した結論は「おそらく自分が知らない冒険者パーティーで、今までのどのパーティーよりも強く、馬車を守っていた騎士団よりも強い存在なのだろう」という事。


 それは純然たる事実であり、間違ってはいない。

 マニュエズにとっては不確定要素でもある。

 今までのように惑わせ脅すのではなく、倒しておくべきと考えた。


 だからこそ【魔樹育成士】プラティを出した。

 森を戦場とするのであれば適役と。

 その判断も間違ってはいない。



 ただ間違っていたのは――その六人がマニュエズの想像以上に″異質″という事だけだった。




■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳



 細い道を進み、私たちはガメオウ山に向かっている。

 このペースで行けば麓までくらいなら昼前に着きそうだ。

 問題はそこから先、ガメオウ山に登り始めてからだね。



「夜とかどうするんです? ガメオウ山で野営するんですか?」


「山までこの調子で魔物が出てくるとなると野営も厳しいですわよ」


「んー、徹夜?」


「スタミナ回復剤で乗り切れますかね……」



 みんな懸念があるようだ。やっぱり野営はキツイと。

 仮にテント張ってローテーションで眠ろうにも夜警してるメンバーだけで対処できないだろうし、いちいち起こされるはめになる。

 そうなるとろくに眠れなそうだよね。



「山の様子を見てからだけど、ブックマークした上で<ロングジャンプ>して一度村に帰る事も検討するかね。んで仕切り直し」


「なるほど。それも手ですね」


「何をどこまで調査するかで日数が掛かりそうですが……何度もやれば村の方にも転移していると分かってしまうでしょうし」



 だよねー。だから今回、無理にでも進んである程度は調査したい気持ちもある。

 本当に無理そうなら<ロングジャンプ>と。

 ルートや本来の休憩場所についても昨日の会議であらかた聞いてるけどね、魔物の影響でどうなるか分からないし。


 もしかしたら休む暇もなく襲い掛かられるかもしれないし。

 まぁこればかりは実際に行ってみないと分からないよ。


 と、そんな事を話しつつ進んでいると、後ろから声がした。



「おーい」



 その声に全員で振り返る。


 すると、そこに居たのは……無精ひげで不潔そうな、いかにも変質者といった感じの――



「おっさん!」


「おっさんじゃねーよ!」



 アロークのおっさん(三二歳)だ。王都からここまで付いて来てたのか……ストーカーかな?


 いや、本心はご苦労様としか言えないんだけど。

 よくこの強行軍に付いて来れたもんだわ。馬も使ってないんだろうし。



 んでどうしたの? 自分から声かけてくるとか珍しいじゃん。



「いやさ、こんだけ魔物が多い森の中、お前らに見つからないように付いて行くのしんどいんだよ。すでに疲れまくってるし。んでヤバくなったら俺を置いて<ロングジャンプ>するんだろ? それは困るから、だったら最初から同行させてくれ」


「えー、今からファストン村帰れば?」


「無茶言うなよ。今回【幻影の闇に潜む者(ファントムシャドウ)】も居ねえし、監視してるの俺だけなんだぞ?」



 まぁリーナの監視が居ないのは国的にもマズイか。

 後から国王に怒られそうだし。



「まぁいいけどさ、戦力の充てにしていいんだよね? 私たちの邪魔せずに連携とれる?」


「邪魔にならない程度に控えるよ。って言うかネルトの<ホークアイ>が森で使えないんなら俺が索敵担当でいいぞ」


「おお、なるほどね。そりゃ助かる」



 そっか。おっさんの″糸″は索敵も可能か。

 下手に戦闘に入られるより、索敵専門にしちゃったほうがいいかも。

 あとはポロリンが苦手な魔法系の盾にもなるしね。糸の盾で。


 みんなを見回すと異論はないようで、美人・美少女軍団の中に、変質者のおっさんが加わる事になった。

 うーん、逮捕案件ですな。



「ネルト、お前の<ロングジャンプ>って俺も一緒に飛べるのか?」


「んー、七人はやったことないけど……多分」


「えっ、俺だけ置いていかれたら困るんだけど」



 祈りましょう。

 ダメだったらその時は置いて帰りましょう。




さあここからは長~~い戦いの始まりだ。

しばらくバトル系小説となりますのでご了承下さい。

スローライフは諦めましょう。

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