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122:新生「輝く礁域」ですが故郷が大変な事態になっているようです

最終章開幕!



 いかれたメンバーを紹介するぜ!

 【毒殺屋】!

 【セクシーギャル】!

 【ニート(の魔女)】!

 【サシミタンポポ】!

 【スタイリッシュ忍者】!

 【泡姫】!

 以上だ!


 ……いかれすぎたメンバーで六人パーティー埋まりました。


 ……どうも、我らDランクパーティー【輝く礁域(グロウラグーン)】です。



 新加入した【七色の聖女】ことソプラノの装備が完成し、全員が動物モフモフシリーズ+ファンシー装衣+魔剣という、自分で言うのも何だけど、とんでもない集団になった。


 街を歩けば二度見、三度見は当たり前。知らない人からは大道芸人扱い。

 子供が「わーい」と近寄ろうとすれば「見ちゃいけません!」とお母さんが止める。


 おかげで『王国一の美姫』リーナに近寄ろうとする輩も居なければ、ある意味リーナ以上の人気者であるソプラノに近寄る輩もほぼ居なくなった。



 私としては奇異の視線にも慣れているし、歩きやすいので願ったり叶ったりなのだが、未だにポロリンは恥ずかしそうに歩いている。

 唯一の男の子なんだからしゃんとしなさい。


 ちなみにネルトとリーナはどんな視線も無視。サフィーは目立ってなんぼと扇子を広げている。

 ソプラノは意外にもお揃いの装備が嬉しいらしく、ウキウキで歩いている。



「やっと皆さんとお揃いになったんですもの、パーティーの一員って感じがして嬉しいじゃないですか」



 そう言うソプラノだが、少女の集団の中で頭一つ抜けた成人女性(二五歳)なのでやはり目立つ。

 おまけに美人でスタイル抜群だからね。

 無理矢理子供のファッションを真似しているお母さんって感じ。


 まぁ本人が乗り気ならば何も言うまい。実際、前世の私も二五歳でフリフリアマアマだったし。



 そんなこんなで注目を浴びつつ、特訓終わりに南門から中央区の冒険者ギルドへと移動。

 特訓ついでに討伐した魔物素材を売りに来たわけだ。

 そして冒険者ギルドに入れば、大通り以上にザワザワとなるわけだ。



「お、おい、聖女様まであの装備に……」

「やはりか……【輝く礁域(グロウラグーン)】に入るって事はそうなるんじゃねえかと思ってたんだ……」

「今度は羊か……いや、これはこれで可愛いけどさ……」

「それでも可愛さで勝っちゃうポロリンちゃん誇らしい」

「まさかダンデリーナ殿下と【七色の聖女】に負けないとはな……さすがポロリンちゃんだ」



 当然、有象無象は無視である。

 おい、後ろのピンクくま、しゃんとしろっつってんだろうが。



「あ、【輝く礁域(グロウラグーン)】の皆さーん! ちょっと来て下さーい!」



 お? 何やら受付嬢が呼んでいる。

 夕方の混雑時でも私たちは見つけやすいらしい。理由は言われなくても分かる。



「ギルドマスターがお呼びですので三階にお願いします」



 ま・た・か!


 なんかもうリムリラさんに呼び出しくらうと、いい思い出ないんだよなー。

 変な依頼とか、変な特別扱いとか、変な報告とか。


 しかしトップに呼ばれたからには行かざるを得ない。

 我ら新人冒険者なり。

 そうして足取りも重く三階のギルドマスター室へと向かった。



 コンコンコン



「【輝く礁域(グロウラグーン)】ですが、ギルドマスターはいらっしゃいますか」


「ああ来たか。入ってくれ」



 失礼しますと入室。リムリラさんは忙しそうに執務をしていたが、手を止めて私たちをソファーに座るよう促した。


 さすがにリーナ・サフィー・ソプラノを呼んで、執務の手を止めないわけにはいかないのだろう。

 私たちだけだったら「ちょっと座って待ってろ」とか言いそうだし。


「わざわざ来てもらってスマンな」と言いながら対面に座ったリムリラさんは、前置きもなしに切り出し始めた。

 その表情は険しく、疲れも見える。まさしく仕事のみに生きるキャリアウーマンだ。



「お前たちを呼んだのは他でもない。指名依頼に関する相談がしたかったのだ」


「指名依頼、ですか? 相談と言うのは?」


「お前たちに指名依頼を出していいものか……という相談だな」



 リーナを見ながらリムリラさんはそう言った。

 つまり国王に許可を得る必要があるって事か。

 リーナに指名依頼しちゃって大丈夫ですか? と。


 うーん、厄介な匂いがするねぇ。



 まずは依頼しようとしているその内容について話そう、とリムリラさんが喋り始める。



「最近、南部の都市オーフェン付近で魔物の大量発生が確認されている」


「「オーフェン!?」」



 声を上げたのは私とポロリンだ。

 ポロリンの故郷でもあるし、私が冒険者登録をして活動していた場所でもある。



「魔物はオーフェンより南部のガメオウ山方面から流れてきているという予測も立っている」


「ガメオウ山って……ファストン村のすぐ傍じゃないですか!」



 私はソファーから立ち上がった。

 私の故郷、ファストン村にはお父さんやお母さんも居る。仲の良かった村のみんなが居る。


 ガメオウ山から魔物が下りてくるとすれば、おそらく最初に被害が出るのはファストン村だ。

 あの村には衛兵が少し居るくらいで防衛戦力なんてない。冒険者だってあんまり来ない辺鄙な村なのだから。



「落ち着け、ピーゾン。詳しい被害状況は伝わっていないが大事には至っていないはずだ。すでにオーフェンから冒険者も派遣しているし、国からも一部ではあるが騎士団を派遣しているそうだ。村の住民も一部はオーフェンへの避難を始めていると言う」


「はい……」



 冷静になれと言われてソファーに座りなおした。隣に座るリーナが肩に手を当ててくれる。

 大事には至っていないと言うけど、少なからず被害は出ているだろう。

 誰も無傷だなんてありえない。


 お父さんやお母さんは大丈夫だろうか……避難してくれているだろうか、それとも……。



 これが前世だったら電話でもして安否確認するけど、この世界では無理だ。確認のしようがない。

 馬車で急いで向かっても十日以上掛かる。

 今はみんなを信じる事しか出来ない……。


 不安な気持ちを抱いたまま、私はリムリラさんの話を聞く。



「王都から騎士団を派遣するのに合わせて、ギルド王都支部(うち)からも応援をすでに出した。万が一にも備えて戦力はなるべくあった方が良いからな。動かせそうな有力パーティーには軒並み声を掛けてある……しかし簡単には動かせないヤツらも居るのだ」


「動かせない……?」


「ああ、『禁域』を放っておくわけにはいかん」



 王都支部の抱える有力クラン、例えばAランクのストレイオさん率いる【誇りの剣(プライドブレイド)】や、同じくAランクのミルローゼさん率いる【唯一絶対(ザ・ワン)】、他にも『禁域』深層に潜れそうなクランやパーティーには『瘴気水晶』が残っていないか調査する為の指名依頼が出されている。


 他にも私たちのように浅層の間引きを依頼されているパーティーなどもあるだろう。


『瘴気水晶』が一つでも残っていれば、また氾濫が起きかねない。

 仮に氾濫が起これば今後こそ王都の危機になるかもしれない。だから入念な調査探索が必要だ。


 王都支部の冒険者――強者の多くはそちらを優先に充てられる。

 しかしオーフェンも放っておけない。仮にスタンピードだとすればその被害は想像を絶する。



 スタンピードとは『ダンジョンにおける”氾濫”』とは違い、地表の魔物が起こす”災害”だ。


 スタンピードが起こるケースはいくつもあり、例えばオークやゴブリンが異常繁殖し溢れる場合や、キング系などの強者に率いられて人を襲う場合もある。


 ドラゴンなどの圧倒的強者から逃れる魔物の群れで、恐慌状態の魔物が街を襲う場合もあるらしい。



 そうした懸念から国としてもギルドとしても楽観視は出来ないのだ。なるべく援軍は送りたいと。

 しかし『禁域』調査の人手を割くわけにもいかない。リムリラさんはそう言う。



「騎士団も同じだ。王都の守りと『禁域』の調査、有事への備えもあってオーフェンに出したのは一部の小隊のみ。だからこそ冒険者ギルド(うち)も連動して動いているわけだ。本来であれば東の砦に詰めている軍を王都に呼び、その代わりに王都の軍をオーフェンに向かわせる算段もあったようだが……」



 東の砦というのはカナーン帝国との国境を担っているティンバー大砦。国で一番の防衛力を誇っていると聞く。

 そこに駐在している国軍を王都の防衛に回す、という案が出たのだろう。



「しかし固有職狩り(ユニークハンター)の件も含めて、今の帝国は色々とキナ臭い。出来る限り動かすべきではない、とこれは国も我々も同意見だ」


「じゃあやっぱりオーフェンへの援軍が減るんじゃ……」


「だからこそお前らに指名依頼を出したいのだ。すでにオーフェンへと向かっている連中はBランクが中心。その中でDランクパーティーであるお前らに依頼を出すべきではないのかもしれんが、実績で言えば誰より上。遊ばせておくわけにはいかん」


「はい」


「何よりピーゾンとポロリンは地元だろう? 地元民としての利は他の者にはない。だからこそ適任と考える」



 援軍として動く以上、地元の兵や冒険者と連携をとる必要がある。

 オーフェンに留まるかファストン村まで行くかは分からないが、仮にガメオウ山まで行く事になるとしてもファストン村出身の私が居た方が何かと便利だ。


 そういった諸々を含めてランクの低い私たちにも指名依頼を出そうという事らしい。



「しかしオーフェンに行くまでにも十日は掛かる。少なくとも一月(ひとつき)は王都から離れると見た方が良い。私がお前らに依頼を出すのを渋っていた部分はそこだ。おそらく殿下が向かうのは許されないだろう」


「そんな! ピーゾン様とポロリン様の故郷が危機に晒されているというのに、わたくしが参じないなどありえません!」


「殿下はそうでしょうが陛下がお許しになるとは私には思えません。ですのでご相談の上、どうするか決めて頂きたい。国の大事に陛下の御意向を蔑ろにするわけには参りません。これはギルドとしてのお願いです」



 リーナは当然援軍に行くべきだと言う。

 魔物の脅威から民を守るのが王族の責務、戦闘職の責務である。

 その一心で学校を辞め、私たちと共に冒険者となったのだから、リーナがそう言ってくれるのはよく分かる。


 しかしリムリラさんの意見も正しい。

 オーフェンの魔物増加がスタンピードだとすれば国として対処すべき問題だ。

『禁域』氾濫による王都の危機と同じような状況がオーフェンにも起こるだろう。


 こう言っては何だがファストン村はただの辺鄙な村だが、オーフェンは国の南部の流通の要所。

 だからこそ国の判断を仰ぐべきだし、リムリラさんが扱いに困る所でもある。



 これでリーナが一月(ひとつき)も王都を離れ、危険なスタンピードの迎撃に向かうと知ればどうなるか。

 国王がブチ切れするのは間違いない。


『禁域』が危険だったとしても王都の間近で、浅層の間引きという名目だったから許されていた部分もあるだろう。


 今回の依頼は危険性こそ分からないが、王都からしばらく離れるのは確かなのだ。

 国王はそれを許さないだろう。リムリラさんはそう思っている。私もそう思う。



「仮に殿下の遠征が許されなかったとして、それでもお前らに指名依頼は出そうと思っている。それがたとえピーゾン、ポロリン、ネルトだけになるとしてもだ」



 うん、全員で行けなくても、仮に私だけだったとしても絶対に行きたい。

 王都で心配しているよりよっぽどマシだ。



「私は当然行きますよ? 救援に際し神殿が何か言う事もないでしょう」


「ワタクシもご一緒したいですが……正直リーナさん次第ですわね。申し訳ありませんが」


「絶対にお父様を説得いたします。六人全員で行きましょう」



 そう言ってくれるみんなの気持ちはとても嬉しい。サフィーはリーナの警護も兼ねているから当然だけどね。


 でも国王を説得するのが先だね。

 その結果四人で行くか、六人で行くか、それをリムリラさんに伝えに来ましょう。




という事で最終章の舞台は故郷になりそうです。

懐かしのあの人が出てくるかもしれません。

ほら、あの、ア、アレ、アランなんとか? とかね。

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