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104:いくら強くなっても禁域は手強そうです

第五章開幕!



 指名依頼を受けてからもうじき一月となる。


 この日も『禁域』の地下一~三階で間引きをしつつ、武器やらスキルやらの特訓に励み、ある程度の感触は掴めてきたかなーという実感がある。

 時間も良い感じだし、そろそろ帰ろうかと地上に向けて歩みを進めていた。



(しっかし……やっぱ私って弱いんだなー)



 レベルが高くなり、先頭を突っ走っていた私のレベルにみんなが追いついて来た。

 それは歓迎すべきなんだけど、ステータスとかを聞くに、どうも(ジョブ)によって成長テーブルに差が見える。


 ポ〇モンで言う所の『種族値』のようなもので、『(ジョブ)値』……という言い方が正しいのか分からないが、ともかく成長値の総計を出すと、多分こんな感じなのだ。



・ピーゾン【毒殺屋】32~41

・ポロリン【セクシーギャル】27~36

・ネルト【ニートの魔女】37~46

・リーナ【サシミタンポポ】39~48

・サフィー【スタイリッシュ忍者】39~48



 私より成長率が低いのはポロリンくらいなのだ。

 自慢だった【敏捷】もレベルが5も低いサフィーに、すでに抜かれている。


 ポロリンにしても装備込みで【防御】は断トツトップだし、何気に【攻撃】もリーナに次ぐ二位である。盾役(タンク)なのに。



 こうなるともう私の存在意義はデバフと指揮くらいしかない。

 あかん。リストラの危機。私リーダーなのに。


 まぁポロリンとパーティーを組んだ時点で、将来的に私は【その他(デバフ)】要員になるのは分かってたからいいんだけどさ。


 当時は想定もしていなかったニートとサシタンとスタイリッシュが強すぎるんだよ。

 なんか負けたくない所に負けた気分なんだよ。



 ……それはそれとして、Lv40を超えて新アーツとか覚えた子も居るから紹介しておこう。



 まずポロリンの<セクシートンファー術>の新アーツ、<ピンクタイフーン>。

 おそらくLv5が上限だから、これが<セクシートンファー術>の最終奥義的なポジションだと思う。

 簡単に言えばぐるぐる回りながら怒涛の連続攻撃。目を回さないのはスキル補正だと思う。


 攻撃アーツだから盾役(タンク)のポロリンが使う場面は少なそうだけど、結構素晴らしいアーツだと思う。



 次にネルト。<生活魔法>の<開錠>はいいとして、やっぱり<空間魔法>で<ロングジャンプ>を覚えやがった。


 ショートは<グリッド>と併用での短距離転移だったけど、ロングは使い方がかなり異なる。


 手順としては、まず<グリッド>で転移先を事前に登録しておく必要がある。

 これは<グリッド>を使うと「転移先として保存しますか?」というような選択が出来ると言うのだ。ネルト曰く。


 そうして<ロングジャンプ>の転移先を事前に保存しておいて、そこに飛べるという事。

 今は緊急避難先としてホームと西門の二か所を登録している。念の為。


 ショートと違い、ネルトに触れていれば何人同時転移でも消費は変わらない。

 しかしそもそもの消費MPが200と馬鹿げている。

 魔杖の<消費MP半減>効果を以ってしても100だ。


 本当に緊急避難にしか使えないし、そもそも使ってるのを見られるわけにはいかない。

 練習は必要だけど使うのは極力自重しましょう。



 リーナは<包丁術>の<微塵斬り>だけだね。

 これは斬ったり突いたりするだけで、その周りがまとめて″みじん切り″されるという恐ろしいアーツだ。


 さすがに模擬戦でも受ける気になれない。

 避けるにしても相当距離を空けないと怖いから使いどころに気を付けるよう言っている。

 【サシミタンポポ】こわいわー。強いしこわいわー。



 サフィーは毎度の事ながら成長するたびに出来る事が増えて、逆に困っている。

 まずは<短剣術>の最後のアーツ、その名も<ラストエッジ>。


 効果は「自分の最大HPの半分と引き換えに大ダメージ」という強力なもの。

 使い方を間違えれば自分が「ラスト」に成りかねないけど、分かりやすく有能じゃないかと。


 あと<スタイリッシュ忍術>の最後は<風刃乱舞>。

 これは敵を竜巻のような風で包み、かまいたちで斬り刻むようなイメージ。範囲も広く非常に強い。

 近接で突っ込んだ私やリーナへの誤爆が怖いのと、消費が40とかなり重いのが欠点。


 ついでに音がうるさいのとエフェクトが派手なのも欠点。

 ついでにダンジョンで使いづらいのも欠点。



 こんな所かな。

 あとは装備関連での変更点は、何と言っても魔剣の鞘が出来た事だね。



 リーナの包丁カバーのような鞘と柄巻はワンワンシリーズと合わせた紺に。

 まぁ隠さなくても包丁の見た目なもんで、誰も「魔剣だ」って分からないけどね。一応。


 サフィーの忍刀も同じだね。柄巻は金髪に合わせた黄色で。

 くノ一っぽく、腰の後ろに鞘を付けてる感じ。


 ポロリンはトンファーケースを腰の後ろにドドンと二個。左右からトンファーを挿入。

 柄巻はスカートに合わせて赤。

 ただ普段から手に持って探索してるから真っ黒なのが目立つんだよね。

 ピンククマと致命的に合わない。それがなぁ……納得いかん。


 ネルトは鞘もなくいつも手持ちなので、一応真ん中辺りに灰色の柄巻はしてもらったけど、真っ黒な杖だっていうのはバレバレなんだよね。

 でも杖の先端にモフモフの黒猫の手が付いている。

 マリリンさん、さすがのお仕事です。これ付けたままで魔法が撃てるとは思わなかった。



 マリリンさんと言えば……そう! 魔法の鞄をゲットしたぜ!

 私のウサギポーチの別バージョンとして四人のモフモフ動物シリーズに合わせたポーチを依頼した。



「うふふ、そう言われると思ってもう作ってあるわよ~」



 マリリンさん、さすがのお仕事です。まじかよ。

 そんなわけでピンクくま、黒ネコ、紺イヌ、茶キツネ、四つの魔法の鞄を買いました。


 私のウサギポーチは初回特典みたいな感じで格安だったけど、今度はちゃんと適正価格でね。金満新人パーティーなんで。


 と言っても大容量のくせに他に比べるとだいぶ安いんだけどね。

 さすがに私たちだけに対するサービス料金だと思う。

 全員にこの値段で売り出しちゃったら価値が暴落しちゃうからね。



 そんなわけで装備も充実し、新アーツやら何やらと特訓しがいのある日々。

 特訓と慣れがメインになった影響で、最初は地下一階層だけでしか間引き出来ていなかったが、少しずつ探索範囲を広げ、今日は三階層でも戦う事が出来た。


 ギルドからは相変わらず「三階層まで」と言われているので、そこまでを重点的に間引く方針だ。


 間引く量と頻度が他のパーティーなどに比べて多いらしい、というのも変わらず。

 だから本当は四階層以降にも潜った方が良いんじゃないかとは思っている。


 それでも三階層までと限定しているのは、間違いなくリムリラさんがリーナ……って言うか国王陛下に気を使っての事だろう。



 しかし一~三階層を探索していても、明らかに魔物が強く、多くなっていると感じる。

 やっぱり氾濫が近いのだろうか。

 でもその原因らしき『瘴気水晶』とやらは何個か破壊しているらしいんだけど……。



「確かに『瘴気水晶』を破壊すれば『人為的な氾濫の原因の一つ(・・)』は防いだ事になるね」


「だが全てを壊さない限り、それで氾濫が起きないとは言い切れない」



 ちょうど地上部の小砦で会った【誇りの剣(プライドブレイド)】のストレイオさんと【唯一絶対(ザ・ワン)】のミルローゼさんがそう言う。


 この二つのクランは合同で深部への調査探索を行い、最初の『瘴気水晶』を発見したのみならず、今日は二個目も発見したらしい。


 騎士団とか他のクランとかも含めて、今の所四つの『瘴気水晶』が確認、破壊されている。



「一つでも残っていると氾濫が起きるのですか?」



 そう聞くのは私と並んでストレイオさんたちと話す【七色の聖女】ソプラノさん。

 たまたま小砦で挨拶していた所で合流したので、同時に聞く形になっている。



「そもそも氾濫がどうして起こるのか、君たちは分かっているのかい?」


「瘴気が溜まって、魔物がダンジョンから溢れる……じゃないんですか?」


「それは正しいが、一概に正解とは言えないな」



 ストレイオさんが言うには、こういう事らしい。


 ダンジョンで産まれた魔物は基本的にはダンジョンの外に出られない。

 それが可能であれば、地下一階で産まれた魔物がバンバン外へと出てきているだろう。


 ……言われてみればその通りだね。



 じゃあなんで氾濫するのかと言うと、『瘴気が溜まり過ぎて強力な魔物を生み出す』から、だそうだ。


 その魔物は『フラッドボス』『氾濫の主』などと呼ばれる高ランクの魔物。

 そしてその『フラッドボス』に関しては、ダンジョンを破壊する能力があるらしいのだ。



「ダンジョンの壁は絶対に傷つかないだろ? 剣だろうが魔法だろうが壊されることはない」


「ですね」


「ところがその『フラッドボス』は壁だろうが天井だろうが破壊出来るんだ」



 深部の濃い瘴気によって生み出された『フラッドボス』は、ダンジョンの通路に収まりきらないほどの巨躯であっても、壁や天井を壊して進み、階段を上り、やがて地上へと続く入口をも破壊する。


 そうして地上に出て来るわけだが、入口を破壊する事で、本来ダンジョンから出られなかった魔物たちも出られるようになる。


『フラッドボス』を先頭にダンジョンの魔物がぞろぞろと這い出て来る。


 それがいわゆる″氾濫″だと。



「つまり『フラッドボス』を生み出しかねない『瘴気水晶』が深部に一つでも残っていれば、そこから氾濫は起きるかもしれない、という事だ」



 うわー、これ無理ゲーじゃないかな。

 だって『フラッドボス』でも何でもないのにAランクのオーガキングが軍勢で居たりしたんでしょ?

 それだけ『禁域』の魔物が強いって事なのか、瘴気が多いって事なのか分からないけど。


 ボスは確実にそれ以上。

 となるとSランク? Sランクの魔物って何さ。



「まぁドラゴンクラスなのは間違いないね。過去の文献でどこかのダンジョンが氾濫した時にも『氾濫の主はドラゴンだった』とか記述もあったし」


「『禁域』という事を考慮すれば最低でも(・・・・)ドラゴンクラスと言えるかもしれないな」



 なんじゃそれ。そりゃみんな躍起になって『瘴気水晶』探すわけだよ。

 ますます私たちも調査に回った方がいいんじゃないかって気がしてきた。



 ……しかし私ら五人が深部に行ってもなぁ、ろくに戦えなさそうだし。


 大人しく浅層で間引きしつつ特訓して、有事に備えるしかないか。

 とりあえずストレイオさんとミルローゼさんに頑張ってもらいましょう。




フラッドボスか……そんなのが出てきたら大変だから、きっとストレイオさんたちが防いでくれるんだろうなー。やっぱAランクの人たちだし、氾濫なんか起こさせずに対処しちゃうんだろうなー。(棒読み)

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