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100:少女ですが夜の一人歩きはしない方がいいです

祝100話!



 瘴気というのは『魔物を作り出す悪しき魔力の塊』と言われている。


 地表の魔物はどうだか知らないが、ダンジョンの魔物は階層の各地にある『瘴気溜まり』から生まれる。

 身も蓋もない言い方をすれば『スポーンポイント』だ。この世界の人には通じないけど。



 ダンジョンの魔物は殺すとドロップを残して消える。

 それは黒いモヤが霧散するような消え方だ。


『はじまりの試練』のボス戦でも、敵は黒いモヤが固まるようにして現れた。

 つまり、その黒いモヤが『瘴気』というわけだね。



 一説には魔剣も『瘴気が固まって出来たもの』という見方もあるらしい。

 私が魔剣を引き抜いた時にも黒いモヤがぶわってなって、大鉈になったからね。


 じゃあ剣から魔物が生まれるのかって話になるんだけど……んなわけない。



 ダンジョンの氾濫というのは、ダンジョンに瘴気が溜まりすぎて暴走した状態だと言う。

 ダンジョンは瘴気を生み出し、瘴気は魔物を生み出す。

 それを探索者が狩れば問題ないのだが、狩りが不十分だと瘴気の供給過多となる。それが氾濫。


 もしくは狩っていても、部屋の隅に埃が溜まるようにして、時間を掛けて起こる氾濫もある。

 いわゆる『周期的な氾濫』というやつだ。



 で、今回の『禁域』では魔物が多く、強くなっている事が確認されていた。それも急激に。

 瘴気の産出量が多くなっているか、より溜まる要因があるのか、何かしら原因はあるだろうと。


 そして調査した結果、持ち帰って来たのが、『割れた黒い水晶玉』だ。



「どうやらこいつには瘴気を発生させる力があるらしい。我々が見つけた時は、この玉から瘴気が大量に湧き出していてな」


「しかもこいつを守るようにオーガキングが陣を布いていてね。あれには参ったよ」


『!?』



 ストレイオさんは「やれやれ」と手を広げるが、後ろの皆さんの反応は悲壮感が漂っている。

 相当苦しい戦いだったのだろう。


 だって、オーガキングって単体でもAランクじゃないの?

 それが陣を布いてたって事は普通のオーガとか上位種とかも居るんでしょうに。


 よく倒せたと言うべきか、さすが【唯一絶対(ザ・ワン)】と【誇りの剣(プライドブレイド)】と言うべきか。



 ともかく群れを倒した後に、その水晶玉を割ったら瘴気の発生は止まったらしい。

 そのまま持ち帰るのは危険と判断したらしい。

 で、超疲れたし、早く報告をって事ですぐさま帰還。今朝になってやっと到着と。



「じゃあこれで解決って事ですか?」


「いや、そうは思えないな。そもそもこの玉が自然発生なわけがない」


「……誰かが仕掛けたって事ですか?」


「僕にはそうとしか思えないね。そして人為的な策だとすれば、瘴気の発生源がこれ一つと考える方が不自然だ」



 誰かが何かしらの理由で氾濫を起こそうとした。

 そして瘴気を発生させる水晶玉を『禁域』に仕掛けた。


 であるならばこれ一つで終わりという事はないだろうと。

 もちろんこれ一つだけという可能性もあるが、もっとあると考えて行動すべきだと二人は言う。



「私たちはギルドに報告して来るが、正式に依頼終了と発表があるまでは調査は継続と考えておいたほうがいい」


「君らの場合だと調査じゃなくて『間引き』か。そういうわけだから注意を払いつつ、なるべく間引いてもらえると助かるかな」


「分かりました。報告はお任せします」



 うん、私たちは間引きを継続と。

 ギルドや国がどういう判断を下すか分からないけど、何かあれば通達が来るでしょう。

 それまでは通常営業で、依頼と訓練の両立といきますか。





 その三日後、『禁域』に潜り始めてから二〇日ほど経っている。

 結局ギルドの判断は『調査の継続』らしく、ストレイオさんやミルローゼさんたちは準備を整えた後、また深層の調査に行くようだ。


 また、オーガキング軍団が水晶玉を守っていたという事から、調査に向かう他のクランやパーティーにも注意喚起が為された。


 下手に突っ込むと全滅するレベルの敵だぞと。

 Aランククランでも一つだけならキツイぞと。



 それを受けて騎士団も増員とかしているらしい。

 その王国騎士団より強いのが近衛騎士だと思うんだけど、ホント、私たちのホームの門番で使っちゃってていいのかと不安になる。


 二人体制で三交代、二四時間勤務だからね。毎日六人使ってるわけだよ。

 まぁいらないとも言えないし、甘えるしか出来ないんですけど。



「おかえりなさいませっ」


「お疲れ様ですー」



 そんな門番(近衛騎士)さんは今日もビシッと簡礼で迎えてくれる。

 セラさんも相変わらずで、さすがに私たちも、ポロリンでさえ慣れてきた感がある。


 そんな帰宅後のひと時、お風呂も終わってポロリンがキッチンに立った所で声を上げた。



「あっ、油買うの忘れた!」


「お? んじゃ私買ってくるよ」


「揚げ物を明日にすれば大丈夫ですけど……」


「んー!」


「ほら、ネルト食べたいってさ。大丈夫、この時間なら市が閉まってても通り沿いの店はまだ開いてるでしょ。私がパパッと買ってくるよ」


「そうですか? すいません、お願いします」



 空は夕焼けが消えかけ、暗くなろうとしている。

 酒場とかは夜もやってるし、雑貨屋や商店も一部は遅くまでやってたりする。

 まぁ王都ならではって気もするけどね。


 私は再び装備一式を身に着け、表に出る。

 交代した門番(近衛騎士)さんに「ちょっと油買ってきます」と伝えて出発。


 さすがに大通りじゃないと電灯みたいな魔道具はないけど、ちらほらと立って見える辺りが中央区と言うか何と言うか。



(こりゃ一人歩きは危険だねー。サフィーくらいかな、大丈夫そうなの)



 何だかんだ、王都の夜の街を一人で歩くのは初めてな気がする。

 王都は都会だ。ファストン村と違って危険が危ない。


 リーナは当然として、ポロリンやネルトも一人じゃ歩かせたくないなーと。

 サフィーなら大丈夫そうだけどね。但し公爵令嬢の上、庶民的知識なし。

 油買いに行くなら私一択ってわけだ。


 まぁパシるご褒美にチキン南蛮でも作ってくれたら――



「ん?」ピコピコ



 ――と、そこで私の<気配察知>に反応があった。



(まじかーorz)と内心うなだれるが、表情には出さないよう注意。

 とりあえず大通りに出て、商店で油をゲット。ウサギポーチに仕舞う。



 で、店の外に出ると……分からない……いや、距離が遠いだけか? さっき察知出来たのは甘く見られてた? 今は警戒が強いって事は、これもう私狙いだよね? ホーム襲撃したのと同じ奴ら? プロ? 暗殺? 固有職狩り(ユニークハンター)


 ここまで一秒。ともかく襲ってくると気構えていたほうが良い。


 まさか人目のある中で襲っては来ないだろう。

 となればホームの近辺。しかしあまりホームに近すぎると門番(近衛騎士)が居る。

 襲撃者としても門番(近衛騎士)からは離れたいはずだ。



 ……そうなると襲ってくるポイントなんてかなり限られるんじゃないか?


 ……って言うか、私自慢の超スピードで門番(近衛騎士)さんの所までダッシュすれば勝ちじゃね?


 相手の人数とかも分からないけど門番(近衛騎士)さんが応援に来れば勝ち確でしょ。



 ……いや、応援に来た段階で逃げるか。


 こないだの件もあるし逃がしたくはない。少なくとも一人くらいは生かした状態で捕えたい。

 じゃあ私一人で相手にするのか?


 えぇぇ……さすがにちょっと荷が重いんじゃないっすかねぇ……。



 そんな悩みを色々と抱えながら、諦め半分で路地に入る。



 ――シュン――カッ!



 うわお、いきなり投げナイフかい! 避けるけどさ!


 普通こういうのって暗がりからヌッて人が出てきて「恨みはねえけど死んでもらうぜ?」みたいな事を言ってから攻撃してくるんじゃないの!?


 姿も見せず、言葉も交わさず、いきなり殺しに来るとか……!



 ――シュンシュンシュン――カカカッ!



 三連ナイフ! 石塀に突き刺さってますけど!? どんな業物だよっ!

 ピコピコ。

 今度は背後か! 横にも! 三人……いや四人!?


 暗がりの中、気配を小さくさせ、足音を出さず素早く動きながら投擲してくる。

 確実にプロ。それも【暗殺者】とかそっち系のプロ。


 気配を感じる分、サフィーを相手にするよりマシだと思うけど、熟練の連携って感じがする。

 【忍者】の<忍びの歩法>だったら<気配遮断>だしね。そしたら死んでるよ。


 

 ――シュシュシュシュシュシュシュン――カカカカカカッ!!! キキキンッ!!!



「ああっ、もうっ! いい加減にしろっての! 投げナイフなんか食らわないよ! 諦めてこっち出てこい!」



 多角から投げられるナイフを全て避けるのは困難。さすがに魔剣でガードも併用する。

 まぁ『クリハン』の触手十本同時攻撃に比べれば避けられない事もないけど、ダメージくらったら死ぬかもしれんし。

 ナイフに毒とか塗ってるかもしれんし。


 しかし私は防御が苦手なんだよなー。

 大剣で受けるのも苦手で、だから回避ばっかしてたんだけど。

 出来ればガードしたくないから、投げナイフは諦めて接近戦で来てくれると助かります。



「チッ!」



 願いは叶った。こっちの言う事聞いてくれたわ。

 黒いローブを纏った一人が舌打ち一つ、ナイフを持って突っ込んでくる。

 ここまで聞こえた声が舌打ちだけって……本当に喋らないもんなんだね。暗殺者ってのは。



 ――シュシュン――ガガッ!!



 どうやらまともに接近戦させてくれないらしい。

 近づいてくるのは囮で、死角から投げナイフ。

 まぁ人数居りゃあそうやるのが普通だ。


 集中、集中、近付いて来たヤツから順々に倒していくしかない――



「――でしょっ!!!」ドガン!!!




普通にナイフ投げてくるくらいならピーゾンさんは避けます。

問題は夜になりかけてるって事ですね。暗いのはさすがにキツイ。

それで焦っている部分もあります。

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