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92:Dランクパーティーですがまた指名依頼ですか?



「ネロさん、ヒマなんですか?」


「んなわけないだろ。お前らの時だけだよ」



 ネロさん元Aランク冒険者らしいし、わざわざDランクの昇格試験に出張ることないのにね。

 私たち今まで三回ともネロさんだよ。目ぇ付けられすぎでしょ。



「それに相手がダンデリーナ殿下とサフィー嬢だろ? 試験官が怪我でもさせてみろ、大問題になるぞ。そうなるともう俺しかいねえんだよ。出来りゃ俺だってパスしたいわ!」



 まぁそう言われるとねぇ。王族と貴族が冒険者してる事自体が異常だし。

 だけどそれをこっちに言わないで欲しい。


 当然のように地下訓練場では注目を浴びる。そして当然のように男子が多い。

 リーナはもちろんだけどサフィーも美人だからね。犬と狐だけど。


 仕方ないので、またポロリンを観客の方に置き、人身御供にした。注目を減らしてくれ。



 そうして始まる模擬戦。最初はリーナ、次にサフィーがネロさんと戦った。


 さすがに元Aランク。ネロさんはやっぱり強いわー。

 リーナとサフィーの試験は共に敗戦だった。

 二人とも悔しそうにしてたけどね。



「殿下はずっと騎士団の連中相手に剣の稽古をしてきたんじゃないかな。そのせいか剣筋が真っすぐすぎる。まぁ本人の性格もありそうだけど」


「はい、確かに近衛騎士が剣術の指導にあたって下さっていました」


「一撃に威力を込めるのは騎士団っぽい戦い方だ。でも殿下の場合は、そこまで攻撃力に秀でているわけじゃない。その代わりに敏捷はいいもの持ってるんだ。そっちを活かしたほうがいい」


「はい」


「そういう意味じゃ″双剣″てのはいいと思うぜ? 一撃の威力よりもいかに数を当てるかって事を目的とした立ち回りを意識すりゃもっと良くなるさ」


「はい、ありがとうございます」



 リーナの場合は″双剣″じゃなくて″二刀流″だから余計に立ち回りが難しいんだけどね。

 今は絶賛訓練中です。

 <流水の心得>を使えればなー。ただあれ見せるわけにいかないし。



「サフィー嬢はやたらと短剣での剣戟にこだわってたけど、それは止めたほうがいいと思うぞ」


「ぐぬぬ……やはり剣技ではリーナさんに負けますか……」


「それもそうだが、役割が違う。パーティーの前衛は殿下以外にもピーゾンやポロリンも居るだろ? サフィー嬢には剣技以外にも殿下以上の敏捷と投擲があるんだ。終始、遊撃的な動きをされたほうが俺としてはやりにくかったな」


「返す言葉もないですわぁ」



 サフィーには<忍術>禁止にしたけど、何を思ったのか近接攻撃にこだわっていた。忍刀二刀流。

 時々リーナに張り合うんだよね。


 離れて<投擲>も使ったけど、持ってる忍刀を一度仕舞ってから<投擲>するからバレバレなんだよね。

 リーナ以下の剣技だけでネロさんに勝てるはずもなく負けた。



「とは言え二人ともCランク相当の腕前は保証するぜ。試験は問題なく合格だ」


「「ありがとうございます」」



 良かった良かった。

 んじゃ一階の受付で手続きしましょうか。

 ちなみに訓練場は結構な人だかりになってるけど、幾分かポロリンガードは効いていたようだ。

 さすがだぜ、ナイスセクシー。



 リーナとサフィーのカードを更新した私たちは、ギルドマスター室へとやってきた。


 受付嬢さんに言われたのだ。

 私のCランク昇格に関してギルマスから説明するって。

 いやいや、Cランク昇格ごときでギルマスが直接とかおかしいでしょ。


 ……まぁ一冒険者としては従うほかないんですけどね。行きますよ、ええ。



「おお、来たか。まあ座ってくれ」



 ギルマスのリムリラさんも以前に比べるとリーナとサフィーへの態度が柔らかくなった。

 いつも通りの豪快な感じだ。キビキビ系キャリアウーマン。



「話というのはピーゾンのCランク昇格についてだ。昇格試験の内容はその時その時で異なるものだが、今回は指名依頼を考えている」



 これは受付嬢さんからも聞いたね。

 Cランク昇格試験は依頼だったり筆記試験だったり模擬戦だったりすると。


 で、今回は指名依頼なわけだ。

 正直、筆記試験よりは全然ありがたいです。



「依頼の内容は色々と問題がある。が、お前たちが適任と思って頼むことにした。もし依頼を受けない方が良いと思えば断ってくれて構わない。それで昇格できないというわけではないし、別の試験を用意するつもりだ」



 ……なんか怪しい雰囲気になってきたな。

 そんなヤバイ依頼なの?



「王都の西にある『禁域』と呼ばれるダンジョンを知っているか?」


「あの、王都周辺で唯一管理されてないダンジョンですよね」



 王都の中には四つのダンジョンがあり、王都の外にはいくつかのダンジョンがある。

 王都の近くなのだから当然管理されて然るべきなのだが、その一か所だけは管理が出来ていない。


 どうやら私たちが見つけたオークの集落のように、近くにありながらも微妙に発見されにくい場所だったらしいのだ。



 結果、見つけた時にはすでに上級ダンジョンにまで成長しており、数々の探索者を持ってしても未だ魔剣がとれない『未管理ダンジョン』となっている。


 その難易度の高さから探索者の中で言われるようになった呼称が『禁域』。

 シンプルなネーミングながら、いかに探索が困難かを物語っている。



「ああ、その『禁域』に″氾濫″の兆候が見られている」


『!?』



 ″氾濫″とはダンジョンから魔物が溢れ出る現象だ。

 これがあるから魔剣をとって『管理ダンジョン』にする必要があるし、国として管理しきれないダンジョンは魔剣の奥にあるダンジョンコアの″討伐″が義務化されている。


 いや、義務というより推奨か。

 新しいダンジョンを見つけたらコアを砕くべき、もしくは近隣の街が管理を申し出るかもしれないが、そこは当然相談する必要があると。



 私が見つけた山賊(偽)の住処のダンジョンコアは本来なら私が見つけた時点で割るべきだったという事だ。

 おっさんにあげちゃったけど。



 ともかく『禁域』のような上級ダンジョンが氾濫するとなると、これは一大事じゃないのか?

 どんな魔物が居て、どれだけ溢れるのか分からないけど、王都の近くだったらマズイでしょ。



「未管理ダンジョンの″氾濫″には周期があると言われている。ダンジョンの規模によって異なるが、『禁域』の場合、次の″氾濫″までは少なくともあと十年以上は先だと言われていた」


「なのに兆候があるんですか? 随分早いですね」


「何か原因があるのか、それとも単に周期が早まっただけなのかは分からん。が、調査が必要なのは確かだ」



 見守って防衛するだけじゃ、何の解決にもならないと。

 そりゃそうだろうけど……。



「その調査を私たちに? こう言っては何ですけど私たちDランクですし、これ私のCランク昇格の為の指名依頼ですよね? 上級ダンジョンの『禁域』なんて、それこそ入る事すら出来ないんじゃないですか?」


「本来なら地下一階層だけでもCランク上位かBランクパーティーが推奨だな」



 でしょうねぇ。

 上級ダンジョンで、しかも『禁域』で、しかも氾濫しそうとか……荷が重いんじゃないかと。



「だが今回は異例だ。王都に居る有力なパーティーやクランにはすでに『禁域』深部の調査に向かってもらっている。そうなると浅層部の魔物の間引きが手薄になる。お前たちに頼みたいのはそこだ」



 なるほど、高いランクの人たちが深い所の間引きをしつつ調査をすると。

 逆に浅い所の間引きが必要になると。氾濫の兆候があるって事は魔物の数も増えてるって事かな。


 ……いや、それにしたって私らDランクですぜ?

 AとかBが深い所に行くとしても、Cランクとかに依頼すべきでしょう。



「お前らは三人の時でもBランクのオークキングやロックリザードの実績があるし、五人にしたって『亜人の根城』を一日で二〇階まで行ったんだろ? 実力的にCランク以上なのは間違いない。ネロも太鼓判を押している」



 あの暇人がああああ!!!


 いやまぁ私ら全員と模擬戦とは言え戦ってるわけだし、スキルとか使ってないにせよ、ある程度の力量は分かっちゃってるんだろうな……ネロさん普通に強いし。



「そういったわけでDランクのお前らに出すのも異例だし、Cランク昇格に使うのも異例な案件ではあるが、指名依頼としたいと思っている」


「……強制ではないと?」


「そこが最初に『断ってもいい』と言った部分だ。今回の指名依頼はお前らのランクを度外視した上、″氾濫の恐れがある『禁域』の探索″という危険性の高いものだ。通常であれば勧める事すら躊躇うほどのな。まぁそれでもお前らの実力であればやれると判断しているから依頼するわけだが」



 ふむふむ。やれそうだけど出来ないかもしれない、大丈夫そうだけど危険、そんなどっちとも言えない感じなのかな?


 だから受けるか受けないかの決定権は私たちに、と?



「何より私が懸念しているのは、ダンデリーナ殿下がいらっしゃるパーティーに対してこの指名依頼を出して良いものかと、そこが一番の問題だ」


「「「あっ」」」



 そうだ。そういやリーナは王女様で、しかも国王陛下に溺愛されていると有名。

 私の昇格試験でありながら依頼を受けるのは【輝く礁域(グロウラグーン)】なわけだし、必然リーナも『禁域』に潜る事になる。


 国王が「うちのダンデリーナを危険な目に遭わせんのか? ああん?」とリムリラさんに斬りかかってもおかしくはない。


 確かに実力どうこうよりも、そっちの方が問題だわ。



「私はお前らが適任だと思うから依頼をしようとは思うが、陛下に喧嘩を売りたくはない。もし受けるにせよ承諾を得てから受けてくれ。これはお願いだ」


「いえ、万が一″氾濫″が起きればそれは王都全体の危機です。だというのに黙って見過ごす事はできません。その依頼は受けるべきです」


「リーナさんはそれでよろしくても絶対に陛下は反対しますわ。承諾はとるべきですわよ」


「……はい。では必ずお父様を説得してみせます」



 あー、陛下は絶対に反対するだろうなー。

 リーナを『禁域』に行かせるくらいなら騎士団を派遣しそうだ。

 もしかしたらすでに騎士団が動いてるかもしれないけど。



 その日はそれだけでギルドマスター室を出た。

 承諾を得るにせよ、断るにせよ、また来ますと。


 個人的には少し興味があるんだけどね、『禁域』に。

 でもパーティーのみんなを危険な目に遭わせたくないって気持ちも強い。

 これは要相談ですな。




リムリラさんはグロウラグーンにかなり期待している反面、かなり扱いに困っている様子。

厄介な新人が出てきたもんですねぇ、ご苦労お察しします。

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