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帰宅部女子と帰宅しようとするのを、水泳部美少女に邪魔されるので何とかしたい  作者: うーぱー
第六章 部活が楽しいって言葉、心底、イラッとくる
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第42話 拒絶! 氷上が俺のことを避けている!

 翌日、氷上は明らかに俺を避けていた。


 授業の合間に話しかけようとしても、逃げるようにして教室を出ていく。


 追いかけても、小柄ですばしっこい氷上は気づいたら消えてしまう。


 昼休憩も俺がパンを買いに行っている間に失踪してしまった。


 裏庭や屋上や、学園中を探したけど、氷上は見つからなかった。


 いや、そうじゃない。


 氷上が避けているだけじゃない。

 俺が躊躇っているせいで、毎回、一歩遅れているんだ。


 昨日みたいに拒絶されるのが怖くて近づけないでいるんだ。


 弱気になった俺が、やれるだけのことはしたと自分に言い訳をしているに過ぎない。


 こんなんじゃ駄目だ。

 俺らしくない。


 時間が経てば経つほど気まずくなってしまう。


 少しくらい強引でも、どんと氷上にぶつかるんだ。


「タイミング悪く今日はすれ違いばかりだよな」


 放課後だけは氷上の向かう先が明確なので、見失うことはない。


 教室から出ていこうとする氷上の背中に抱きつく勢いで俺は、後を追う。


「あのさ……。体験入部に行かない?」


「私は、帰る。一人で、行け」


 氷上は逃げるような早歩きだ。俺は引き離されないように歩幅を大きくする。


「せめて帰る理由を教えてくれないか?」


「何故、部活に、誘う。天堂院先輩の、手下にでも、なった、のか」


「先輩は関係ないよ。あ、もしかして、嫉妬しているのか?」


 冗談半分で場を明るくしようとしたのだが、完全に逆効果だった。


 立ち止まった氷上が、隈をどす黒く染めて睨んでくる。


「うっ。氷上さーん。パンダみたいなおめめが、悪魔みたいになってますよー」


 情けないことに、俺は虚勢を張って軽口を叩くだけで精一杯だ。


 自分でも空回りしているのが分かっているから、乾いた笑いを漏らしてしまう。


「私は、帰る」


 結局、禄に会話できないまま玄関にたどり着いてしまった。


 氷上は外履きを手にしたまま、じっとしている。


「おーい、氷上、どうした? まさか、ラブレターでも入っていたのか?」


「……マジ、最悪」


「ごめん。調子に乗ってた。……ん?」


 俺は何とかして氷上の関心を得たいから頭を抱えておどけてみせたけど、氷上は靴の中を見たまま反応してくれない。


 前髪の奥に隠れた表情は怒って――いない。


 怒っているなら顔が赤くなるはずだ。


 でも、氷上は険しい目つきをして口をわななかせているけど、顔は青ざめている。


 目の端が微かに濡れていた。


「どうかしたのか?」


「うっ」


 氷上が慌てたようにして靴を隠そうとするから、俺は反射的に手首を掴んでしまった。


 手から靴が落ち、中に入っていた物が床に零れた。


「おい、靴、落ち……え?」


 一瞬、何か分からなかった。


 落ちた物の正体が分かってからも、いったい何故そんなものが靴に入っていたのかが分からない。


「おい、何で靴の中に、たばこの吸い殻が入っているんだよ」


「あー。タバコ吸ってるヤツはっけーん」


 突然、背後から歯の抜けたような女の声が聞こえた。


 下駄箱の死角に潜んでいたかのように唐突なタイミングだ。


 何処かで見たような茶髪の女と、見知らぬ男だ。


 茶髪の女は制服が新しいようだから、おそらく同学年だ。

 廊下ですれ違ったことがある程度の相手だろう。


 男は皺のよった制服を着崩しているから上級生かもしれない。


 肩に風紀委員の腕章を着けている。


「君が一年A組の氷上君か。最近、隠れてタバコを吸っている生徒がいるというのが、問題になっていてね。少し話を聞かせてもらっても良いかな」


「ほら、見てよ。こいつ、靴の中にたばこの吸い殻を隠してんじゃん」


 女が床に落ちていた靴を足先で転がし、吸い殻が散らばる。


 氷上は気が動転しているのか、俯いているだけで何も反論しない。


 何だこれ。いったい何が起きている?

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