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婚約破棄は突然に

作者: 青空のら

皆様にクスッと笑える一涼になれば幸いです

華やかな王宮での晩餐会

突然始まる寸劇

パリン!とグラスの砕ける音と共に


「マーガレット、マリエへの数々の嫌がらせもう我慢ならぬ!お前のような卑劣な女との婚約は今この瞬間に破棄する!」


ピンクブロンドの髪の少女を横に携えた男が叫ぶ

さらに少女の背後には守るかのように三人の男が立っている

そして彼らの足元には腫れた頬に手を当てて震える少女


何?この出来の悪い劇?一体どういうつもり?

晩餐会の主催である国王を探すと壇上から突然始まった寸劇を眺めていた

どうやら止める気はないらしい

やれやれ、しかたない


「王様、ちょっと良いかしら?」


騒いでる集団を無視して国王に向かって手を振る

こちらを確認した国王がギョッとした顔をする

失礼な!


「国王に向かって不敬であるぞ!」


国王の傍らに控える兵士が叫ぶ


「いや、よい、気にするな、お主らは控えておれ」


国王が顔を引きつらせながら片手を上げて兵士を制止する


「して、なんじゃ?」

「なんじゃ?じゃなくて、あれ何ですか?あんな酷い寸劇を客に見せる為に本日の晩餐会に呼び出したのですか?」

「寸劇とは失礼な、王太子に対して不敬だぞ!衛兵こやつを捕らえろ!」


婚約破棄劇を始めた男が叫ぶ

その瞬間に男の頭上に岩塊が浮かび上がる


「ふぇ?」


上を見上げた自称王太子の口から変な音が漏れる


「王様、これ王太子なんですか?」


改めて国王の方を向き問う


「……」


国王は自らの頭上の岩塊と王太子とを見比べて、忙しなく頭を動かしている

その間、国王頭上の岩塊は少しずつ大きさを増す


「王様!聞いてますか?これ、あなたの息子でしょ?王太子、次の国王になるのですか?」


怯えた目でこちらを見る国王


「TPOを無視して、人目を気にもせずに女に手を挙げる屑、女の敵。王太子という地位をか笠に着る屑、これが王太子ですかって聞いているのですよ?」


優しく微笑むと国王が首を振る


「違うのですか?自称ですか?」

「本日、今この瞬間に廃嫡といたす。理由いかんを問わず、正規の手順を踏まずに婦女子にいきなり手を挙げるような不届き者を国王などという地位に就ける訳にはいかぬ!第二王子を王太子とし、第一王子は廃嫡、婚約者のマーガレットはそのまま第二王子の婚約者へとスライドいたす!」


国王は立ち上がると周りを見渡しながら宣言した


「待ってください父上!」


自称王太子が叫ぶ


「あら、貴方は一方的に宣言してたのに、逆に一方的に宣言されると受け入れられないの?不敬ですよ?」


不敬と言い返されて悔しそうな顔をする自称元王太子

周りの取り巻きがどう取り成そうかとあたふたとしている

上目遣いにこちらの顔色を窺う国王、うざったいので消えてください


「立てるかしら?」


蹲る少女に手を差し出す


「魔女様、ありがとうございます。自分で立てます。でも、一体どうして?」


不思議そうな顔でこちらを見あげる

どうして?どうして助けたのか?


「そうね?強いて言えば、あの手の女とあの手の女に転がされる男が嫌いだから。そして地位を笠に努力を怠る輩が嫌いだから、かしら?

怯えてる振りしてても目が笑ってたわよ、彼女」

「えっ?」


ええ、本当に。それは嫌らしい目をしてたわよ

「そうそう、王様?家に帰る前に確認しておきたいのですが?」


振り返ると、国王がビクンと身体を強張らせる


「何やら王城に細工してるみたいなのだけれど?神から授かった祝福の力を阻止する術って何かしら?

神の力を拒絶するって、悪魔か何かと契約でもしたのかしら?

国王が悪魔と契約する国とか、それは恐ろしいと思いますわ」

「そんな事はない!!」

「あらそうかしら?岩塊が現れれた時、えらくビックリされてたような様子でしたけど?どういう事かしら?王城内では出現しないとでも考えていましたか?」


顔色を真っ青にしてブルブルと首を横に振る国王


「あら?その奥に控えてる大勢の兵士達は私を捕らえる為だと思っていたのですが?勘違いでしたか?」

晩餐会場の奥の扉を指差して首をかしげる

「そなたの勘違いだ。王城内は神聖魔法で守られている。そして王国に仇なす者からの攻撃を防ぐ。それは過去も未来も変わらぬ」

「あらあら、それは困りましたね」


自ら墓穴を掘るとは思いませんでしたよ


「つまりは王城内で神からの祝福はもちろんの事、魔法が発現するのは王国を守る為という事になりますよね」

「そうだ、そういう認識で間違いない」


今更ながら威厳ある風に国王がうなずく


「それだと、岩塊によって行動を制限されている二人は王国に敵対する者との認識になりますが、よろしくて?」

「……」


発言の意味が分からないのか、しばらくの間晩餐会場に静寂が訪れる

その後、参加者一同のざわめきが会場を飲み込む


「そ、それは誤解であろう。認識の相違というものであって!」

「そうですね。でも、それを言う相手は違うと思いますよ。私じゃなくて、ここにいらっしゃる皆さん、そして」


指を上へ指しながら優しく微笑む


「王国を守ってるという神様へ、じゃないかしら?」


今日も私利私欲全開で我が道を行く魔女だった



程なくして求心力を失った国王が退位し、第二王子が王位に就き、婚約者マーガレット嬢の父親が宰相として補佐についたとの話が聞こえて来た

王族籍を剥奪された元自称王太子は権威を笠に色々やらかしていた事を暴露されて居場所が無くなり、同様な状態の取り巻きと共に隣国に遁走したそうだ

突然婚約者が第二王子スライドしたマーガレット嬢はお姉様と慕われて満更ではない様子でデレてるらしい

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