一番簡単な予測の話
少し真面目な話をしようか?
例えば、100mを10秒フラットで走れる人を集めたとする。
これを数式で表してみよう。
Y軸に距離(メートル)、X軸に時間(秒)をとるなら、
y=10xだ。
つまり、100=10x10
ここまではいいよね?
この関数を予測に使った場合、200mなら20秒で走れると予想できる。
実際、割とそんな感じで走れる。
ボルトなら200m20秒切れるかんね。
これが一番簡単な予測だ。
今見てもらったとおり、『予測』は一般的に関数を使う。
例えば、30年後の人口予測とかは、もうちょっと次元の増えた複雑な関数を使っているだろうけれど、基本的に要領は同じだ。
次に『予測は当たらない』ってことを示してみよう。
この関数を使って計算した場合、フルマラソン何分で走れる?
余裕で1時間半切っちゃうでしょ?
ちなみに僕の以前の上司でこういう『予測』をもって計画を立てる人がいた。
僕は、「『予測』を計画を立てることに使うのは不適切です」と例をあげて説得したんだけど、無理だったね。
彼は、より少ない時間のケース、例えば、『90mを9秒』で走るようなことを、実際に人を連れてきて『走ってみせる』ことによって、更に上の上司を納得させた。
デモンストレーションに労力を割く必要はない。大方そんなふうに思ったのだろうね。
だが、それは浅はかなのだ。誤差は先に行くほど広がるから『その検証の仕方も不適切だ』と僕は主張したんだけれど、人前で披露しちゃった手前引っ込みがつかないのか、部下に抵抗されるのが気に食わないのか、上司(その人)は聞く耳を持ってくれない。
結果、プロジェクトは予算と納期を大幅に超過した。
こんな事をやってたら、そりゃあ仕事の効率は落ちるよ?
『まだできないのか!』とアホな計画を立てた自分を差し置いて『自分の思い通りの速度で作業できない』部下たちに、上司はその怒りの矛先を向ける。
何故か中間管理職の僕が謝ることになるかんな? 正論で返しても、『作業が遅いくせにけしからん』とくるよ。社会人は辛いよ。
僕は僕で、無茶な計画で振り回された部下たちに起こるトラブルを『予測』して、対策を立てたり根回ししたり、あれこれフォローせにゃならん。
そう、『予測』とは『対策』を先んじて立てるためのツールであって、『計画』を立てるために使うもんじゃないのだ。
ましてや他人の出した『予測』を見て、『悲観にくれて嘆くだけ』なんていうのは僕に言わせれば、『無駄』以外の何物でもない。
傾向は見えても、一般に予測は『当たらない』のだ。
予測の成立条件って実は案外厳しいんだよ。




