知性の格差とオウムガイ
オウムガイってかっこいいよね。
あのデザイン大好き。
こう、アンモナイトの殻の中に入ったイカみたいな深海生物。
くちばしを閉じるとぴっちり蓋が閉まるように設計されている悪魔的美しさの局地。
宇宙から飛来したんじゃないかと思わせるようなクトゥルフ的な、あるいは、ぐるぐるの渦巻が魅せる数学的なかっこよさ。
我はオウムでありアレフであるぞ、みたいな古代の神秘を体現したような根源的なデザイン。
いくら称賛しても称賛し足りない。
イカやタコは頭が良いことで知られているけれど、寿命が短いから海の支配者になれないんだ、なんて与太話をみなさん聞いたことがおありだろうか?
そうして、オウムガイはイカやタコの仲間だ。
イカ・タコの寿命が1~2年なのに対し、オウムガイは10年。
じゃあ、なんでオウムガイが海を支配できていないのか?
オウムガイはイカやタコより頭が悪いらしいよ。
でね。
なんでかなー、と思って調べてみたら目が悪いんですって。
画像をググってみたら、イカの立派な目とは比べ物にならないぐらい簡素な造りの目。
なるほどなー。深海生物だもんね?
そりゃ、海を支配できないわ。
得られる情報量が少なすぎて、考えられないもん。
そんなことを考えてたら、知性の格差って、実は情報への接し方でつくんじゃないか? って思いついた。
一般に、『昔の普通の人』より、『今の普通の人』のほうがアホになってるって言うじゃない?
そういう説を唱える人に話を聞いてみると、
『昔の普通の人』のインプットが、例えば新聞の記事、アウトプットが本の書き写しだったのに対し、
『今の普通の人』はインプットが、ネットニュースのタイトルあるいはサマリー、アウトプットがwikiのコピペとか、そんな具合に劣化しているんですって。
これぐらいの差でもって、『知性が劣化してる』とか言っていた。
丸写ししてない分昔の人のほうが知的ですって? そりゃ、違うだろと。
ぼくは変わらないと思うんだよね。
『普通の人』を『入力された情報をそのままアウトプットする人』と定義するならば、どっちも同じレベルでしょう。
ちなみに、実際、ネット社会になってから知性の格差はだんだん広がってきているようにぼくは思う。
だって、せっかくネット社会になって一次情報が簡単に調べられるようになってるっていうのに、ぼくらは新聞だのネットニュースだのの二次情報を鵜呑みにしてるじゃない?
世界中の論文が無料で公開されてたりするのに、それを読んでみようとする日本人って少ないでしょ?
学生さんで、海外に留学しようとする人も減ってきてるよね。
それが、国力のパワーバランスの変化に直結してきてるんじゃないの?
中国とかインドとか、ベトナムにしてもさ、留学とか積極的にやってるじゃない?
実際大学の国際的な評価とかも、日本の大学は残念なことになってきてる。
なんで僕らがそれをやらないのか、っていったらぼくらは本質的に情報への接し方がわかってないからじゃね? って思ったんだ。
世界中の最先端の一次情報にあたって常に物事を考えている知性の高い人と、流れてくる情報を受け入れるだけで右往左往している普通の人と、さらに積極的に自分のこだわりに沿った情報を集めては自分の偏見を強化する知性の低い人と、情報量が飛躍的に増えたネット社会において、時間の経過とともに知性に格差が生まれてくるのはあたりまえのコトなんじゃないの?
外国の大学に比べて日本の大学が落ちぶれていくのは『普通の人』のレベルが落ちたからじゃなくて、情報リテラシーのあるものとないものとの間で、時間の経過とともに知性の格差が広がっていくからなんじゃなかろーか?
今回はそんなお話。




