初の転送魔法です。
...が、すぐに閉じた。
うーん...この子をほかの生徒に見せる訳には行かないな...どーやって学園長室まで行けばいい?
俺が一人でウンウン考えているとルルが
「あの、どうかしたのですか?」
と聞いてきた。
「いやなぁ、ほかの生徒に君を見られないで移動するにはどーしたらいいかなーって考えてるんだよ」
「なるほどー...」
ルルは少し考えてからハッと顔を上げた。
「私のテレポートで移動するのはどうでしょうかっ!」
「テレポート?あぁ、ここに来るときに使ったってやつ?」
「はいっ!私近距離の転送術は得意なので任せてほしいのです!」
「うーん...まぁ、ほかに手段がなさそうだし、目立たないようにやって見てくれ」
「了解なのですっ!」
そう言うなり、ルルは懐から取り出したチョークで床に何かを書き始めた。
部屋に落書きは困るのだが、この状況だし致し方ないだろう。
それに、ホントに魔法が使えるならぜひ一度見てみたい。
そうこうしてるうちにルルが書いていたものが完成した。
それは六方星の描かれた魔法陣だった。
「いっしょに魔法陣に入ってくださいっ」
俺が彼女にくっつくようにして魔法陣に入ると
ルルは深呼吸をして目をゆっくりと閉じた。
そして右手をスッと差し出して
「ファルトーイ」
と呟いた。
すると、魔法陣が赤い閃光を放ち、頭上に浮かび上がり俺たちはちょうど筒型のカプセルにいるようになった。
俺はまた眩しくて目をつぶってしまった。
「...もう目を開けていいですよっ」
ルルの声で目を開けると、そこはもう学園長室だった。
「...すげぇぇ!ホントにできるんだなこんな事!」
俺が興奮しまくっていると、コホンという咳払いが聞こえた。
そちらを向いてみると、微笑を浮かべた老人ー学園長、鷹羽 琴次の姿があった。
「よく来たのぅ、ルル君」
穏やかな口調で学園長が言った。
「はじめまして!ルル=アルテリーベです!今日からこの学園でお世話になります!よろしくお願いします!」
ルルは元気よくあいさつをしてお辞儀をした。
すげーな、学園長。学校経営者で、金持ちで、この地域で有数の権力者なだけでなく、どこまでも広い人脈も持ってるとか。しかも異世界にまで知り合いがいるとか。
もぅ、何者なんだよ!っていうレベルに達してるよなー。
俺が一人蚊帳の外で考えていると、学園長が俺に話しかけて来た。
「おや?高山君ではないかの?ここで何をしとるんじゃ?」
「いやー、俺の部屋にこの子が現れて、それで学園長室に行きたいって言ってるから連れてきたって感じっす」
「ほーう、転送先は最初からここだったはずなんじゃがのう...」
「実は、転送陣の書き方をちょっと間違ってしまったのですっ」
テヘッとルルが舌を出していうと、
「そうかそうか、まぁ失敗は誰でもするものじゃからのう、ほっほっほ」
と学園長はほがらかに笑い、そしてこう続けた
「フム...何はともあれ、ルル君に知り合いができたのは良いことじゃのう。顔見知りが側にいたほうが君も安心じゃろうし、...いっそお主らで同じ部屋を使ったらどうじゃのう?」
...学園長、今なんて言いました?