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みっつめの話 11


 突然頭を叩かれたナビくんは、叩かれた頭部を抱えながら、痛みよりもそういう行為をされた事実が信じられないというような視線を向けてきた。

「い、いきなり何するんですかぁ!?」

 まぁ彼女からすれば理不尽な行為なのだろうが、私からすれば違う。だから言う。

「網が消えた事実に、私一人で驚いてるのがなんか腹立たしかったから」

「普通そこは謝るか言い訳するところじゃないですかね!?」

「別にそこまで痛くは無かっただろう? ただのおふざけじゃないか。――気晴らしも兼ねていたのは確かだけど」

「そ、それを言える佐藤さんは凄いと思います。悪い意味で。

 ……まぁいいです。それだけ親密になれたと、前向きに受け入れることにしておきましょう。それで今日はどうするのですか?」

 てっきり叩いた事実についての話が続くかと思っていたのだけれど。彼女の切り替えは相当早いようで、そんな風に今日の予定を聞いてきた。

 最悪、頭を叩かれたことに機嫌を悪くして、彼女がこの場から立ち去る可能性も考えていたのだが。杞憂に終わって何よりである。

 もっとも、ここまで否定的な意見を言わない様子を見せられると、色々と気になるところが増えるような気になったりもするのだけど。

 ……こちらに害があるわけでもないから、気にしないでおこう。

 今のところ、彼女は良き同行者であってそれ以上でもそれ以下でもない。そしてそれは、大変ありがたいことではあっても、決して悪いことではないのだ。

 それに、わざわざ自分から面倒事を増やす趣味もない。だったらそれでいいじゃないかと、そう思って、私は彼女の質問に対して考えていた予定を答えることにした。

「スカイツリーに行きたいんだ。道案内を頼みたい」

「……佐藤さんが行きたいというのであれば、是非もないですけど。なんでスカイツリーなんです?」

「元の世界だと行こうと思っても遠くて行けない有名なところだから」

「……おのぼりさんみたいですね」

「ははは、ナビくん。――喧嘩を売ってるんなら言い値で買い取るよ?」

「滅相も無い! お任せください!」

 そう言って、彼女の後について歩くこと数十分。

「すみません、佐藤さん。……道判らなくなっちゃいました」

 えへ、と笑いながら、首だけでこちらを振り向いてそう言った彼女の表情は容姿も相まって大変かわいらしかったのだけれど。

 罪には罰を、の精神で。

「――いたぁああ!」

 私が無言でその背中を思い切り叩いてやると、彼女はそんな叫び声をあげるのだった。



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