真実
その村は、人は少なかったが、小さなお店もあり、とても生活がしやすそうなところだ。もう遅い時間になっていたので、店じまいをしてはいたが、とてもおいしそうなものも並んでいた。まあ、お金がないので、買うことはできないし、あまりおなかは減ってないのだけれど、それでも、おいしそうな食べ物っていうのは食べたくなるものなんだな……
それにしても、やはり周りの人たちの私に向ける視線というのは、やはりおかしかった。というのも、全く目が合わないのだ。
今の私の服装は、今は比較的質素な服装をしてはいるものの、これだけだれにも話しかけられないなんてことがあるのだろうか。こっちから話しかけないとだめなのだろうか。
とりあえず、村の人に声をかけてみよう。私の噂はこっちにも着ているはずだし、私の家の方向も教えてくれるはずだ。
家の前で、掃除をしていた女性に声をかけた。
「あの、すいません」
しかし、女性は全く私に気がつてないようだ。
「すいません」
女性は、黙々と法規を掃き続ける。舞い上がった土埃が、私と女性の間に立ち上る。
「すいません!」
私は思わず声を荒げて、彼女のことを押した。いや、押したはずだった。
私は、彼女に触ることができなかった。
彼女に触ったはずの手は彼女を突き抜け、バランスを崩した私は、彼女を突き抜けて、地面に倒れてしまった。彼女はそれにももちろん気がつかずに、ほうきを掃き続ける。
「どうして……」
私がいままで誰にも声をかけられなかったのは、私に気がついてなかったということなのか……。たしかに、向こうから何も見えてなかったら、声をかけられることもないだろう。
でも、なんでこんなことに……。わたしは、月に帰るはずだったのに、他人の目に映らない姿のまま、地球に残っている。
では、私の見える体、実在する体は、いったいどこにあるというのだろう。地球のどこか、私の家の近くにあるのか、それとも、もう月に帰ってしまっているのか……
どのみち、人に物事を聞けないようでは、ことは何も進まない。今の私は、地球の、どこかわからないところにいる。それしか、私にはわからなかった




