長い道の始まり
不思議な日々がずっと続いた。わたしとすれ違う人たちはみな、私に声をかけてこない。一度だけ、通りかかった人にこちらから声をかけてみたが、馬に乗っていたからだろうか、反応はなかった。。服が地味になってしまうだけで、そんなに無視されるものなのだろうか。
それに、いくら歩いても、私はまったく疲れなかった。おなかもすかない。夜になると眠くなることはあるが、それも時たまだ。寝てすぐに目が覚めてしまう。
どうもあの日から、私の体は、なにかが変わった。でも、人がほとんどいないこの道では、なんら不便ではなかったし、むしろ前に進むにはつごうのいいことだった。
四日目の夜、どうしても眠くなった私は、茂みの中に隠れるようにしてねた。緑の中でねむっていると、かつて小さいときに遊んだ山々のことを思い出す。自然と涙があふれて、ひとりでさみしく泣いた。
夜中寝ていても、私が襲われることはなかった。朝起きると、茂みの隙間から、太陽の光がのぞく。目を細めると、ほおがすこしだけなにかに引っ張られるような感覚。どうやら、前日の涙が乾いていたようだ。
私はまた、歩き始める。とりあえず、どこか人がずんでいる所へつかないことには、どうしようもない。
そしてその日、ようやくまとまったちいさな灯りが見えた。人がすこし動いているようにも見える。規模そんなに大きくなさそうだが、たしかに人がいるようだった。
こんなに人がいるのをみるのは、ひさしぶりだ。月からお迎えが来たとき、二千人もの人が私をまもる為に来てくれた。そんなに人はいないのに、やはり久しぶりにみる人の動きは、うれしかった。
私の足は、思わず走りだしていた。




