ニートは役に立たないので、異世界に行って死ね!
この時代、五体満足で、働くのにはなんの支障もありはしないのに、なまけてばかりでちっとも働こうとしない若者が増えていた。
では、何をしているかといえば、家でゲームをしたり、マンガを読んだり、インターネット上を徘徊したり、テレビを見たりして過ごすのである。
そうして、「ああ~、今日も1日、無駄に過ごしてしまった。オレの人生、なんでこんなにつまんないんだろう。退屈だ。退屈だ。退屈で死んでしまいそうだ」などと言いながら、1日を終えるのである。
最初は、そんな人間も数が少なかったので、大きな問題になりはしなかった。
けれども、やがてそういった若者の数が増えていく。その人数は、数万人、数十万人と増加していき、ついに100万人を軽く越えてしまう。その後は、もはやその数を把握できないくらいにふくらんでしまったのである。
ここで、一生懸命マジメに働いている人たちも、堪忍袋の緒が切れて、ブチ切れた。
「なんだ、アイツらは!別にどこにも問題はないくせに、どうして働こうとしないのだ?それでいて、飯ばかりはシッカリと食う!政府も、あんな奴らを放置しておかないで、どうにかしろ!」
このような声が、国中で上がるようになった。
国というのはいい加減なもので。何か大きな問題が起きるまでは、動き出そうとはしない。
そうして、10年も20年もの時が過ぎていたのだが、さすがに今回は度が過ぎた。そうして、ようやく重い腰をあげることとなる。
また、この時代、別の世界へ移動する扉が開かれていた。
怪物が闊歩し、危険な武器や兵器が流通し、強大な威力の魔法が飛びかう世界である。
政府は、この世界へと、役立たずのニート共を送り込むことに決めた。
「かつて、コロンブスは新しい大地を見つけるために、大海原へと船を漕ぎ出した。今や、再びその時がやって来たのだ!人々を集え!新天地に飛び出せ!そうして、新しい発見や文化を持ち帰るのだ!」
そのようにおふれが出て、普段何もせずにゴロゴロとして暮らしているニートたちが駆り出された。
…とはいっても、体のいい厄介払いである。
「あんな奴ら、いつ死んでもいい。なぁに代わりはいくらでもいる。むしろ、死ね!この社会に何1つとして貢献しようとしない役立たずは死んでしまえ!」
と、政府の高官たちは、このように考えていたのである。
それは、政府高官たちだけではなく、世間の人々みんなが思っていた。
「いいぞ!いいぞ!やっちまで!」と、みんな賛同した。
ニートどもを養っている親たちも、賛同した。
「かわいそうだけど、仕方がないね。このまま、あと何年も何十年も、今の状態が続いたって何も解決しはしない。それだったら、お国のために異世界に行って、犠牲になりなさい」と、応援したのだった。
さて、困ったのは、普段から自堕落に暮らしていたニートどもである。
困ったけれども、仕方がない。他に手段がないのだ。中には、心機一転、気合いを入れ直して就職したりアルバイトについたりする者も現われたが、その数はあまり多くはなかった。また、そのほとんどは、刀折れ矢尽きて早々に退散してしまった。
それはそうである。長い間、全く働かずに家の中でノウノウと暮らしてきた者にとって、世間の労働はつらかった。つらすぎた。
「社会が、こんなにも厳しいところだったとは。働くというのが、こんなにも大変なことだったとは。こんなことならば、異世界に行った方がいい。異世界に行って、潔く死のう」
そう考えて、ニートどもは、次々と異世界への扉をくぐっていったのだった。
*
さて、それから数年の時が経過した。
100万人以上のニートが、異世界へと出かけていき、ほとんど誰も戻ってはこなかった。その多くは、怪物に喰われたり、戦闘で死亡したりした。
ところが、である。
さすがに数が多かったということもあるが、中には異世界の環境に適性を持っている者もあった。そうして、堅実に剣の腕を上げたり、いくつもの魔法を覚えたりして、見知らぬ世界で立派に生きのびていたのだ。
なにごともやってみるものだ。
そういった者たちが、皆、勇者となり、異世界の平和に貢献しているとは限らない。闇に墜ち、魔王に味方する者もまた何人もいた。
そうして、勇者軍と魔王軍にわかれて、激しい戦闘を繰り返していたのである。
だが、ある日、彼らははたと気づく。
「オレたちは、一体、何をやっているのだろうか?」
「これは不毛な争いなのではないか?」
「そうだ、そうだ。こんな醜い争いを繰り返していても、意味はない。何も生み出しはしない。それよりも、もっと健全に生きていこう!」
こうして、勇者の一団と魔王の軍団は、固く握手をかわして仲直りをしたのである。
もちろん、これでお話は終わらない。
「さて、固く手を取り合ったところで…」
「そうだな。次なる目標に向ってまい進するか。新しい世界へと進軍しよう」
異世界の住人たちはそう言って、協力し合い、別の世界を領土とするため動き出した。
そうして、こちらの世界へと進軍を開始したのである。
その中心にいたのは、かつてのニートたちであった。その昔、自分たちをゴミクズのように扱い、別の世界へと捨ててしまった者どもに復讐するために。異世界で身につけた圧倒的な能力を振るうために…




