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魔剣から始まる物語  作者: ほにゅうるい
第一章 異世界の剣士の一年
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004


彼が見た風景。それもまた、1つの別世界。


 ゴブリンを倒した後、女の持っていた水と布である程度、体の汚れを拭いた。


 でも、服に染みてしまった血はどうしようもない。大量に染みてしまった血が時間の経過と共に固まってきて、服がだんだんごわごわしてきて、歩きにくくなってきた。しかも、血生臭い匂いはまったく消えない。この鉄が腐ったような、かびた様な、独特なにおい……。乾くにつれて鮮やかな赤がどす黒くなっていく見た目……。


「ぐ~。色々と気持ちわりぃ……」


「が、頑張ってください!」


 女の適当な応援なんてむなしいだけだぜ……。そんな最悪な状況で歩き続けて暫くたつと、遠くに目的の場所の一片が見えてきた。


「あ、見えてきましたね」


 女がほっと息を吐くと、僕を見ながら指を指した。女が指を指した方向を見る。最初に木々の数が少なくなり、少しずつ広くなっていく道が見えた。そしてかなり遠くに、生い茂る木々の緑に似合わない真っ白な建造物が見えていた。


「おぉ」


 あれが聖なる都か。まだ結構距離あるのに見えるってことは、かなりでかい町ってことか?


 もう暫く歩き続けると、その全貌が見えてきた。高い壁に町が覆われていて、壁より高い建造物がぴょこぴょこ飛び出て見える。壁の色はクリーム色で、緑とまったくマッチしない。


 さらに歩き続け、もう数分で町に着くくらいまで近づくと、完全に木々が途絶えて、整備された道に出た。整備された道と言っても、雑草がきれいに取り払われて、細かな砂利が敷き詰められているだけだけどね。


 にしても、ここまで近づくと改めて町の大きさに驚く。


 まず、町を囲うクリーム色の壁は、十数メートルもの高さがあって、ものすごく頑丈そうだ。魔物が存在する世界だからこれくらいは普通なのかな。でも僕のいる村にはこんな壁なかったしなぁ……。


 それに、ここまで近づくと、壁で町の中の建物がまったく見えない。町は円形みたいだし、かなりの大きさがあるから首を左右に振っても町の端が見えない。

 

 クリーム色の壁をくりぬいて作ったような、城門と言うか、壁門もかなり大きい。大体、2メートルくらいはあるのかな。


 凄いなぁ。中はどうなってるんだろう? 楽しみだ!





「誰だ貴様!! 怪しい奴だ!」


 僕の出鼻は門番に挫かれた。軽い気持ちで門を叩いて、中に入れてもらおうとした。門はゆっくりと開き、中から鎧を着て、槍を持った人が出てきた。おそらく門番。その門番に僕の姿、つまり血まみれの僕を見て、叫ばれ、人が増え、すごく睨まれ……。


 壁の中に作られた一室に閉じ込められて、門番の人達からの一方的な尋問が始まった。


 ですよね。血まみれだもん。不審者ですよね~! 僕のフォローをしようとしてくれた女もあわあわ喋るだけで、何にも状況説明にならず、取り合ってくれないという始末。ちっ、ちゃんと喋りなさいよ!! 僕に関しては上手く喋れないから「ちゃんと話せ!」と怒られる始末。これは酷い……!! しばらくその事情を話すのに時間がかかった。


 村からシャルルに来たのに、どうして血まみれなのかっていうのが根本的な質問だったから、それに関して一生懸命説明するのが主な話した内容だった。魔物が出たといってもなかなか信じてもらえなかったが、たまたま服に張り付いていたゴブリンの皮膚が証拠になった。


 僕も全然気づかなくて、へばりついたゴブリンの皮膚を見たときに思わず叫びそうになった。肉片怖すぎでしょう。そもそも魔剣で綺麗に切ったはずなんだから、肉片が飛び散るって……そういえば、1匹だけ突き刺して殺したような……。


 ……まぁ、そのあとどうやって倒したのだとか、色々言われたけど。


「助けてもらった」


 の、一点張りでなんとかなった。門番たちも僕や女みたいな子供がゴブリンを殺せるはずもないし、なにより武器を持っていない。逆に倒したって方が怪しい。と、色々勘違いしてくれたおかげでその日のうちに開放してくれた。


 さらに、門番の人達は親切に1000ギスという値段で服を売ってくれて、シャワーも貸してくれた。ありがたい。血まみれの服のままで街中歩いたらそれこそ犯罪者扱いされる。


 んー。……シャワーって普通にあるんだね。アンデの食堂じゃ、アンデの炎を利用して作ったお湯をつかって体をきれいにするくらいしかなかった。と言っても、上からぬるい水が降るだけの簡易な装置だったけど。石鹸もある。アンデの食堂じゃ、アンデの炎を利用して作ったお湯をつかって体をきれいにするくらいしかなかった。石鹸なんてものはなかったし、けっこう貴重なものなのかもしれない。う~む……。


 そういえば、部屋の中にも丸い電球の電気スタンドみたいなのがあったな。でも、コンセントはなかった。どうやって光ってるんだ?


 シャワーを浴びた後、僕は門番の人に貰った模様も何もない質素な白いシャツと、僕には少し大きめのカーゴパンツのような茶色いズボンを着た。


 そういえば、1000ギスって、安いのかなぁ?


 体をきれいにしたあと、門番の言う書類とやらを色々書かされた。僕は文字がかけないので、門番の人に書いてもらった。その作業が済むと、そのまま何事もなかったかのように街の中に通され、予定よりだいぶ時間がかかったけど、ようやく聖なる都といわれる、シャルルへ入ることが出来た。


 壁の中の一室を出て、壁の内側への扉を開く。昼の最高に明るい光が僕の目に飛び込んで、あまりの眩しさに僕は目を細める。


 しだいに、慣れてきて、大きく目を開く。


 ……この町。凄い!


「うおー! でかい! 写真で見た昔の『ヨーロッパ』みたいだ!」


「『ヨーロッパ』ってどこですか?」


「こんなとこ!」


「?? とにかく、あんまり叫ばないでください。田舎者ってばれちゃうじゃないですか!!」


「あなた、服でばれますから、問題ないです」


「がーんっ!?」


 ショートコントを道端で展開してばかりではなく、ちゃんと観察も済ませる。本当に凄い!


 ムー大陸でも有数の多くの人が住む大きな都。その名に恥じない広大さだ。町の奥に城みたいなの見える! 凄い! 凄いぞ!


 青や赤、緑と色とりどりのレンガが扱われている家。


 歩きやすいように淡色のレンガで舗装された道路。かなりの人数が往来する道。その人々にものを売ろうと、小さな露天を開いて大声で客を呼び止めようとする商人。


 遠くには少し開けた場所があって、噴水も見える!!


 人の様子がもとの世界みたいだけど、街の雰囲気が全然違うからまったく違ったものに見える!


 家にはレンガのような石が基本的に使われていて、建物も、道も、道路も基本的にレンガ。たまに木材も見えるけど、基本的には石が使われている。車は一切無く、馬が馬車を引き、当たり前のように行き来してる。馬車の数は、見えるだけでも5台くらい見える。結構日常的に使われる乗り物なんだろうな。往来する人々は中には僕と同じように質素な服を着ている人もいれば、ふわふわしてぴかぴかしているドレスを着て、いわゆる貴族っぽい人もいた。


 こんな光景もとの世界じゃインターネットでも見たことない!


 さっそく、この世界に来ていいものが見れた。


「あ、あの」


 む!? で、電灯かこれ!? 道路の両脇に電灯みたいなのが立っている!!


『凄い。これ電灯? なんで車が無いのに電気が使えてるの? 文明の順序変だよね。本来ならガソリンとか、もっと一般的に普及していいはずなのに。あーこんなことならもっと勉強するんだったな』


「あ、あのぉ?」


 馬車が結構行き来するんだな。馬を使ってる割に、糞とか結構目立たない。町は凄くきれいだ!


『ん~。でも信号は無いんだな。アンデのいる村じゃ電気は無いから、そんなに普及しているものじゃないんだろうな。この町に住んでいる人も流石に夜はろうそくとか油で火を点けて生活するのかな? ……あ、そうか、魔法とか神聖術とか、そういったものがあるから、それで光とかつけてるのかな!? それなら、電気なんて存在を探す必要がなかったのかな。文明の成長が元の世界と違って変なのはそのせいかな』


「すいません?」


 おお!? 真っ白い石でつくられた建物がある! そして、建物の上部にかなり大きなステンドグラスが見える。中に入ったら綺麗なのかな!? てかこれ。


『でっかい教会じゃん! 宗教みたいなのがあるのか!? おおっ! こっちは商店街だ。凄い! さっき見た露天がいっぱい出てる!! 建物の中にもお店があるみたいだ! 残金1万9000ギスあるし、いろんなもの買えるといいな。ってなにあれ!? 分厚い鎧の人が平然と歩いてる! あれが騎士? それともレベルの高い冒険者?』


「すいません!」


 !?!?!?!?!?


「うわぁ!? な、なんですか?」


 テンションがあがりすぎて、観察に集中していてびっくりした!


「私を無視して一人で何語を喋ってるんですか!」


 怒られた。しかも、テンションがあがりすぎて、自然と日本語をぺらぺらと話していたらしい。周りの人が僕を横目に見ながら、ひそひそ隣の人と僕の話をしているようだ。


 は、恥ずかしい。


「もう……あなた、名前なんですか?」


「名前? あれ、言ってなかったっけ?」


 そういうと、女の表情に影が差した。そして、深いため息をついた。なぜため息をされた……!? そういえば、女の人の名前知らない。自己紹介してなかったっけ。


「……あなた、嫌そうな顔して私と一緒に来てもいい、って言ったから。言い出せ無くて」


 そうだったっけ。確かに今回みたいに見られたくないとこだってあるし、他人を守る義理もないし。面倒だたしなぁ。


「私は、セリア。17です。苦手なものは血と魔物です」


 後半は知ってるよ。とは言わない。


「僕は向井、夕、14です。苦手なものは面倒事」


「じゅ!? じゅうよん!?」


 驚きすぎ。周りの人がまた僕達に注目している。一度気にし始めるとかなり恥ずかしい……!!


「神聖術の学生なら納得ですけど、あの時どうやったか知りませんがゴブリン斬って殺してますよね!? 凄いです!」


 し、しまった。14そこらの子供が魔物を倒すなんておかしなことだったか!? でも僕くらいの年の冒険者がいれば、そうか、神聖術が使えればもしかしたら戦える、だから冒険者も出来るとかそういうことか!?


「あれ? そういえば、本当にどうやってゴブリン切ったんですか? 神聖術あつかう学生じゃないですよね? 武器も持ってないし……」


「わ、忘れてください。あと、周りに広めないでください」


 なんとか口封じに走る。知名度が上がると致命的だ。こっそり生活したいんだから。


「えー、何でですか!? 14で魔物を退治できるなんて凄いですよ!」


「そ、そこをなんとか……」


「えー!?」


 こ、この女! 助けたんだからそれくらい聞けよ! 馬鹿なのか!?


「ん~わかりました。じゃあひとつ条件を飲んでください」


「ぐっ」


 あ、足元見やがって……。この女……!!


「帰りも、送ってください」


「わ、わかりました。必ず、送りします」


 な、なんだ、たいしたことじゃなくてよかった。


「私の用事を済ませてきますね。陽が沈み始める前にあのお店で待ち合わせしましょう」


 商店街にある店を指差した。あれ、何の店? 看板に何か書いてあるけど、全然読めん。


 それに、陽が沈むころってアバウトだなぁ。時間という概念があるみたいだけど、時分秒の単位は存在しない。不思議な文明の成長だなぁ。







 僕にとっての危機が去って、わくわくお買い物タイムがやってきた。ちょうど商店街のような場所を見つけることが出来たわけだし、早速商店街に突入。荒れ狂う人の流れが僕の動きを妨害するけど、今の僕の敵じゃない!!


 何度跳ね除けられようと、僕は前へ進む!!


「にしても、流石商店街。いろいろなものがある」


 さまざまな露天が並んでいて、美味しそうな匂いやら、安い服から高い金品までずらずらと。……おいしそうな匂いはグロテスクな食品から漂ってくるわけなんですが。


 ただ、金品は偽者のような気がする。確証はないけど、隆介がこういう場所で売ってる金品に本物なんてないんだ! って泣きながら叫んでいたから。きっと一杯食わされたんだろう。


 とにかく、財布を買おう。麻袋に金を突っ込んでいる状態もそろそろ卒業したい。


「へいそこの男の子。何か欲しいお菓子はないかい?」


 ふらふらと露天をさ迷い歩いていたら、駄菓子屋、かな。のおっさんに話しかけられた。


「財布、捜してるんですけど」


 といいながらも、お菓子から目を離さない僕。正確には値札。この世界のものの価値というのを一通り見ておくべき。ここはお菓子を売ってる露天か。水あめ、クッキー、グミみたいなのと、氷菓子? 読めないけど、写真を見るに、ソフトクリームみたいなのが売っているらしい。どれもこれも80ギス前後。あと、見た目が凄くいい。クッキーの色が紫だったり、グミがカラフルだったりするけど、お菓子ってだけで色が変でも抵抗なく食べれる気がする。


「お、子供の癖に財布だなんて生意気だねぇ」


「え?」


「財布を買うなんて贅沢な子供だな、はっはっはっは」


 な、なにぃ!? この国の子供は普通財布を持たないのか!?


 ……いやいや、そんなわけ無いか。そんなのだったら子供向けの駄菓子屋が子供を直接呼ぶなんて事しないだろうし。でも、出来る限り怪しまれたくはない。


「えっと、お父さんに、プレゼント」


 と、誤魔化してみる。


「お、そうなのかい? ……いい子だねぇ。おじさん感動しちゃった。雑貨とかは向こうにあるよ」


「ありがとう」


 なぜか感動された。父親にプレゼントっていう習慣は特にないのかな?


「ほら、サービスだ」


 お、緑色の水あめっぽいのくれた。……10ギスの物か。もっと弾んでくれてもいいじゃない。まぁ、この価格のこの世界の甘い食べ物っていうのも知るべきだよね。


 ……普通に、砂糖の味。草の味でもするのかと思ったけど、そんなことはなかった。


 でも久々の甘いものだ。ずっと、冷めた米に、冷めた肉。要するにあまり物。あ、アンデが俺を雇ってくれてるって言うのは、あまり物処分係としても働いてるからなのか!?


 ……まぁ、食い扶持があるのはいいことだけどさ。


 一言お礼を告げて、駄菓子屋さんを後にし、勧めてくれた雑貨屋(?)に移動する。露天だからか、必要なものはすぐに見つかった。財布が箱の上に綺麗に並べられていた。元の世界で言う長財布っていうのはなくて、どれもこれも紙幣を二つ折りした形の財布だった。でも、綺麗で、とても機能的な形をしていた。硬貨はしまいやすそうだし、このカードをしまう部分も使いやすそう……。カードって、この世界にカードって概念があるの? あるよなぁ。なきゃ財布にカードホルダーなんて付けないだろうし……。身分証名称なのとかあるのかな。


 それはさておき、ざっと見回すとどの財布も3万ギスとか、高いものばかり。それともこれが一般的な人の持つ適正の財布なのかな。だとしたら手が出せない。たしかに、子供が持つには高級品だな。


 なんて考えていたら、箱の上じゃなくて箱の中に適当に詰まれている財布もたくさんあった。見た目はどれもこれもいまいちで、使いにくそうなものばかりだった。すぐ壊れちゃいそう。でも、安さ大事。どの財布も2000ギス程度。安いものは安いね! 僕からしたら大助かりだけど。


「財布財布……首にかけるやつか。これがいいかな」


 首にかけるタイプの財布を発見した。ちょうど僕に合う。


「いらっしゃい。子供が財布なんて珍しいねぇ」


 やっぱり珍しいらしい。子供は財布を持たないのか?


 ……鞄を持つ習慣がないからかなぁ?


 この世界のポケットっていうのは本当に小物を入れるタイプで、財布は鞄に入れる習慣があるようだ。さっきからポケットに手を突っ込んで財布を取り出す人なんて誰一人いない。


 僕は鞄なんてだるいものは持ちたくないけど財布が欲しい。ということで、硬貨をじゃらじゃら入れても問題ない皮の財布を買いました。1500ギスした。


 即購入して、小銭、をじゃらじゃらと入れる。


 そう。小銭しかない。


 といっても、僕の感覚だと小銭なんだけど、これ一枚一枚がものすごい価値らしい。


 金貨。1枚1万ギス。本当に金の塊だからびっくりだ。この世界だと金はそんなに貴重じゃないのかな。そして、作り方がわからないくらい精巧な模様が刻まれている。一枚一枚ずれなくこの模様だから、きっと製法が特殊なんだろなと思う。


 銀貨。1枚1000ギス。銀だね。これも模様が金のやつと同じ。


 そして、銅貨、1枚100ギス。わかりやすいね。これも模様が以下略。


 それ以下は紙幣になっている。紙幣の方が高価より安いっていう、元の世界とは逆転してる状態だから、ちょっと違和感。


 50ギス紙幣。10ギス紙幣。1ギス紙幣と種類がある。


 つまり今僕は、金貨1枚と銀貨7枚と銅貨5枚を持っているわけだ。結構かさばりそうなもんだけど、硬貨一枚一枚が10円玉くらいのサイズだからそんなに邪魔にもならない。


 まぁそれでも、財布が重くてたまらないね。だから、鞄が必要なんだろうな。でも、鞄だと……。


「きゃー!」


 ……引ったくりが多くありそうだな。今まさに僕の目の前で女の鞄が黒い服の男に盗まれていった。


「誰か! そいつを捕まえて!」


 女が叫ぶけど、皆知らんぷり。聖なる都というにはちょっと薄情な人が多いね。僕もそのうちの一人だけど。しばらく眺めて、女がさめざめと泣き始めるのを見納めた。まぁ、盗るほうも悪いけど盗られるほうも悪いね。次にこの世界ではどんなものが売っているのかを探索しよう。


 調べた結果は大体こんな感じ。


 店から出てくる人の感想とか盗み聞きした。メニューも読めないんだからしょうがないでしょ! ……外食、安く食べようと思うとおよそ400ギス。おいしく食べようと思うと1000ギスほど。となると、うちの店一食500ギスくらいなのは良心的なんだな。


 衣類。一般人が着る服の値段は一着800ギス~2000ギスほどだった。1000ギスで上下って結構安いんだな。


 宿。一泊3000ギスほど。なんとか読もうと看板にに注視していると、宿を借りようとしていると思われたのか。


「ませてる子供だなぁ~」


 と言われた。……ませてる? もしや、これが、うわさに聞く、あの、ラブホか……?


 隆介に聞いた話、女の子とキャッキャウフフとかなんとかするホテルらしいが、僕は一人ですよ? そういう勘違いされるのもちょっと悔しい。それより、この世界にそういうのもあるんですね……。


 なんていうか、あれだ。価値はあまり円と変わらないのかな。


 1ギス=1円くらいであってるかもしれない。物価は、安いものは安くて、高いものは高い。って感じだね。ただ硬貨と紙幣の価値が逆転してるからちょっと使いにくいかも。


 なんて思案していると背後で怒号が。


「は、放せ!!」


 ある細身の人間が、男の首根っこを片手でつかみ、まださめざめと泣いていた女性の下まで引っ張ってきていた。なにそれ凄い。


「君の手にある鞄を放してくれたら考えよう」


「ち、畜生!!」


 首根っこつかまれている男は、先程女から鞄を引ったくった奴だった。そいつが細身の人に首根っこつかまれている。捕らえていたその細身の人間は超イケメンの男で、さわやか声で、不思議なオーラを発しているように見える好青年。っていうか、主人公みたいなやつだった。


 完璧って言葉が似合う。その男に僕は言い知れぬ恐怖を覚えた。人類ってあんなに完璧でいいの!? みたいな感覚。出来ればあんなイケメンとはかかわらずに生きていきたいね。隆介がなぜかイケメンに敵意を持っていたことから、あんまりいいことはないんじゃないかな。っていう安直な考えだけど。


 ……イケメンが嫌いなわけではないけれども、でも、あいつは本当に近寄りがたい気がする。


 ま、まぁ、それをさておき、他に、何か買うものあるかな。知識を得るために本とかでも、いいかもしれない。といっても本屋が見当たらない。露天には本屋はないらしい。普通のお店の中にはあるのかもしれないけど、店の名前が完璧に読めない上に意味もわからないから適当に入るのも時間がかかる。何より飲食店に入って何もせず出るという冷やかし行為は、子供でもなかなか許してはくれない気がする。


「っお」


 商店街を抜けてしまった。露天もぱったり止まった。やはり本屋は見つからないか……。まぁ露天で本屋とか聞いたことないしなぁ。


 ……ん。あれは、冒険者ギルドってやつじゃないか?


 変に武装した人間とか、変な魔法使いな見た目をしたやつとか、特にこれといって特徴がないのにどことなく怪しかったりとか、自然と気配を消す歩行方法で歩いてるやつとか、ちらほら集まっている建物を見つけた。


 その中に僕のような年齢の子供はいなかった。やっぱり冒険者って子供がなるもんじゃないよね。


 となると、魔物に対抗できるって子供といえば、神聖術使いになるのを目指しているかどうかはさておき、そういう学生が抵抗できる手段を持っているわけなんだろうな。


 ……僕も使えないかなぁ。そういう特殊技能。







異世界生活91日

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 向井 夕 (むかい ゆう) 現状


武器 魔剣ライフドレイン


防具   新品の服


重要道具 もってない


所持金  1万7500ギス (家に3000ギスと500円を置いてきている。


技術   剣道2段


     異世界の言葉(聞く、話す、ちょっと読む、ちょっと書ける


     中学2年生レベルの数学


職業   デトラオン(悪魔の)食堂店員 (バイト)



財布を手に入れた!


2012/5/22 見直し、表現の修正、誤字の修正などなど

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