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魔剣から始まる物語  作者: ほにゅうるい
第二章 神と敵対する剣
29/45

023

剣を抜く戦いから彼は逃れられる?



 放課後の教室。日が落ちて、夕日が教室に差し込む。元の世界に戻ってきたんじゃないのかなと錯覚してしまうほど、風景が酷似していた。技術力に差はあるけど、やっぱり同じ人間が作ったものなんだなとしみじみ思う。


 今日一日過ごしてわかったことがある。技術力の中途半端な成長についてだ。例えば、明かりについて。電気をつかう技術は一応あるみたいだけど、そんなものに頼らなくても神素さえあれば明かりが点けれる。


 根も葉もない予想だけど、恐らく元の世界の出来ることはこっちの世界でも出来る。方法は違うけど。


 台所の火を使う場所だって魔素さえあれば火が使える仕組みになってるし、氷だって魔素があれば作れる。医療道具がなくても神素があれば病気も怪我も治せる。


 そういう意味で言えば技術力は対等なんじゃないか? まぁ語弊があるけどね……。


 そうなると建築物の古さとかで、僕の予想に矛盾が生じるけど……。まぁ、いずれわかるかな?


 ヤンキーに絡まれたあの後、もう何回かクロムンと手合わせをして、訓練終了となった。結局クロムンには一太刀も浴びせることできずだったなぁ。クロムンに一汗かかせることには成功したけど、反して僕は何度も短刀で突かれたり吹っ飛ばされたり、色々叩きのめされてしまった。


 おかげで体の節々が痛い。日々の訓練のおかげでかろうじて筋肉痛はない。と思う。


「クロムン。今日はありがとう」


「……構わない。友達として当たり前のこと」


「いやぁ、初日から友達が出来て本当によかった」


 本当助かった。初日からヤンキーばっかり相手にしてたら途中でくじけていたと思う。友達がいれば、例えば文字が読めないとか、そんな困難に遭遇しても人に聞くことさえ出来れば何とかなる。


「……じゃあ、僕は昨日撮った写真を現像しに帰る」


 毎日50枚は撮るらしい。何を撮っているか聞いてみたら、男のロマン、と一言だけ答えてくれた。僕にはそれで十分だった。


 クロムンはバイトをしていて、それで稼いだお金を全てフィルムにつぎ込むほどのカメラ好きだからな。


「わかった。じゃ、また明日」


「……明日?」


「え? 違うの?」


「……3日おき。今日で3日目だから、3日間休み」


 仕組みが大きく違うな。5日行って2日休みって体制じゃないのか。そういえばこの世界に曜日って概念はなかったな。ということは、3日間も自主訓練に当てれるって事か。


 いや、厳密に言えば、使用人の仕事もあるから訓練に割り振れる時間はそんなに多くないな。だけど、今日教えてもらった神素呼吸。これを使用人の仕事中にも出来るようになれば……。もしかしたら、他にもいい訓練法が有るかもしれない。


「……それじゃ、またね」


「あ、いや、ちょっと待ってクロムン」


「……なに?」


「なんか、神素の扱い方のいい練習法とか、ないかな?」


「……私生活で、薄くでいいから常に神素呼吸をすること。僕っちも、家じゃずっと神素呼吸で生活してる」


 やっぱ、基本的にはそうなのかな。


「なるほど、って、難しいなそれ」


 よくよく考えたら、神素呼吸を生活しながら行うのは難しい。けっこう集中力つかうからね。


 初めてやったにしてはかなり上手いと褒められた僕だが、やっぱりユニコーンクラスとの人達との差は明確だ。ただ1つ神素呼吸するにしても差が出る。なら、やっぱり回数こなすしかないわけだ。


 ちょっと億劫だけど、強くなるためには避けては通れない道だ。


「……じゃ、頑張って」


「わかった」


 クロムンが教室から出て行くのを見送ってから、僕の背後でなにやら片づけをしているシェスに意識を向ける。シェスが片づけを終えて、教室から出て行くのを眺めた。


 そのままついていきたいのだけれども、さっきからヤンキーが僕に熱い視線を送り続けているからなぁ。タイミングを図って絡まれないように、かつ不自然にならないタイミングでシェスを追わないといけない。というか、したい。


 まったくなんだってこんな奴に目をつけられなきゃいけないんだよ……。あ、そんなことしてる場合じゃないや。シェスを見失ったら元も子もない。追わないと。


「僕も、帰るか」


 教室をでて、玄関へ急ぎ足で向かう。シェスの背を見付けると、歩く速度を落として、つかず離れずの距離を保ちながらシェスの後を追った。


 学園の出て、ディモンさんの屋敷へと向かう。来た道を辿るだけだ。僕やシェスのほかにも多くの同じ服を着た生徒が学園内部から吐き出されるように、どんどん町へと溶けていく。


 んー。これで授業内容まで同じだったら元の世界と何も変わらないな……。


 隆介はファンタジーの世界の学校は戦って戦って、魔法を練習したりして、そしてハーレムがなんだかんだと夢を語っていたけど。確かに魔法っていうか、神聖術の練習はあるけど、ちゃんと座学だってある。あんまりもとの世界と変わらない日常だ。


 春がこの世界を見て回ったらなんていうかな。好奇心が凄いから、毎日テンションが振り切れた状態でぎゃーぎゃー騒いでそうだ。


 馬車が4台もすれ違えそうな車道と、人が5人ならんでもまだ余裕のある広々とした歩道がある太い道を夕日を眺めながら歩いていると、商店街から気のいいおばさんの声が聞こえてきたり、ホットドッグのような食べ物を売っている屋台が広場で商売していたり、八百屋さんで世間話をするおばさんを見かけたり、すこし煌びやかな正装をして難しい話をしている大人だっている。馬車を引く馬が車くらいの速度で走り去っていくのが未だに見慣れないけど、平和だな。異世界にやってくる前までは、僕も元の世界でいつもこんな風景を目にしながら生活していた。本当に平和だ。




 元の世界が、懐かしい。




 なんだかんだ、この1年間ものすごく忙しくて、異世界に適応するのに精一杯で、元の世界に帰りたいなんてことも全然考えなかったな……。


 春、隆介。2人とも元気かな。春は僕と同い年だから、今は15歳か。中学3年生。高校受験か。隆介と同じ高校に行きたいって行ってたし、春の学力なら全然余裕だろうな。隆介はなにやってるのかな。僕より全然子供っぽいところとか、治ったのかな。多分、18だから大学受験だろうし、泣き言、言いながら勉強してるんだろうな。


 やっぱり……旅に出よう。綺麗な景色も見たいってのもあるけど、元の世界に変える手段も探してみよう。案外、この世界と行き来できるかもしれない。ファンタジーだし、ありえない話じゃないはず。それにこのままエイオーツにいることも出来ないだろうしな……。この左手の武器だって、今はばれていないけどそのうちイケメンみたいな奴が現れて、魔剣の存在をばらしてしまうかも知れない。平和でボケてしまいそうだけど忘れちゃいけない。僕は常に危険な爆弾を持ち歩いているんだ。


 旅に出るにはやっぱり強くなろう……。もう奪われないように。あ、そうだ。その第1歩として、歩きながら神素呼吸を早速練習してみよう。


 ……お、意外と出来る。神素を肺にためて、それを吸収……ってやっぱり難しい。吸収した辺りで歩く速度をものすごく落とさないと意識が回らないっ。周りへの注意力も散漫になるし、一瞬シェスの姿を見失うしで散々だ。


 ってあれ? シェスが見知らない道の、細道へ歩いていった。エイオーツは細道が少ない町だから、細道に入ったらすぐにわかる。いったい何の用だろう。


「見失いそうだ」


 少し早歩きで細道まで一気に接近して、その道を進んでいく。細道って言っても、馬車がすれ違えるほどの大きさはある。本通りよりも細いってだけなんだ。その細道へ曲がった。


「うわっ」


 瞬間、シェスが待ち構えていて驚いてしまった。神素が体に集まっていて、いつでも戦闘できる状態のシェスだった。


「……なんでわかったの?」


 一応気づかれないように尾行していたつもりだったんだけど……。


「学園を出てから気づいてた。でも急に神素呼吸なんてし始めるから、戦いたいんでしょ? 着て、街中じゃ人に迷惑になる」


 シェスはそう言って、僕に背を向けて細道の奥へと歩き出した。戦いたい、って、え?


「いや、別に。ただ、歩きながら神素呼吸って結構練習になるってクロムンに教えてもらったから」


 そう答えると、シェスの歩きがピタリと止まる。


「……じゃあ何で私に着いて来たの?」


「一応、僕使用人だからお見送り、かなぁ」


 ボディーガードとは言うなと言われてるから、嘘をついてみた。お見送りなんて使いどころを完全に間違っている。シェスも僕への疑いの眼差しが途絶えてない。


「……」


「あ、あと、道がわからなかったです。ディモン様も、シェス様を頼っていいよって」


 これは8割本音だ。決して。1人で帰れなかったわけじゃない。そう、道は覚えてるけど、多少不安だったに過ぎない!!


 ……。うん。


「……そう。私の目が欲しい訳じゃないのね」


「目? 別にシェスのことは嫌いじゃないけど……」


 恋愛対象としては、どうだろう……。というか、こっちの世界じゃ恋愛も実力が必要なのか!? なんて考えていたら、シェスは呆れたようにため息をついた。


「ユウ。多分あなたは勘違いをしている」


 ? 何を勘違いしたんだろう……?


「どうやら本当に何も知らないのね。出てきていいわよ」


「「かしこまりましたお嬢様」」


「うわ!?」


 見知らぬ男が2人突然現れた!? 急にどこから……? 2人とも、正装をして体がものすごい鍛えてある人だ。既に神素で身体強化しているところを見ると、戦闘が日常茶飯事ってところじゃないのかな。


「……気づいてなかったの? 神素だって結構集めていたのよ」


「ぜ、全然。だれ、この2人」


「……父上が学園の行きと帰りにつけてくれているボディーガード」


 あー。この人達が学園の外でのシェスのボディーガードになるのか。


「お嬢様。多分この男は白だと思われます。あまりにも無防備な上、目を知らない。ディモン様の目に狂いはないかと思われます」


「……そうね。暗殺者か偵察者かと思ったけど、父上がそんなミスを犯すはずもなかったわ」


「シェス様。目ってなんだ? いや、なんですか? 今の告白文句ですか?」


「……勘が悪いと言うか、魔眼とか神眼のことすら知らないの?」


 ええ、もちろん知りませんとも!!


「もちろん知りませんって顔してるわね」


 なぜ、ばれた。怖っ……。


「……先天的だったり後天的するんだけど、特別な力を眼などに宿す者が極稀にいるの」


 なんか、隆介がジャキガン? を開眼してたけど。そういったものなのかな。


「眼でいうと、力を使う際に使用する"素"で神眼と魔眼に分かれる」


 神眼なら神素、魔眼なら魔素ってことか。


「私は、この国にはあまり好かれていない魔眼を開眼している」


 確かに、魔素を用いるのを極力避けようとするこの国じゃ喜ばしくない能力の1つだな。なんだかんだ台所や冷蔵庫に魔素を用いた道具があるのにな。


「シェス様にはどんな力があるの、ですか?」


「……それは秘密」


 残念……暴走すると力があふれ出すとかだったら、ジャキガンっていうのがすぐわかったのに。


「私と父上。そしてここにいる2人にしか教えていない。国にも私が開眼していると言う事しか伝えていない」


「なるほど」


 なんだか読めてきたぞ。魔素使いは嫌われるから、魔素を使う魔眼を開眼しているというのは、いじめの対象になりやすいとかそういうことを危惧して、学園内でのボディーガードで僕に白羽の矢を立てたって事か。


 魔素使いの肩身の狭さは今日味わったところだし。


「そういえば、僕が目が欲しいって勘違いしてたけど、能力って奪えるのですか?」


 寒気。これは、ボディーガードの2人から? 爆弾発言でもしちゃった?


「欲しいの?」


「いや、要らない。なくても強くなります」


「そう」


 あれ、シェスがなんだか笑った様な気がする。でも、まだ寒気が……これは、シェスの後方からだな。


「無理よ。でも、その研究をしたいと思っている人はいるわ。魔素や邪法の研究をしている奴らは魔眼を欲しがってる。あいつらみたいに」


 シェスが僕から眼をそらして後方へ視線を移すと、さっきまで人がいなかった場所に、人が現れていた。


「瞬間移動?」


「神聖閃光術よ。光の屈折を操ってあたかもそこにいないように見せかける。使用人が気づいていないだけで、元からあそこにいたわ」


 なるほど、懐中電灯くらいにしかならないと思ってたけど閃光術便利だな。それで、あの黒いローブで全身を覆った奴が見えなくなっていたのか。んで、さっきから感じている寒気はこいつからか。……いや、やっぱりボディーガードの人もまだ僕に殺気を送り続けている。冗談なんだからそろそろやめて欲しい。


「でも実際はいるんだから、わかる。それで? あなたも魔眼が欲しいのかしら」


 まったく関係ないけど、魔眼の研究ってどうやって研究するんだろう。パソコンとかそういう機器がないこの世界で眼の分析とかどうやってやるのかな。


「お嬢様、お下がりください」


「あれくらい、私でもどうにかできる」


「それでも、私たちはお嬢様をお守りする義務があります」


 まぁ間違いなく僕やシェスより強いボディーガードの2人がいるんだから、何とかなるだろう。……にしても、あの黒ローブの人、様子がおかしいな。いきなり姿がばれて焦っている、って訳じゃ無さそうだし。


「フシュゥウウウウウウ」


 変な息してるし。


「フシュウウ!!」


 !! 魔素が急激にあいつに集まっている。な、なんだ? どんな魔法を使うつもりなんだ!?


「お、お嬢様お逃げください!! こいつ」


 次の瞬間、ボディーガードの1人の四肢が変な方向に曲がり、壁へと吹き飛んだ。


「ギャァアアアアアアアア!!」


 野太い絶叫と共に、摩訶不思議な状況に僕の体が硬直する。


「は!?」


 い、今一体何が起こった!?


「き、貴様!!」


 ボディーガードの反撃。神素が右手に集まって、波動術だ!!


「螺旋破・貫!!(ラセンハ・カン)」


 右手から神素を含んだ衝撃破が生み出された!! 魔退破と違って、衝撃が拡散しないで、相手に一転集中して向かっていってる!! 神素の軌跡を見ていると、気持ち的に目に見えない手槍が飛んで言ってるイメージかな。


 それを黒いローブの人はまともに回避行動せずに腹部に受ける。黒いローブの人は空中で回転しながら壁にぶつかるまで吹っ飛んだ。そして、壁にぶつかり、崩れるように地面に倒れこんだ。動きは、ない。


 それを確認して、酷いやられ方をしたボディーガードの元に急ぐ。うわ、関節じゃない部分で折れてる!! 複雑骨折だ……手も足も関節が一つ増えてるような感じになってる。痛々しい……。


「おい、大丈夫か!? ……気絶している。くそっ、邪法使いめ。奇妙な技を使いやがって!!」


「フシュウウ」


「!?」


 奴のうめき声に僕たち3人が一斉に振り向く。黒いローブの人が立ち上がっている。そして、僕はようやく異変に気づく。


 細道とはいえ、太い道のすぐ傍にいるのに騒ぎにならないどころか人1人見に来ないのはおかしくないか!? とおもって太い道を見たが、何食わぬ顔で普段どおり歩いている人達が見えた。


 でも、こっちには一切気づいていない様子だった。


「な、おい! 助けを呼んでくれ!! 医者が要るんだ!!」


 と叫んでみたけど、誰一人僕のほうを見ることはなかった。子供がちらりとこちらを覗いた。でも異変には気づかないでそのまま歩き去ってしまった。


「駄目よ、使用人」


 シェスが首を横に振りながら、黒いローブの人から視線をそらさないまま答えた。駄目ってなんでだ!? もしかして、孤立させる技術みたいなのがあるのか!?


「人を呼べばその人に危害が出る。それに、さっきから反応がないところを見ると私たちは完全に周りから切り離されているみたい」


「そういう技術は」


「ある」


 畜生。なんだそりゃ。一応、戦う準備をしたほうが良さそうだ。でも、相手は一体何をしたんだ? 一体どうやってボディーガードさんを1人戦闘不能にしたんだ!?


「フラン、ベルジュ。アンデ。力を借りるよ」


 赤と青の対になったに剣を両手に構える。たしか、これは神素を流せば火がつくってディモンが言ってた。身体強化に魔素、剣に神素!!


 僕の体が魔素によって強化され、神素が流されたフランとベルジュはそれぞれ赤と青の炎を弱々しく灯した。初めてだけど灯っただけ上出来。でも、アンデが灯していた炎と大違いだ。これも練習しないといけないな。生きて帰れたら。


「上級聖剣? 凄いわ」


「でも、役に立つのかな……!!」


 黒いローブの人がまた妙な気配を発し始めた。


「やらせるか!! 螺旋破・貫!!」


 さっきと同じ神聖術! 黒いローブの人はそれをまた回避せずに身に受ける!! でも、さっきと違って吹き飛ばない!?


「な!?」


 これにはボディーガードの人も、僕も驚いた。


「フシュウ!!」


「お嬢様、魔眼は!?」


「無理よ! 相手がどんな術を使っているかわからない!!」


「くっ! 仕方ない。螺旋破・斬!! (ラセンハ・ザン)」


 また新しい神聖術!? 今度は衝撃波が動きをそろえて波打つようにうねりを作っている!!


 その衝撃破は黒いローブを切裂いて、中の人にも被害を……与えてない!?


「フシュウウウウ!!」


 あ、あれは、あの武器は……!!


「ギャアアアアゥウアア!!」


 軽快に鳴り響く4連続の音と、男の悲鳴。


「お嬢、様、おに、げ」


 もう1人のボディーガードも崩れ落ちた。息はしている、気絶だ。い、いや、今僕が気にするべきは


「シェス!!」


 僕はシェスの前に立ちふさがる敵とシェスとの間に割って入る。そして改めて敵の姿を確認した。


 そして僕は走馬灯のように、あの日のことを思い出した。









 僕がディモンさんにボディーガードを頼まれた日のことだ。ディモンさんは確か、こういった。


「君の強さを見込んで頼みたいことがある」


 僕の強さ?


「トロルに1人で切り込んで、薙ぎ倒していくような規格外の力と技を持った、君くらいの年の子を探していたんだ」


「はぁ」


 そんなこと、したっけ?


「私の、私の娘を魔の手から守って欲しい。私にも私の使命がある。だから守ってやりたいとは思っているが、いつも私自身が守ってやれるわけではない。私の手元に置き続けるなんて拘束するような真似も私には出来ない。他にも娘を守るように頼んでいるが、学園内には君ほどの強さを持った人はいない。だから、お願いしたい」


「……いいですよ。命を助けてもらいましたし」


「本当か!? ありがとう。娘を、シェスを、頼む……」










 信用問題。娘を守ってくれと言うくらいなんだから、僕がそれほど信用に当たる人物だと思っていないと、ボディーガードの依頼なんて僕に出来るわけがない。僕が気に欠けていた1つ。


 ディモンさんがどうしてここまで僕を信用してくれるのはわからなかった。でも、切羽詰ってて人を選んでられなかったっていうのもあるんじゃないか?


 アンデの元で育った人間ってだけで、何も要素がない人よりは信用できる。そういう人間よりは僕を頼るほうがよかった。っていう、比較の問題だったんじゃないか?


 こんなのに狙われるなら、そもそも依頼を受けてくれる人なんて現れないよな。これで僕に依頼をしたっていうのは、これはもう僕は捨て駒として扱われているか。この敵を退けられるほどの実力者だと思われたのか、もしくはこれ自体想定外の出来事なのか。


「いやいや、変なオーラをびしびし感じるな……」


「ユウ……気をつけて……魔剣使いよ」


「フシュウ!!」


 目の前にいたのは、初めての僕以外の魔剣使いだった。


 この国では忌み嫌われる邪法使いが久々の実践だった。















使用人兼ボディガード生活 1日目

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 向井 夕 (むかい ゆう) 現状


武器 神魔剣?

 聖剣 フラン (赤い剣

 聖剣 ベルジュ (青い剣


防具   学生


重要道具 なし


所持金 1万ギス(お小遣いに貰った)


技術   アンデ流剣術継承者


 魔素による身体強化 


     異世界の言葉(但し、書けない読めない


     中学2年生レベルの数学


 暗算


 神魔剣制御


 霊感


職業   スタンテッド家使用人兼スタンテッド嬢ボディーガード







2012/3/15 誤字脱字修正。文章のおかしな部分を修正。

2012/3/19 誤字追加修正。

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