021.5 座学1
※この話は台本形式で進みます。また、この話は世界観を深めるための話であり、物語とほぼ関係がありません。読み飛ばしてもらっても構いません。
Lesson1 エイオーツとシャルルのお付き合い
エヌディー「よし、今日は皆もよく知っている歴史の話をしよう。中等部でも習ったことあると思うが、おさらいだと思って取り組んでもらいたい。
シャルルはエイオーツと違って、波動術や、閃光術といった攻撃系の神聖術に特化しているものが多い。彼らの歴史の中で魔物との戦闘が過去多くあったからだ。そのため、波動術応用系結界技術という高度な技を有しているからこそ、4剣の1本の封印を任されていた国であったんだが……。
最近話題になっているシャルル急襲事件でその剣が盗まれた。怪しい人を見つけたらすぐ誰か助けてくれそうな人に連絡をするんだ。
話がそれたな。シャルルの話を少ししたが、エイオーツもまた、特化している部門がある。神聖治癒術だ。
小貴族スタンテッド家レミア婦人。大貴族ビレジィット家マルタ婦人が今この国の医療機関をになっている重役だ。テストに出すぞ。覚えておけ。
彼女らの功績は数知れず、ちぎれた足や腕を元に戻すなど、一般人には到底出来ない高度な神聖治癒術の技術を備えている。彼女らは互いに切磋琢磨する仲だと言う。
さて、それほどまでに高度な治癒技術があるエイオーツだが、なぜこれほどまで治癒術が発達しているか。
これもまた、既に中等部で習ったと思うが、大昔、ムー大陸とレムリア大陸を同時に襲った大量の魔物との戦い。港町リンベックで起こったことから、リンベック海上大戦と呼ばれているな。そのときのリンベックは酷かった。魔物たちにいいように破壊されて、今の美しい海の都とは大違いだった。
リンベックの位置を知っているものはもう分かったかもしれないが、シャルルよりエイオーツのほうがリンベックに近かったんだ。補給でよくエイオーツに人が訪れるのと同時に、怪我人もまたエイオーツによく運ばれてきた。エイオーツに医療部はそのときに急激な技術成長があった。
神聖治癒術の神素消費による穢れ発生を少なく、効果を膨大にする、穢れ譲渡法による神聖術の発動技術はわが国の誇りとも言える大きな発明ともいえる
未だ、どんな使い手でも使いこなせる技術ではないという課題点は残っているがこれからも私たちの生活を補助してくれることに違いない。
今後とも、エイオーツ医療の頂点に居ると言っても過言ではない、レミア婦人とマルタ婦人からは目が放せない。
また話がそれてしまった。とにかく、エイオーツは援助を、シャルルは攻撃を担当するように自然な流れでなったのだ。それぞれが担当した分野を大きく伸ばし、海上での戦いを制したのだ。
だが、忘れてはいけない点もある。レムリア大陸の魔素を用いる技術にも助けられたのもまた1つの事実だ。今まで多くの穢れを残す邪法として扱ってきた私たちだが、彼らの技術もまた人を助けるものであり、敬うべき貴重な技術だ。良い物は良い。悪いものは悪いが、それらの区別を今後行っていくことも大切だ」
生徒A「先生」
エヌディー「なんでしょう?」
生徒A「確かに、邪法、いや、魔法を使う人は皆悪い人じゃないというのはわかりますが、それでも、未だ人の命を弄ぶような邪法が存在しています。それを許していいのでしょうか?」
エヌディー「いいえ、断じて許してはいけない。
ただ、それは魔法を使う人にも同じ認識があります。魔素を使うからと言って、邪法を使うとは限りません。
私たちの扱う神聖術には正義があります。しかし、魔素を使う彼らにもまた正義があり、共通のあくとして邪法が存在する。
そこを履き違えてはならない」
生徒A「わかりました」
エヌディー「皆さんもまだ少し抵抗を感じるかもしれませんが
少しずつ慣れればいいです。それでは、1時間目の授業を終ります」
Lesson2 下位魔物の討伐方法 ゴブリン・コボルト・トロル編
エヌディー「高等部の皆さんはそろそろ実践合宿がある。
この合宿は皆さんの大きなターニングポイントになる。毎年、魔物を切るのを恐れて、合宿をやり遂げられないものが居る。そういうものはすぐさま戦闘クラスを出て、補助系技術を学ぶクラスに行くか、農業を学べ。
身体強化は何も、戦闘だけに使う技術じゃない。
さて、その実践合宿では主にゴブリン、コボルトと戦うことになる。しかし、ごく稀にトロルに遭遇することもあるだろう。基本的にトロルに遭遇したら全速力で逃げてもらうが、念のため紹介もしておこう。命に関わることだ。真剣に聞くように。
さて、ゴブリンの話からしよう。
ゴブリンはおおよそ140cm~160cmほどの緑色の皮膚をした二足歩行の魔物だ。よく片手に棍棒を握っているな。奴らは群れを成して行動することが多い。少ない群れで3匹。覆い群れじゃ50匹いるなんて事もある。魔窟から発生したり、巣を作って1つのコミューンを形成したりして個体数を増やすといわれている。
こいつらを討伐するのはいたって簡単だ。普通の人間の相手をするように戦えば良い。注意すべき点は2点。まず気をつけるのは数だ。数の暴力に負ける生徒だって珍しくない。合宿のときまでにはチームを作ってもらうが、チームを組んでいても圧倒的な数にたた危険に陥る者もいる。よく見て、1匹ずつ丁寧に討伐して行け。
次に気をつけるのはその力だ。子供のような身長しかないと舐めていると、痛い目を見るだろ。常に身体強化がかかったような子供だと思って戦え。しっかり身体強化を施していかないと、骨なんて簡単に砕けるぞ。
次にコボルト。コボルトはゴブリンより比較的少し高めの身長で、細身の体をした二足歩行の魔物だ。鋭い爪と、細く絞られた瞳が印象的だと思う。こいつらもまた、常に身体強化を行っている子供を相手にするつもりで戦え。じゃないとすぐに足元をすくわれることになるぞ。
注意点はこいつも2つ。コボルトはゴブリンと違ってパワーはない。だが、鋭い爪が厄介だ。生半可な防御系身体強化など無視して人間を切裂くぞ。致命傷は絶対に避けろ。また、致命傷じゃなくても奴らの爪は汚い。傷口が化膿して厄介なことになる前に処置をするんだ。
次にその速度だ。パワーがない分コボルトは足の速さに強化の比重を置いている。攻撃が爪で間に合うからな。奴らは俊敏で、時たま攻撃を回避する行動も見せる。この学園の生徒は焦っていつもなら倒せるはずのコボルトですら倒せないなど、よくある。落ち着いて、相手の動きをよく見て、カウンターを狙うんだ。
最後にトロルだ。身長は小さいもので2m、大きいもので4mを越すものもいる二足歩行の魔物だ。基本的に殴る蹴るという単純な攻撃しかしてこない。
が、その分攻撃速度、威力ともに大の大人でも即死させるほどのパワーを持っている。身体強化をしっかり施していれば一撃耐えることも可能だが、そうなる前に逃げてしまうのが得策だ。絶対に無理をするな。
その中でも特に気をつけることは、回復力と硬い皮膚だ。
下級の聖剣ならほとんどトロルの皮膚を貫くことは出来ない。さらに、やっとの思いで傷をつけたとしても、ものの数秒で外傷は治しきってしまう。
では何が有効なのか。そこで、神聖術の出番になる。神聖術による攻撃ならば、トロルの皮膚に左右されないものが多い。たとえば、神聖波動術とかな。
……じゃあ、ユベル」
ユベル「え? あ、はい」
エヌディー「トロルの弱点を述べよ」
ユベル「弱点、ですか?」
エヌディー「そうだ」
ユベル「心臓を貫くことです」
エヌディー「ユニコーンクラスらしい回答ですね。他には?」
ユベル「えっと、首を刎ねる?」
エヌディー「まったく。神聖術と絡めて話をしていたのを聞いていなかったのかい?」
エヌディー「トロルは体がでかいから直接打ち込む神聖波動術の効き目が大きい。直接は無理でも腹部に一転集中させた神聖波動術を当てることが出来れば相当ダメージを与えることが出来る。
皆さんがトロルに万が一でも遭遇したら、直接は無理だと思うので、腹部に神聖波動術を当てて時間を稼いで逃げてください。トロルは巨体の割りに足は遅めです。
まぁ、我々教員達もそのあたり躍起になって警戒しますので、安心してください。ここ数年トロルの姿すら合宿場で確認もされていません。しかし、油断は禁物です。
それでは、午前の部を終る。午後は身体強化の練習と摸擬戦を行います。しっかり準備をしておいて」