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魔剣から始まる物語  作者: ほにゅうるい
夢の中 ユウの始まり
23/45

3

彼の殻に裂け目が生まれ、中から顔をのぞかすのは……?

 突然だった。僕が小屋の窓から差し込む朝日が異様にまぶしいなと思ったと時と同時に。


「------!---!--!?」


「--!! ---。----」


「ーー?---!!----」


 叫び声が小屋の外から聞こえた。


「ディハイル?」


 ディハイルさんの悲鳴が聞こえたので飛び起きて、小屋の窓から外の様子を伺ってみた。そうしたら、明らかに強盗だろ。というような男が二人いた。二人ともボロボロの黒っぽい布で全身を覆っていて、瞳だけが見える服装だった。そんな二人がディハイルさんを地面に押し倒していた。片方の男の肩に矢が突き刺さっていたところを見ると、完全に敵だな。僕が寝ている間に何かあったんだ。


 ディハイルさんを助けないと。でも、どうやって? くそ、収まれ心臓。落ち着け、落ち着いて考えるんだ。僕みたいな子供が出来ることは限られている。その限りない手段でディハイルさんを救うんだ。


 どうする?


 武器の投擲で気を引く? 僕の左手に都合よくボロボロだけど、自称生物なら切れるへんてこな剣もある。けど、石ころ投げるのは得意だけど、剣を投げたことなんて一度も無い。


 あとは、小屋で物音を立ててみるか? 注意は引けそうだけど、見に来るのは1人だけだろうな。それじゃあディハイルさんは救えない。


「------!!」


 ディハイルさんが殴られた! くっ、迷ってる時間は無い。ディハイルさんが気絶でもしたらさらに救える可能性が下がる……。ディハイルさんの弓の腕は昨日確かめてる。それを信じて、ディハイルさんには戦える状態になってもらうのが一番笑気が高いはず。


 物音を立てて、1人が見に来る。物陰から男を闇討ち。武器は、モップがあるな、これでいいか?



 いや、確実に動きを止めるなら、剣で……殺す?



 ……急に、手が震えだした。む、無理だ。殺せないっ。僕には人は切れない……。剣道とは違うんだ。今は実践なんだ。落ち着け、落ち着け……。落ち着きながら急ぐんだ。



 ガコン!!


「!?」


「---?--」


「---」


 積み立てられてた薪を地面に落として小屋の中で音を立てた。僕はその後素早く、積み重なった薪の陰に隠れた。邪魔だなと思っていたけど、思わぬところで役に立った。


 手が震える。相手を気絶させるほど強く殴るにはどうすればいい? とにかく精一杯頭を殴れば大丈夫なのか? わからない。けど、やるしかない!


「ーーー!?」


 男の怒声と共に扉が開く。足音が近づいてくる。僕は息を殺して、足音が近づいてくるのを待つ。


 こっ


 こっ


 こつ


 こつ!!


 今!!


 僕は勢い良く物陰から飛び出して


 面!!


 っと心の中で大きく叫びながら、男の頭を狙ってモップを振り下ろした。男は素早く僕に気づくと腕を十字に構えてモップを防御する。勢い良く振り下ろしたモップを防ぎきれなかったのか、男は大きくのけぞって倒れた。そして、そのまま動かなくなった。


 や、やったのかな?


 今気づいたけど、右手に、30cmはあるナイフを持っていた。危なかった。反撃を許していたら僕は死んでいたかもしれない。


「ディハイル!」


「ユウ!---!?---!」


 隆介のテンプレートなら、なんで出てきたの、逃げて、ってところかな? でも、逃げないぞ。ディハイルを抑えている、肩を矢で射抜かれている男はナイフを構えた。ディハイルはロープで縛られていた。僕はそいつとモップで対峙する。


 怖い、怖い!!


 でも、ここで逃げたら命の恩人がどういう目に会うのか分からない。何もせずに逃げるなんて出来ない!!


「ふぅ、フゥ!!」


 落ち着け、落ち着け。相手を良く見るんだ。オタクな隆介だったけど、喧嘩も強い隆介。喧嘩は先手必勝。1対1でそれが出来なかったら、次にすることは相手を良く見ること。相手の出方を良く見て、裏を掻く。絶対読まれるような行動はしない。カウンターは貰うんじゃない、与えるもの!!


「ーーー!!」


 相手が先に痺れを切らした。僕目掛けて突っ込んでくる。直線的な攻撃だ。でもかなり早い!! でも。タイミングだけははずせない。相手が突っ込んでくるのと同時にモップを振り下ろす!! ナイフの直撃だけは回避する。大丈夫、剣道より獲物は短い!! それに、直線的だ。胴を狙われてる気持ちで、回避の一歩を。その踏み込みをさらに攻撃に!!


 斜めに走りながらモップを振り払う!!


 男が直線的に僕に向かってくるのに対して。角度をつけて男に突っ込んだ。なるべく腰を落としながら、モップを振り払う。


 右手と左手に確かな感触が伝わる。直撃だ!! でも、右手が、僕の右手が深々と切裂かれた。血が勢い良くでる。熱い、次に痛みがきた。


「う、うああああああああ!!」


 痛い、痛い!!


 でも、手ごたえもあった!!


 モップは折れてしまったが、的確に男の顔に打ちつけた。モップを撃ちつけられた男はふらふらと、倒れて、何か行動を起こそうとしていた。僕はその隙に、男の股間に的確に蹴りをお見舞いする。


 すると男は泡を吹いて動かなくなった。


「……なんとか、なった……」


 男の手からナイフを奪い、ディハイルの元へ向かう。もちろん、縄を切ってあげるためだ。くそう。右手が、裂けるように痛い!!


「畜生、痛い、痛い!! はぁ、はぁ」


 泣きたいわけじゃないのに、涙目になる。くそう。


「ユウ!!---!!」


「はぁ、はぁ、大丈夫だよディハイルさん。小屋の男もなんとかしたし、とにかく縄を」


 まずは手を縛ってる縄から切ろう。


「ユウ!!---!!」


「大丈夫だよ、すぐ切るから」












 ユウ、後ろ! そう叫んでるって気づければ、ディハイルさんを救えたんだ。





 手の縄を切った瞬間。ディハイルに僕は抱きしめられ、位置を変えるように回転をした。なんで?


 その答えはすぐ分かった。ディハイルさんの背後にナイフを握った、小屋に入ってきた男が僕の視界に移ったからだ。


 ディハイルさんは、僕の盾に、なった……?


「でぃ、はいるさん?」


「ユウ。ユウ……---」


 すぐにディハイルさんを引き寄せて、男からほんの少しだけ距離を取る。ディハイルさんは、肩から腰にかけてばっさりと切裂かれていた。僕の右手以上に出血が……。


「嫌だ、嫌だ!! 死なないで!!」


 このままじゃディハイルは死ぬ。


 死んでしまう。


「ユウ」


 でも、死んでしまうとかじゃなかったんだ。もう、死ぬんだ。


 最後に僕に微笑みかけると、ディハイルは目を閉じた。体から力が抜けていったのがわかった。その瞬間、僕の中で何かが終った。



「うわああああああああああ!!」


 左腕が僕の何かに呼応するように、光を放出すると剣を具現化した。僕はそれを右手で握る。その瞬間僕の右手の肌の色が褐色へと変化する。


「--!? --!!」


 男が僕の変化に驚いている。その隙を今の僕は逃さない。一瞬だ。


 僕はその男を一閃するため足を踏み込んだ。防御のために突き出されたナイフを確認してから、僕はナイフを握るほうの腕を切り落とした。


 確かに、生物を切れるなっ!!


「ガアアアア!」


 男の悲鳴が心地いい。でも、足りない。絶対に許さない。殺してやる!!


 男の腕の切り口か緑色に変色している。それに激しい激痛を感じているようだ。都合がいい。痛めつけるのにうってつけな剣じゃないか。


「はは」


 僕はもう片方の腕、足、を切り落として、涙と様々な汚物でぐちゃぐちゃになる男を眺めていた。言葉は分からないけど、なんども謝罪の言葉を口にしていたんじゃないかな。


 実際、どうでもいいし。








「……」


 気づいたら、男は動かなくなっていた。いたるところに穴が開いて、すぐに死んでいることが分かった。


 それと同時に僕の心は急激に冷えていった。


 なにをしているんだ僕は。こんなことしたって、死んだ人間は生き返らない。そんなの分かってたじゃん。


 キィン


 剣が喜んでいる。でも、僕は反対に、悲しいよ。ちょっと黙ってて。へし折るよ。


 キィン……


 僕は適当なところに剣を投げ捨てると、ディハイルさんを抱き上げた。同時に、右手の変色がだんだん収まって、元の肌色に戻っていった。


 ……暖かい。まだ、暖かい。でも僕はこれからこの体が冷たくなっていくのを知っている。


「ディハイル……さん」


 ディハイルさんは、笑顔のまま死んだ。


 なぜ? 痛かったし、苦しかったでしょう?


「畜生。最初から、この剣を使って小屋の奴を仕留められてれば、こんなことにならなかったじゃないか!! 馬鹿か僕は!!」


 笑顔の理由は何?


 元の世界で言うファンタジー的な物語で言ったら、僕を守れたから、とか、人生楽しかった、とか。


「畜生、畜生!!」


 ……なにそれ、ディハイルさん。僕は、僕が生き残れるより、ディハイルさんに生きてて欲しかっ


「---!?」


 男の声、増援? ……でも、もういいや。殺すなら殺せよ……。


「---!!----ディハイル!! ----」


 ? ディハイルさんの名前。知り合い?


「----!? ----!!」


 血まみれの僕と、血まみれのディハイル。そして必要以上に攻撃を繰り出された男の死体を見て、驚いていた。


 何より僕が適当なところに投げ捨てた剣を見て驚いていた。


「----!!」


 僕に2つの剣を向けて、何か怒声を上げている……何言っているのかまったく分からないよ。


「……お前誰だよ、何用だよ……」


「!? ---? ---!!」


 駄目だ、通じない。


 ……これから、どうしよう。このままディハイルさんを放っておけない。……土葬。それとも火葬?


 








 結局僕は火葬をすることを選んだ。


 どうすればいいのかな、燃やせばいいのかな。薪は一杯小屋にあったからそれを使おう。木を敷き詰めて、燃やす。これがベストだね。


 焚き火するときに、燃える液体と、火打ち石使ってたけど、見よう見まねでなんとかなるかな……。


 まぁ色々準備してたら、僕の意図に気づいたのかさっきから僕の動向を警戒していた男が手伝ってくれた。


 というか、火葬って言うのはこっちの世界でも共通なのか?


 木々を積み上げて、シーツを敷いて、そこディハイルさんを横たわらせる。そして、木々にガソリン的なものを撒いて、、色々準備終わってから気づいたんだけど、火がないな。どうしよう?


 とか僕が色々困っていたら、男が、手から火を出して、火葬を始めた。


「な、なにぃ!?」


 い、いいいい今なにしたの!?


「? ----?」


 いたって普通の表情で僕の驚きに驚いているみたい。……現実逃避も終わりだな。ここはやっぱり異世界で、ファンタジーの世界なんだ。……それでも、あんまり、実感が湧かないな。


 パキパキ


 ガソリン的なものをかけて燃やしたからか、案外早く燃えあがってディハイルを包み込んだ。



 ズキン


 ズキン



 胸が痛む。これが悲しいのか悔しいのか、僕にはなんだか良く分からない。


 ただ、涙は、出ないんだな。


「----?」


 ……。なんていってるかわからん。パキパキ、ズキンズキン、ぱきぱき、ずきん、ずきん。


 ……明るいな。









 ディハイルさんの骨を集めて、地面に埋めた。


 やっぱり、火葬場の炎じゃないと、骨ってあんまり焼けないんだね。それでも、ディハイルさんの細い骨は色々と、ボロボロだった。


 埋めて、僕は本当にやることが無くなった。


 


 とりあえず、剣を拾おう。結構使える剣だってわかった。体に仕込めるし、不意打ちも出来る。持っておいて損は無さそう。


「----!! ---!?」


 男が何か叫んでる。なんだ?


 キィン


 拾うの遅いって? 何様だよ。人の右手勝手に色変えちゃうし。……気づいたら元に戻ってたけど。勝手に変な力使うなよ。


 僕はそれを腕にしまう。


「……手伝ってくれてありがとう。さようなら」


 男に別れを告げて、僕はその場を去ろうとしたら、男に引き止められて、良く分からなかったけど、ジェスチャーで着いて来いといわれて、着いていった。

















異世界生活3日目

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 向井 夕 (むかい ゆう) 現状


武器 ???


防具   普通の服


重要道具 もってない


所持金  500円


技術   剣道


     中学2年生レベルの数学


職業   中学二年生だった





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