00? プロローグ
彼の周りは木で満ちている。真っ暗で、月だけが彼に微笑みかけていた。彼は、そんな中で目を開ける。
さっきまで、燃え盛る家にいたと思ったんだけど。
ここは、どこだろう。
「……夜。だね」
周りは暗い。
ここは、森?
辺りを見回しても木、木、木。木しかない。
変な鳥の鳴き声も聞こえる。「ほぐ、ほーぐ」……こんな鳴き声する鳥がいるかは怪しいけど。
ふと、上を見上げてみる。
空が、きれいだな……。
満天の星空と、まん丸な月が……やけに大きいし青白いな。僕の知っている月とちょっと違う。
……そろそろ状況整理をしないと。
えっと、柳井さんの家が燃えた。燃えたね。それで、春が取り残された、って叫びながら隆介が家に飛び込んだって聞いた。僕も飛び込んだ。春がタンスに挟まってて、それをどけようと隆介が頑張ってたから、手伝った。春を助けて、それから、家の外に出て。
……いや、出てないか。出ようとしたら家が崩れたから2人を突き飛ばして、僕が下敷きになったのかな?
……死後の世界かな、ここは。
「綺麗なところだから、天国?」
暗いけど、空気は澄んでるし、星は見えて綺麗だし、葉は青々と生い茂ってるし。
「……死んだ後が皆こうなら納得だけど、普通に傷口から血が出て痛いし、服は焼け焦げてて肌寒い」
意味不明だよ。死んだら、そのときの姿のまま幽霊になるとか、そんな話も聞いたことがある。だから服がボロボロで焦げて焼け落ちて、ちょっと生まれたときの姿に近いのには納得できる。ただ、寒くてだんだん体調が悪くなるのには納得いかない。
……まぁ、このまま、また死ぬのでも構わないけど。
いや、嘘。せっかく変なところに着たんだから観光でもしないと損だ。
よっし、節々が痛いから、あそこに見える祠みたいなところで休憩してから出かけますか。幸い傷もそれほど深くないから、出血もそれほど酷くない。洗うくらいはしたほうがいいけど、今は休憩が大事だ。
木々を縫うように歩いて、ほどなくして祠に到着。ん? 祠の近くに小さな崖があるな。その崖に小さな洞窟が掘ってある。ちょうど良い。この中で休もう。
……あれ……剣? 洞窟の中に一振りの剣が刺さってるな。台座に刺さってるとかならかっこいいのに、無造作に壁に突き刺さってるっていうのも、どうなの。
この先何があるかわからないし、ちょっと拝借しようかな。見た目ボロボロの剣だけど、ないよりはマシでしょ。
そう思って手に取った剣が、僕の異世界での物語の起点だったのを、物語の終わりになるまで僕は気づかない。
異世界生活開始
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向井 夕 (むかい ゆう) 現状
武器 ???
防具 燃えカスの服
重要道具 もってない
所持金 500円(ポケットに入っていた)
技術 ???
職業 中学二年生だった
2012/5/11 見直し、表現の修正、誤字の修正などなど