手放せないで
もう伸ばしても掴めない
あなたの指先
あんなに黒髪が似合うのは
世界できっとあなただけ
コロッケもたい焼きも
いくつも食べた
でも
あなただけが欲しかった
鼓動の意味も知らなかった
幼かったわたし
目を細めたくなるような
強い光じゃない
けれどひどく
あたたかかった
あなたは橙の光を灯し
わたしの中で微笑んでいた
けれど
あなたはゆっくりと離れていく
知らない顔をした
あなたの唇
奪いたい衝動を抑えて俯いた
行かないで
消えないで
忘れないで
忘れたくない
あなたのことを
でもあなたがいたと
僅かな証拠を抱きしめる
そんなわたしを
思わないで
映さないで
あなたの心が
ここにないなら