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第四話 ざまぁみろばーか!~〇〇しないと出られない部屋に連れてきたおっさんに一言~

 ……良かった。腕の感覚がようやく戻ってきた。

 たまに凛々子が勝手に腕枕をしていることがあるので、そのたびに腕の痺れに困らされていた。ベッドが二つあればいいんだが、この部屋にはキングサイズが一つしかないのでどうしようもない。


 もちろん、一年目くらいまでは二人とも距離を取るようにベッドの端っこで寝ていた。あの頃が何だか夢みたいだなぁ。


 さて、腕が大丈夫そうだと安心したせいか、急に空腹感が出てきた。

 そろそろ朝ごはんの時間である。


「おっさん、ごはんまだー?」


 モニターに向かって声をかける。そうすると即座にチカッと画面が点滅して、怪しい仮面をつけた初老の男性が現れた。


 三年前と同じ仮面だが、あの頃に比べて少し頭皮が薄くなっているおっさんである。


『……おはよう、太田君。朝食を所望かね?』


「うん。納豆ごはんとみそ汁でいいよ。あと、目玉焼きとたくあんもほしい」


『はいはい、いつものやつだ』


 和食派なので、朝はだいたいこのメニューである。

 おっさんは相変わらずだな、と言わんばかりに苦笑していた。


「あ、おじぴだ。おはよ」


『ああ、おはよう凛々子くん。昨夜はちゃんと寝られたかな?』


「一時間くらい寝たよ~」


『そうかい。不健康的なのも相変わらずだね』


「あ、わたしはピンクのエナドリでいいから。朝は食べられないし」


『……もっと食べた方がいいと思うけどねぇ』


「むり。おじぴみたいに太りたくないもん」


『使用人に持っていくように言いつけておくよ……はぁ』


 おっさんは俺たち二人の様子を見て、なぜかため息をついていた。

 三年前まではもう少し黒幕感というか、キャラとして強そうな感じが出ていたが、今ではすっかりしょぼくれているように見える。


『君たち、この状況をおかしいと思わないのかい?』


「お前が言うな」


 おっさんが俺たちをここに連れてきたことを忘れたのだろうか。

 あの時は本当に驚いなぁ。この部屋から出たくて仕方なかった記憶もある。


 でも、そんな記憶はもうほとんど消えていた。

 人間って不思議だ。この異常な生活にも体が順応していくのだから。


『たしかに、私がここに連れてきたさ……しかし、一年目の熱量はどこへ消えた? この部屋から出るために必死に足掻き、葛藤する君たち二人を見るのは楽しかったのに』


「まったくだ。三年という月日は人を変えるんだろうな」


「そうだそうだ~。三年あればどんなに地味顔のオタクくんだろうと好きになっちゃうに決まってるよね」


「好きになれと頼んでないぞ」


「あーん♡ 好きぴがツンデレすぎる~」


『……イチャイチャされても困るのだがね』


 おっさんは俺たちにうんざりしているみたいだ。

 まぁ、それも無理はないだろう。


『やれやれ。ニートを二人養っているこちらの身にもなってほしいねぇ』


 その通りである。実質、俺と凛々子は何もしてないニート状態だ。ごくつぶしを二人養っているのは、決して安くないだろう。


 それを悪い――だなんて思ったことは、一度としてあるわけないんだよなぁ。


「うるせぇ。おっさんが連れて来たんだから、ちゃんと養え!」


「そうだそうだ~! おじぴはお金持ちなんだから、いっぱい支援して♡ パンツくらいだったら見せてあげるよ?」


「お、それいいな。凛々子、俺たちのためにお金を払ってくれるおっさんにサービスしてやってくれ」


「分かった! 好きぴのためにがんばるねっ」


 おっさんは絶対にこの部屋にやってこない。

 三年間、モニター越しにしか会話したことがない。そしてこちら側には直接危害を加えることがないことも分かっているので、俺も凛々子も好き勝手にものを言えるようになっていたのだ。


『……こんなはずじゃなかったのにねぇ』


 おっさんは頭が痛いと言わんばかりにこめかみを押さえている。

 ああ、申し訳ないなぁ。なんて思うことはもちろんないので安心しほしい。


 だいたい、おっさんのせいでこうなっているのだ。

 だから、この一言を言わせてくれ。


 ざまぁみろばーか――!

【あとがき】

お読みくださりありがとうございます!

もし続きが気になった方は、ぜひ『ブックマーク』や下の評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると、更新のモチベーションになります!

これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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