第四十二話 隠し味は――大好きの気持ち♡←
って、おい。
ちょっと待て、話が違うぞ!
「お前の先輩は手料理を食べてたんだよな? 何をどうしたら『良いお嫁さんになれる』って評価になるんだよっ」
これはハンバーグじゃない。ハンバーグの見た目をした化学兵器だ。
メシマズって……一昔どころか二つくらい昔のヒロインかお前は? 今時のヒロインはごはんを作るのが上手だろ。見た目はヒロインのくせに地雷すぎるだろ!!
「先輩はいつも真っ青な顔になるくらい『おいし~! りりぽんのごはんはお薬みたいで最高だね!!』って褒めてくれたもん」
「……な、何を入れた?」
「普通の野菜だけど」
普通の野菜で顔が真っ青になるわけがない。
だいたい、ごはんで『お薬みたいな味』って表現は聞いたことねぇよ。オーバードーズしてないよな、それ?
(凛々子の先輩って、もしかしてめちゃくちゃいい人なのでは??)
たぶん、我慢してくれていたのだろう。
あれだ。メシマズヒロインの手料理を頑張って食べる主人公と同じだ。彼女を傷つけないために、気合で完食したのだと思う。
家庭環境が荒れている凛々子のために給食費を払ったり、食事を用意してくれたり、泊まらせてあげたりしていたことも考えると、先輩がいい人にしか思えない。
見た目のせいで地雷系界隈と揶揄されがちだが、身内の結束は固いように見える。凛々子も先輩や友人のことを大切に思ってそうだし。
ただ、先輩の優しさのせいで、凛々子はメシマズであることを自覚せずに今に至ると言うわけだ。
「……凛々子。真剣に聞いてくれ。お前の料理は、ちゃんと美味しくないんだ」
どうにか伝えたい。
えっほえっほ。というミームは大嫌いなのだが、それでも伝えたい!!
「そんなわけないからw」
しかし伝わらない!
凛々子は己の腕を疑わない。
「だって隠し味もちゃんと入れたもん」
「隠し味とは?」
「それは――大好きの気持ち♡」
え。かわいい。
りりぽんの笑顔がたまらん。
そんな笑顔を見せられたら、まずい料理も美味しくなる――わけないんだよなぁ!?
現実は無情だ。
その発言が許されるのは、美味い手料理だけである。
フードロスとかえるじーびーずとか、そういうのが囁かれている時代に贅沢な話だと思うかもしれない。
でも、知らん。後でおっさんにでもくれてやるよ!!
「ほら、食べて? あーん」
「……うわぁあああああああああああああ!!!!」
二口目はもう無理!
しかし、何を言っても凛々子は聞いてくれないし、理解しようとしない。
結果、俺が選んだ行動は――発狂する、だった。
「だから無理だって言ってるだろ!? 凛々子、それは食べ物じゃない。ハンバーグの見た目をした『何か』だっ」
「は? もういいかげんに、照れるのやめて。さすがにそこまでどーてーだときもい。ほら、食えよ。かわいい女の子の手料理なんて、オタクくんが本来なら絶対に食べられないんだから!!」
俺があまりにも拒絶するので、凛々子は不機嫌になっている。
そして相変わらず正論が強い。たしかに俺が普通に生きてたら、こんなにかわいい子の手料理なんて絶対に食べられなかったと思う。
だが、それを天秤にかけても……この料理の味の方がきつかった。
「め、目玉焼きだけ……目玉焼きだけで勘弁してくれ!」
「なんで? こんなに愛情をたっぷりかけて作ったんだから、笑顔で食べてよ! 『りりぽん、俺みたいなちーうしのためにありがとう♡』って言えないの!? 『俺もりりぽんにこねられてハンバーグになりたい♡』でもいいけど?」
「言えるかよ!」
あと、ナチュラルに俺を牛扱いするな。チー牛をこねてもハンバーグにはならないからな。
「愛情で味が変わるならメイド喫茶のオムライスはもっと美味しいに決まってるんだが?」
「あんなビジネスの愛情で味が変わるわけないじゃん」
び、ビジネスって言うなよ!
まぁ、たしかに仕事だろうけど、夢は見ていたかった。
……と、とにかく。
「絶対に食べないからな!!」
あと一口食べたら、たぶん死ぬ。
だから俺は、凛々子がどんなにかわいくても食べないと心に誓うのだった――。
【あとがき】
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