第四十一話 日替わりビーガンりりぽん
俺は令和の男児。
昭和や平成の男児なら、レディファーストとかいう概念があったので女性に対して優しかったかもしれない。いくらメシマズでも、直接そういうことは言わずに堪えてくれただろう。
だが、俺は性別とか人種とかそういう分類に囚われていない時代に生まれた男児。
むしろ、分類によって態度を変えることが悪とされている思想の下で育ったわけで。
つまり、相手がかわいい女の子だろうと関係ないのだ。
「いやん♡ ぴっぴ、照れててかわちぃ♡」
「照れてない。俺の顔を見ろ。真顔だろ? 本当だ」
「……は? ま?」
一文字で会話しようとするな。『マジ?』という一言すら省略するこの時代が恐ろしい。
「オタクくん、その顔で味にこだわりがある系? それはむりでしょw」
「顔は関係ないだろ!」
この顔で美食家はダメなのかよっ。
いや、というかそもそも違うし。美食家とかそれ以前の問題なんだよなぁ。
「凛々子……お前、味見したのか?」
「太るからしてない」
「……一口くらい食べてみないか?」
「やだ。動物さんがかわいそうだもん」
「昨日、一緒にチキン食べた記憶があるんだが。あとお前、牛丼も好きじゃん」
別に菜食主義は否定しないが、日替わりでビーガンはやめろ。主義主張が気分屋すぎる。
「鳥さんと牛丼さんは美味しいから仕方ないよ。命に感謝、だね。ぴえん」
「ぴえん」
いただきますの概念は持っているからいいや。
生きるために命に感謝することが大切――って、今はそういう話はしてない!
「人に料理をふるまうなら味見くらいしてくれよっ」
「……料理しないオタクくんがなんでそんなこと言えるの?」
正論だ。なんで普段はふわふわしたことばっかり言ってるくせに、こうやって議論になるとまっすぐな意見をぶつけてくるんだよ。意外とレスバ強いんだよな、こいつ。
「一回でいい。食べてみてくれ、そしたら分かる!」
「美味しいのは知ってる!」
「違う! 凛々子……お前のハンバーグは――まずいんだ!!」
遠回しに言っても、理解してくれない。
そう判断した俺は、もうちゃんと言うことにした。
我慢して『美味しい』と言えなかった以上、ここまでくると後戻りはできない。
凛々子にメシマズであることを理解させる。そこからがスタートだ……!
「えー。まずいわけないんですけど~?」
しかし、凛々子はまったく俺の話を聞いてくれない。
愛嬌があって柔らかい雰囲気こそ出ているが、凛々子は相当頑固である。ほぼほぼ自分の考えを曲げないので、こういう時に厄介だ。
「じゃあ、レシピを教えてくれ! 何がおかしかったのか説明するからっ」
「オタクくんさぁ、ハンバーグってお肉をこねこねして焼くだけだよ? レシピなんて必要なわけないじゃんw」
「それだ。それが一番問題なんだよ……!」
メシマズさんはレシピをほとんど見ない。
なぜか自分の腕に自信を持っているから、我流を貫きがちである。
「ちょ、調味料は? 味付けはどうやったんだ!?」
「感覚、かにゃ? わたしってほら……天才だから、味付けも才能あるんだよね~。すぱいす?とかたくさんいれたよ! あと、黒酢が体にいいらしいから、それも入れた♡ ぴっぴにはいつまでも元気でいてほしいからっ」
かわいい!
でも、それで許される味じゃねぇよ。
(痺れの原因はスパイスと黒酢か……!)
どういった調合をすれば、あんなへどろみたいな味を生みだせるのか。
「あ、でも安心して。めっちゃ焼いたから」
メシマズさんはあくまで料理の工程で間違えるだけで、致命的な調理法のミスはしないところだけ救いである。
生焼け肉さすがには笑えないので、そこだけは良かった。
……いや、良くはないか。
いずれにしろ、あの味はダメだろ――!!
【あとがき】
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