第三十七話 りりぽんは良いお嫁さんになれるね
意外なことに、凛々子は結婚のシミュレーションのノリノリだ。
「おままごととか、かわちぃじゃん♡ 子供の頃以来かも~」
「まぁ、女の子なら小さい頃にやったことくらいあるか」
「懐かしいにゃあ。ママがお人形とか全然買ってくれなかったから、ペットボトルに顔とか書いてお人形の代わりにしてたの」
「おい、やめろ。胸が苦しい」
凛々子の家庭環境が重すぎる。
なんでこの家庭で育ったくせに、こんなに明るい性格になったのか分からないレベルだ。
「とか言って、ぴっぴもおもちゃは持ってなかったでしょ?」
「いいや、おもちゃはあったぞ。父親がパチンコ屋から持ってきた銀色の玉とか、スロットのメダルとか、競馬のはずれ馬券とか、麻雀の牌とか」
「それっておもちゃじゃなくない?」
「お、おもちゃだろ! メダルとかカッコ良かったからな!?」
訂正。凛々子も酷いが、俺の家庭環境も酷いなこれは。
お互い、まともな幼少期を過ごせていないのはさておき。
「ねぇねぇ、どんなシチュで夫婦になるの?」
「シチュエーションか……そうだな。じゃあ、俺がリビングでゴロゴロしてるから――」
「わたしあれやりたい! ぴっぴが仕事から帰ってきたら『ごはんにする? お風呂にする? それとも……♡』ってやつ!」
俺の意見なんて最初から聞く気はなかったらしい。
自分で勝手に決定していた。いや、いいんだけどさ。
「じゃあ、やるぞ」
「あ、待って! 料理作ってからでもいい?」
「料理……? そこまで本格的にやらなくてもいいよ」
俺としては『相性がいいな! 仕方ない、結婚するか』と言いたいだけである。別に本当の料理なんて求めていないのだが。
「こーゆーのは本気でやった方が面白いんです~」
「……凛々子がそうしたいなら、別にやってもいいか」
時間なんていくらでもある。
料理を待つ時間くらい、どうってことはない。
ただ……気になることが一つ。
「凛々子って料理できるのか?」
初耳だった。今まで、彼女が料理しているところなんて見たことがない。
一応、この部屋には食材もある。冷蔵庫に色々と用意されている。
数日に一度、掃除に来る使用人さんが食材の管理もしてくれていた。おっさんが『料理もやれるならやりなさい』と前に言っていたので、いつでも料理できる状態を維持してくれているのだろう。
しかし、俺は料理は作るものではなく『食べるもの』だと認識している。
そして凛々子も、今まで一度として台所を利用したことがない。お互いに料理できないんだろうなと思っていたのだ。
「当たり前じゃん? だってわたしのお家、ママが料理しないもん」
「お、おう。そうだろうな」
「でも、ご飯代はちょっとだけくれたから、節約のために食材を買って自分で作ってたけど」
「そうなのか……意外と家庭的なんだな」
「意外とってなに? 先輩もわたしの手料理を食べて『りりぽんは良いお嫁さんになれるね』って言ってたもん」
それは、かなり期待できそうだ。
そうか。凛々子ってこう見えて、料理はできるのか。
「……顔もかわいいのに料理までできるとか完璧だ。凛々子、愛している。地味顔きもーたチーぎゅういんきゃの俺にはもったいないけど、どうか結婚してくれ――って思ってるでしょ~?」
「言いすぎだろ。さすがにそこまで自分を卑下してないが」
「ひ、ひげ? ひげってなに? ひげは、あんまり好きじゃないから生やさないでほしいなぁ。ママの彼氏みたいでやだ」
口元に生えるひげじゃないぞ。
まったく……でも、うん。ときめかなかったと言えば、ウソになるだろう。
(顔もかわいくて性格も明るい上に、料理までできるなんてすごいな……とは思ったけど)
凛々子は女性として、かなり魅力的な存在なのでは?
そう思わせるほどに、彼女は意外と高スペックだった――。
【あとがき】
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