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第三十五話 部屋から出る手段をついに見つけた!←



 最初の頃は、おっさんのことを敵だと認識していた。

 しかし、時間が経つにつれておっさんがどうも親身になっている気がして……それから一気に打ち解けた。


 俺たちがこの部屋で解決に過ごせている理由は、間違いなくおっさんが優しいおかげでもある。


(だとするなら――部屋から出る条件は、意地悪なものじゃない気がする)


 ここは『〇〇』しないと出られない部屋。

 しかも生活を始めてから三年目になる。もちろん、部屋から出るための努力だってしていた。特に一年目なんて、毎日何か考えついては実行して、失敗を繰り返していた。


 脱出だって試みた。食事や荷物を出し入れする取り出し口から逃げようとしたし、壁を壊そうと椅子で殴ったりもした。庭から出て壁をよじ登ろうとしたことだってある。しかし全てうまくいかなかったので、三年目になって諦めているというわけだ。


(とはいえ……思いついてまだ試していないことも色々あるけど)


 ウェハースを一口かじりながら、脳の引き出しを探る。

 この部屋から出るための『〇〇』について……やれることはある程度やった。


 だが、やっていないこともある。

 それは、倫理的に問題があることや、残酷な内容のものだ。


(この前のキスとかも、それに近いものだよな)


 結果的に『手の甲のキスくらい何もしていないのと一緒!』と怒られてしまったが。

 しかし、こういった行為は凛々子に不快感を与える可能性があるので、実は避けていた。


 ……もちろん、暴力的な内容だってそうだ。


(『殴り合い』をしないと出られない部屋、とか。その可能性も、あるにはあったよな)


 おっさんは『君たち二人で達成できること』というルールを最初に明示している。

 暴力だって、一応そのルール内の行動ではあるだろう。


 でも、この部屋で過ごして三年目なのだ……おっさんの人格が分かった今なら、こう断言できた。


(俺たちにとって悪いような内容じゃない。少なくとも、お互いに傷つけたり、不快な気持ちにさせるようなことではない)


 部屋から出るための『〇〇』について、少しずつ絞れてきた。

 昨日、おっさんがポツリと呟いた『まぁ、今日の出来事は意外と悪くない線をいってたけどね』というセリフを聞いて、この考察はほぼ間違いないと確信を持てた。


(昨日の出来事か……色々あったけど、整理してみると意外と分かりやすくはあるよな)


 凛々子が説教されて、落ち込んで、反省していた。

 俺が説教して、なだめて、おだてて、へたれて、謝ったりもした。


 こういった行動の中に、正解に近いものがあったらしい。


(何だ? どれが、おっさんの設定している『〇〇』に近い行動なんだ?)


 ここからが大切だ。思考を研ぎ澄ませて、しっかり考えろ。

 何か思いつきそうな気がしている。この部屋から出るための方法が、すぐそこにある気がしてならない。


(説教……たとえば、もっと怒るとか? いや、それは凛々子が傷つく行為だから、違う。ネガティブな内容ではない。じゃあ、俺がなだめたり、謝ったりしたことに関連することも違う気がする。マイナスの感情があるような行為じゃないはず)


 それでは、他に残っているものは――


(おだてる、か?)


 おだてる。つまり、褒める――とかそれに近しい行動なら、誰も傷つかない。むしろ凛々子は喜ぶ。

 いや、しかし……褒めるくらいのことなら今まで何度もしている。もしそれが出るための条件なら、もうとっくに部屋を脱出できるだろう。


 他のことだ。

 昨日はいったい、何があったのか。

 もっと大きな出来事があっただろう。

 たとえば、そう……!


(――結婚の話だ!!)


 思い、だした。


 そうだ。凛々子がなぜか俺と結婚することを決めていた。


 昨日は発想が飛躍しすぎだ……と、スルーしたが。

 しかし、そうだ。『結婚』しないと出られない部屋、なら大いに可能性がある気がする。


 これなら、二人とも幸せだ。

 誰も傷つかないし、おっさんがやけに俺との結婚を凛々子に促していた意味も分かる。


(つ、ついに……正解を見つけてしまったか!)


 この部屋に来てから764日目。丸二年と、一ヵ月が経過している。

 もういいかげん、外に出てもいい時期だろう。


 と、いうことで。

 俺たちは今日、この部屋を出る――!

【あとがき】

お読みくださりありがとうございます!

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これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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