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第一話 3D×3Y~三日で出ようと思ってたのに三年目になっていた件~

 俺は地雷系女子と〇〇しないと出られない部屋に閉じ込められたらしい。


(まさか、この状況って……)


 嫌な予感がする。なんとなく見覚えのあるシチュエーションな気がしていたのだ……でもまさか、こんなことありえない。


 そう、信じたかったのだが。


「あ! わたし、知ってるかも!? 漫画で見たことあるっ」


 彼女にはもしかしたら、シリアスという感情がないのかもしれない。

 この状況に至ってなお、明るい声音で。


「〇〇って、大人の男女がやるあの――」


「いやいやいや! そんなわけないからな!?」


 危ない!

 慌てて大声を上げて彼女の言葉を遮った。


 そのセリフを最後まで言わせてはならない。いや、俺だって薄々そんな気はしていたのだが……明言すると意識してしまうので、何も言わないでほしかった。


『ふふっ。まぁ、解釈の仕方は任せるよ……とりあえず、君たちは〇〇しないとこの部屋から出られない』


「ふ、ふざけんな! こんなの人道に反してるだろ!!」


『ん? 何がかね? こちらは別に、〇〇としか言ってないが』


 くっ。嫌らしい言い回しである。

 たしかに何をしろ、と明言はしていない。それがまた腹立たしかった。


「というか、出せよ。こんなの軟禁だろ? しかも俺たちが眠っている間に連れて来たってことは、誘拐でもあるんじゃないか?」


『まぁ、そのあたりの解釈も君たちに任せようかな。いくら文句を言ったところで、この部屋からは出られないからね……〇〇するまでは、ね』


「なんでこんなことをする?」


『趣味だから、という理由では不足しているかな?』


「性格が終わってる」


『ああ。自覚はあるさ』


 何を言っても無駄だ。

 おっさんは飄々と笑うのみである。違法性なんて追及したところで、意味はなさそうだった。


「ふーん。『あれ』すれば出られるんだ。じゃあ普通に出られるね」


「は?」


 先程から彼女の発言は軽いな、と感じてはいた。

 しかしこいつは……ノリも軽い人間みたいだ。


「わたしは別に怒んないよ? まぁ、顔は地味だけど仕方ないし」


「地味って……いや、顔が問題じゃないだろ。こういうのは愛がないと」


 正気だろうか。なんでこの子は嫌がってないんだ……!


「……別に愛なんてなくたって良いと思うけどなぁ。だって、愛なんてそもそもこの世にないんだから」


「おい、いきなり深いこと言うな」


 反応に困る。なんとなく彼女の闇を感じたので、とりあえずスルーしておいた。


「俺は絶対にやらないからな!」


 こんな動物実験みたいな状況なんて、死んでも嫌だ。

 あと、このおっさんの思い通りになんてなりたくない。


「なんで嫌なの? 出るためなら別にいいじゃん」


「良くないだろ。だいたい……『〇〇』がお前の考えていることだという保証もないからな」


『ああ、こちらは別に何も指示はしてないからねぇ。ただ『〇〇』をしたら出られる、というのは確実だよ。もちろん、君たち二人がこの部屋で達成できることだから安心してくれ。その行動が確認できたら、今すぐにでもこの部屋から出してあげよう』


 正解は曖昧。そもそも『〇〇』が二文字かどうかも怪しい。

 そこに入るワードは無限にある……彼女が考えているようなことをせずとも出られる可能性があるなら、試した方がいいに決まっている。


『そういうことだから、頑張りたまえ。君たちの行動を、楽しませてもらうよ』


 そう言って、モニターの映像が変わった。

 おっさんはもういない。その代わりに、モニターには『〇〇しないと出られない部屋に入って1日目』という文字が映し出されている。


 そして、モニターに設置されているカメラもまた……俺たちにまっすぐ向いていた。


 監視……じゃないか。観察はずっと続いているのだろう。

 こんな状況、最悪すぎる。


「えー。わたし、明日には出たいんだけどなぁ」


 でも、なんで彼女はこんなに雰囲気が軽いんだろうなぁ。

 もっと落ち込んだり怒ったりしてもいいのに。


「わたしは別に怒らないから、適当にすませちゃえばいいのに」


「そ、そういうのは良くないだろっ」


「……あ! 分かった、どーてーくんってこと?」


「そそそそそれは関係ないだろ!!」


 こいつ、下品すぎる!

 なんというか、異性として好みのタイプじゃない。こいつに手を出すのは、なんか嫌だった。


「いける時にがんばらないと、これからもずっと『どーてー』だけどそれでいいの?」


「うるさいっ。てか、地雷系になんて手を出すかよ……お前みたいなやつに手を出したら破滅するって聞いたことあるからな」


「はぁ!? そんなわけありません~。ばーかばーか!」


 子供かっ。

 相性が悪いことに彼女もようやく気付いたらしい。不機嫌そうにほっぺたを膨らませていた。


「あーもう! あんたみたいなどーてーと長くいるなんてむり!」


「俺だってお前なんてごめんだ! すぐにこんな部屋出てやるからなっ」


「じゃあさっさとすませてここから出してっ」


「……そ、そういうことも絶対にやらないからな!?」


 とりあえず、彼女から距離を取るようにベッドから降りた。

 もう、お互いに目も合わせない。仲良くするつもりもないので、どうだっていい。


(絶対に『〇〇』を探し出して、ここから出てやる)


 そう心に誓って、拳をギュッと握った。

 三日だ……三日でここを出てやるからな――








 ――そして今日、三年目を迎えた。

 おかしい。三日で出るはずだったのに、俺たちはまだここにいる。

 あの頃の焦りや怒りは、もう記憶の彼方に消えていた。


「あ、そういえば今日が三年目の記念日だね~」


「記念日って……何がだよ」


 俺たちは今、この部屋を出るためにがんばって――いない。

 三年目になった今、二人でベッドの上でだらだらと寝そべっていた。


「ほら! わたしとぴっぴが出会った記念日、だよ♡」


 しかも彼女は、俺を『ぴっぴ』と呼んでる。


 はぁ……三年で色々と変わりすぎだろ――。


【あとがき】

お読みくださりありがとうございます!

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これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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