第十三話 御託をならべるなよ、オタク臭いなぁ
凛々子はゴミを見るような目で俺を見ていた。
「くせぇ」
「く、臭いとは?」
「おたく臭がくせぇ。お風呂入ってきたら?」
「さっき入ったよ!」
「はぁ……真面目な顔で何を言うのかなってドキドキしたのに。もうっ」
彼女はほっぺたを膨らませて、不満そうな表情を浮かべていた。
真剣な話をしたつもりだったのだが……真面目に聞いていないような気がする。
「凛々子。お前はバカだから分からないだろうけど、ストックホルム症候群とは本当にあることで――」
「ばかじゃないもーん。くせぇんだよ、おたく。しゃべるな」
酷い。一応、女の子と共同生活しているから体臭は気を付けているのに!
いや、まぁ……分かっている。凛々子が鼻をつまんでいる理由は、実際の体臭が原因ではないのだろう。
「そーやって難しく考えて生きるの辛くないの? だいじょーぶ?」
不満を通り越して、今度は心配の感情が勝ってきているらしい。
そ、そんなに俺、変なこと言ったかなぁ。
「ぴっぴ、あのね? 好きって気持ちはね、好きだから『好き』なんだよ?」
「すまん、分からん」
セクシーな構文すぎて意味不明だった。何の説明にもなってねぇよ。
「……わたし、あなた、しゅき。おっけー?」
「ノー」
単語が難しかったわけでもねぇよ。
簡単な言い回しなら伝わるかなぁ、と試行錯誤するな。
「めんどくさいにゃあ。これだからオタクは……」
「な、なにがそんなに不満なんだよ」
「つまり、ストライクホルモンしょーろんぽーだっけ? そんな病気じゃないから、安心してってこと!」
凛々子は首を大きく横に振って、力強く否定した。
まぁ、そうは言われても、俺が納得できるわけないのだが。
「でも、お前みたいにかわいい女子が俺を好きになるわけないだろ? 常識で考えろよ」
「ねぇ、けんかしてる時に褒めるのやめてくれない? かわいいって言われたら照れるんですけどっ♡」
「ホストとかの愛人にいそうな顔してるから」
「そんな顔じゃないもんっ……はぁ。なるほどね、オタクくんはわたしがかわいすぎて自分に自信がないだけなんだ。ふーん、かわいいから許してやるかにゃあ」
な、なんか許されていた。
うーむ。先程から会話がかみ合わない……。
「あのね、わたし……ぴっぴと外で会ったとしても、たぶん普通に好きになってたと思うよ?」
「そんなわけないだろ。地雷系女子がどうやったら俺を好きになれるんだ?」
「地雷系じゃないもーん。量産型です~」
どちらも同じ意味じゃないのか?
と、話の腰を折るのは控えておいて。今は静かに耳を傾けよう。
いったい、凛々子が何を伝えようとしているのか。そちらを知ることが優先だ。
「普通に生きてたらたしかに話すことはなかったかもしれないけど……何かのきっかけで会話できていたら、仲良くなったと思うなぁ。わたし、ぴっぴみたいな奥手な感じ、けっこー好きだもん」
「マジかよ。イケメンでゴリゴリのチャラい感じが好きじゃないのか?」
「そっちも嫌いじゃないけど~。うーん、やっぱり話を聞いてくれる方がわたしは好きかなぁ?」
そ、そうだったんだ。
世の中の女子って結局、たくましい強者男性かイケメンか金持ちが好きだと思っていた。
しかし意外とそうでもないのかもしれない。むしろ凛々子は俺のような人間でも大丈夫らしい。
これはもしかして、あれだ。
創作の世界ではよく見かけているが、現実の世界には生息していない伝説の生き物。『オタクに優しい女子』というやつだ!!
す、すごい。初めて見た。
ただの面食いの地雷系女子だと思っていたけど……凛々子はオタクにも優しいタイプだったみたいだ――。
【あとがき】
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