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『第4話 山ほどの愛』

「フィヨン家の使いの者です。ルーク様とメミニ様はいらっしゃいますか」


 そう言って協会本部を訪れた男に呼び出され、俺達はビクビクしながら応接間に向かっていた。


「……結局のところ任務は失敗したんだしやっぱり気が変わって俺達をクビにしろとか訴えるとかそういう話だったらどうしよう……」


「フィヨン家って協会に多額の出資をしてるって話でしたよね……もし私達のせいで出資を取りやめるなんてことになったら……」


 不安そうな俺達の足元でメミニの姉、アルマが元気付けるように「にゃぉ〜」と間延びした鳴き声を上げる。


「ありがとうお姉ちゃん。きっと大丈夫だよね……」


 二人で話し込んでいるうちに応接間の前まで来てしまい、俺達はごくりと唾を飲んでドアを開けた。恐る恐る中を覗き込むと中にはフィヨン家の人間と思しき若い男が座っていた。彼は俺達の姿を見ると立ち上がって深々と頭を下げる。


「この度は誠に申し訳ありませんでした。我がフィヨン家の揉め事にお二人を巻き込み、大変なご迷惑をおかけしてしまいまして……」


「あ、いえ!気にしないでください!」


「そうです!むしろ俺達はレーモンさんを連れ戻すって依頼を失敗したんだから、本来こっちから出向いて謝罪に伺うべきだったのにこうして直接お越しになっていただけたことに恐縮しています!」


 俺達が慌ててそう言うと男はほっとした様子を見せた。


「そうですか……そう言っていただけてありがたいです。……おや可愛らしい猫ちゃんですね、撫でても構いませんか?」


「はい!俺の姉なんです。とっても賢くて頼りになるんですよ!」


 メミニが元気よく答えると男は微笑み、「それは素晴らしいですね」とアルマの顎を撫でた。アルマは上機嫌でゴロゴロと喉を鳴らす。


「ところで今回はどういった要件で……やっぱり大事な跡取りを変異させてしまったんだから罰金とか慰謝料を請求されてしまうんでしょうか……」


 俺がおずおずと尋ねるとフィヨン家の使いの者は首を振った。


「……いいえ、先程も申し上げましたようにお二人をフィヨン家の揉め事に巻き込んでしまったことに関してはこちらでも責任を感じております。それで今回は慰謝料等の請求ではなく、逆に私どもの方からルーク様とメミニ様に謝礼をお渡ししたいとこちらを訪問させていただいたのです」


「えっ!俺達にですか!?」


 驚く俺達を見て男は優しく微笑んで言った。


「はい。申し遅れました、私は新たにフィヨン家の養子となったベルナールと申します。ゆくゆくは私がフィヨン家を継ぐことになるので、こうして直接ご挨拶に伺った次第です。どうぞ今後ともよろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします……」


 ベルナールさんの礼儀正しさに圧倒されつつ俺達は頭を下げる。すると彼は手に持っていた大きな鞄から箱を取り出しこちらに差し出してくる。


「こちらが私どもからの謝礼になります。どうぞお受け取りください」


 箱を開けるとそこには明らかに高価そうな宝飾品や工芸品の数々が入っていた。


「「こ、こんな高そうなもの頂けません……!」」


 俺達は二人同時に声を上げる。


「遠慮なさらずに受け取ってください。これはお二人にお詫びの気持ちも込めてのものですので」


 ベルナールさんはそう言って微笑んだが俺達は気が引けてしまいなかなか手に取ることができなかった。


「……お二人が受け取ってくださらないのならこの謝礼は屋敷の倉庫の肥やしになってしまうことになります……」


「……わ、わかりました……じゃあ遠慮なくいただきます……」


 ベルナールさんが悲しそうな表情を浮かべるので、俺達はおずおずとそれを受け取ったのだった。


「ありがとうございます」


 ベルナールさんは再びにっこりと微笑むと立ち上がり深々とお辞儀をした。


「それでは私はこれで失礼させていただきます……今後ともよろしくお願いいたしますね」


 そう言った後部屋を出て行った彼を見送ると俺達は顔を見合わせた。


「とりあえずこれで任務失敗のペナルティは免れたようだな……」


「ですね……良かったです」


「にゃあ」


 ***


「……ということがあってさ、一応受け取りはしたけどこんなに高いものもらって本当によかったのかな?」


 俺はロビーでメミニと共にセレスティアとフェリックスにさっきのことを話していた。


「もちろんだ、変に遠慮をして受け取らなかったら逆に失礼だっただろう」


 フェリックスがそう言うとセレスティアも頷く。


「別に深く考える必要は無いわよ。受け取ったものを返す方が失礼なんだから胸を張って貰っておけばいいの!」


「二人がそう言うのならまあいいか……じゃあメミニ、貰ったものは二人で分けよう」


 俺がそう言うとメミニは少し恥ずかしそうに頬を染めて頷いた。


「はい……でも私、こんな高価なアクセサリーを身に付けたことが無いので何をどう着ければいいのかわからなくて……」


「あら、これただのアクセサリーじゃなくて魔具じゃない」


 セレスティアが宝飾品を一つ取って光に照らして見ながら言った。


「えっ、これがそうなんですか?うわぁ……私実物は初めて見ました……!」


「魔具って何だ?」


 メミニの言葉に反応して俺が尋ねるとセレスティアは答える。


「魔法を強化する素材でできた道具のことよ、持っているだけで魔法の威力が上がったり魔導力の上限を引き上げたり色々な効果があるのよ。希少な素材でできてるからあまり市場に出回ることないんだけど、フィヨン家はさすが資産家ね」


「へぇ~そんな便利なものがあるんだな……じゃあこれさえあればメミニが今まで以上に活躍できるってことか!」


 俺がそう言って笑いかけるとメミニは複雑そうな表情で答えた。


「でもそんなすごいもの身に着けてたら無くしたり壊してしまいそうで少し怖いです……!」


「まあ、細かいことは気にしない!使わずしまい込んでおく方が勿体ないわよ!……ねえ、こんなにあるんだから私にも一つ譲ってくれない?」


 セレスティアがそう言ってパチンとウインクをする。


「お前なあ……メミニ、一度たかりを許したら際限なくたかり始めるぞこいつは。拒否しろ、断固拒否だ」


 俺が呆れてそう言うとメミニは苦笑しながら頷いた。


「いいんです。セレスティアさんにはいつもお世話になってますし、ずっとお礼がしたいと思っていたので……これで少しでも喜んでもらえれば」


「メミニ……!冗談のつもりだったけどそう言ってくれるなら私も遠慮なくもらうわ、ありがとう!」


 セレスティアは満面の笑みを浮かべて喜んだ。


「おいコラ、少しは遠慮しろ!……ったく現金な奴め……」


 俺は呆れてため息をついたが彼女は気にすることなく俺達に向かって感謝の言葉を繰り返した。


「あっ、このブレスレット、お姉ちゃんのネックレスにしたら似合いそう!お姉ちゃんにあげるね!」


 メミニはそう言ってブレスレットを手に取るとアルマの首につけた。アルマは嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす。


「気に入ってくれたの?良かった!あっ、セレスティアさんも好きなのを選んでください」


「あらありがとう!それなら私は……このネックレスにしようかな。色合いも綺麗で素敵ね」


 セレスティアはネックレスを手に取ると嬉しそうに微笑んだ。


「はい、とっても似合うと思います!」


 メミニの言葉にセレスティアは照れたように笑う。


「ふふっ、ありがと!」


「私はどれにしようかなあ……普段使いするならこのイヤリングか指輪かな……」


 メミニがそう言いながら悩んでいるとアルマが机の上にピョンと飛び乗り、何かを訴えるように「にゃぁ」と鳴いた。


「どうしたのお姉ちゃん?」


 メミニがそう言って首を傾げるとアルマはもう一度「にゃぁん」と鳴いてイヤリングを前足で叩いた。


「これが似合うんじゃないかって言ってるみたいね」


「確かにこれすごく綺麗だし色合いも好きかも……じゃあこれにするね、お姉ちゃん!」


 そう言ってメミニはイヤリングを手に取ると早速身に着けてみる。それは青く透き通った石の付いたもので彼女の髪色に良く合っていた。


「うん!似合ってるわ!」


 セレスティアの言葉にメミニは嬉しそうに微笑む。


「なあおい!こっちのナイフもすごいぞ!アダマンタイト製かよ!」


 そう言ってフェリックスは鞘から出したナイフの刀身を目を輝かせながら眺めていた。


「ア、アダ……何だって?よくわからんがすごいものなのか……?」


 俺がそう呟くとフェリックスは早口で説明し始めた。


「アダマンタイトは魔法耐性や物理耐性に優れた希少〜な素材で、硬度も高くて加工が難しいから一部の職人しか扱えなくて武器や防具に使われることは滅多にねーんだよ!いいな〜、俺も現役時代にこんなの欲しかったぜ」


「俺にはよく分からないけどそんなすごいもんなのか……っていうか現役時代って?お前ここに来る前何かやってたのか?」


 俺が目を丸くして尋ねると彼はドヤ顔をしながら胸を張った。


「ん?俺は元騎士団だったんだよ。右肩怪我して武器振るえなくなったから引退したとこを、顔見知りだったセレスティアのツテで協会に雇ってもらったわけよ」


「フェリックスはセレスティアとそんなに前から仲が良かったのか?俺と違ってかなり付き合い長そうだけど」


 俺は何故か少し胸がチクリと痛んだ気がして、それを悟られないように平静を装ったがフェリックスは気にもとめず答えた。


「あれ?知らなかったのか?セレスティアは元魔術師団長だぞ」


「セレスティアさんが参戦した戦いは必ず勝利するから『勝利の魔女』って呼ばれていたんですよね。私の通っていた魔法学校でもセレスティアさんは皆の憧れでした」


「ええ!?そうなのか!?」


 俺は驚いてセレスティアの方を見たが、彼女は特に気にする様子もなく微笑んでいた。


「ちょっとやめてよ、そんな大層なものじゃないってば。魔術師団が力を振るえるのはあなた達騎士団が前線で戦ってくれているおかげよ。私はただの後方支援役に過ぎないわ」


「でもセレスティアやメミニ達魔法使いのおかげで俺達も安心して協会の任務に当たれるわけだし、感謝してるよ」


 俺がそう言うと彼女は少し照れくさそうに微笑んだ。


「そう……なら良かった」


「まあ、虹の風のせいで今はどこの国も戦争なんてしてる場合じゃなくなって、我が国の騎士団も国内の治安維持にかかりっきりだしセレスティアも協会の活動に専念するため魔術師団を引退したってわけ」


「ふーん……俺、セレスティアのこと何も知らなかったんだな……」


 俺がぼそっと呟くとセレスティアが不思議そうに尋ねてきた。


「どうして?別にいいじゃない、お互いのことを全部知る必要なんてないわ」


「いや……そうなんだけど……」


 俺がそう言い淀んでいるとフェリックスが先程のナイフを眺めながら言った。


「で、ルーク!このナイフお前が使うのか?使わないなら俺が貰ってもいいか?」


「使う!だからお前にはやらんっ!」


 フェリックスがナイフを自分の腰に下げている鞄にしまおうとしているのを見て俺は慌てて叫んだ。


「冗談だって、でもその姿で上手く扱えるのか?そのナイフ結構デカくて重いぞ」


「舐めんな!これくらい余裕だっての!」


 そう言って俺は柄を咥えナイフを構えてみせる。


「おおーカッコイイじゃない!」


 セレスティアが拍手しながら褒めてくれたので俺はちょっと嬉しくなった。


「ふん、まあまあだな」


 フェリックスはどこか不満そうな顔をしていたが気にしないことにした。


「このナイフ、すぐに取り出せるようにポーチの横にでも付けとこうかな。後でアウェスに頼んで腹のベルトにナイフホルダー付けてもらおっと」


「……それにしてもベルナールって人、資産家とはいえこれだけの希少な素材を集めるなんて只者じゃないわね。フィヨン家の養子って言うけどどんな人物なのかしら」


 セレスティアが真剣な声音でそう言うので俺も頷いて言った。


「確かに怪しい感じはしたよな……でも雰囲気からして悪い奴じゃなさそうだったし俺達に何か危害を加えようとはしないと思うぞ」


「有無を言わせない迫力がありましたよね……でもお姉ちゃんを褒めてくれたので私も悪い人じゃないと思います!」


 メミニがそう言うとアルマも同意を示すかのように「にゃあ!」と鳴いた。


「何か小耳に挟んだ話だと、あの任務のすぐ後でフィヨン夫人がフィヨン家の分家筋を片っ端から調べ上げて見出したのがベルナールだったらしいぞ。地元じゃ『天才』って言われててフィヨン夫人がぜひ養子にと申し出て本人もそれを了承、そのまますぐに養子になったって話だ。分家筋の人間だから他の貴族連中も口出しできず、このまま行けば正式に彼が当主になるだろうな。これからも協会への出資は続けてくれるって話だし、まあ丸く収まって良かったんじゃないか」


 そう言ってフェリックスは息をつく。


「とはいえやっぱりこう改めて自分のせいでフィヨン家がめちゃくちゃになっちまったと思うとモヤモヤするっていうか、自分の未熟さを実感せざるを得ないって言うか……」


「実は私も未だに結構引きずっていて……」


 落ち込む俺とメミニにセレスティアがそっと声をかけてきた。


「まあまあ、あなた達のせいじゃないんだし、過ぎたことを悔いても仕方ないわ。今はこの事態を収拾するためにも一刻も早く虹色の風を止めることを考えるべきだしね」


 セレスティアがそう言って俺達の肩にポンッと手を置いたので俺は苦笑した。


「そうだな……とりあえず俺達ができることを一つ一つやっていくしかないな!」


「そうですね!私も精一杯頑張ります!」


 メミニはそう言って胸の前で両拳を握る。そうして俺達は改めて決意を固めたのだった。


 ***


 とはいえやる気があっても任務がなければ何もできない。暇を持て余したうららかな昼下り、中庭で昼寝をしているとアルマが寄ってきて隣に寝転んだ。


「おっお前も昼寝か?いいよな〜のんびりできるのは幸せなことだ」


 俺がそう言うとアルマは「にゃーん」と鳴きながら尻尾をゆらゆら振った。


「はー、平和だなあ……このままずっと虹の風なんて吹かなきゃいいのになあ」


 俺がそう呟くとアルマも同意するかのように「にゃっ!」と鳴いたが、すぐに何かを思い出したかのように顔を上げて再び鳴き始めた。


「……ん?どうした?」


「にゃーん、にゃおーん」


 アルマが必死に何かを訴えかけているのに気付き、俺は起き上がって彼女を見た。すると中庭の出入り口からフェリックスが駆け込んできた。


「おいルーク、ちょっと来てくれ!"いつもの"だ」


「……!分かった、すぐ行く!」


 そう言って立ち上がった俺にアルマが不安そうに鳴いた。


「にゃーん……」


「心配すんなってアルマ!今回は上手くやってみせるからさ!」


 俺がそう言うとアルマは尻尾をだらりと下げて大人しくなった。俺はフェリックスと共にロビーに向かうとそこにはセレスティアがいた。


「あっ、セレスティア。ちょうどいいところに!人探しの任務に同行してくれよ!」


 俺が元気よく声をかけると彼女はわざとらしく残念そうな顔をして振り返った。


「ごめんね、ルーク。今私とっても忙しいのよ」


 嘘だ、と思った。だって彼女は今まさにロビーのソファに座って優雅に紅茶を飲んでいるじゃないか。しかもスコーンまで付けて。しかもしかもチョコチップ入りのやつだ。俺はこの身体になってから『イヌ科にチョコは駄目だよ〜』と言われチョコを禁じられているのに。


「何でだよ、どう見ても何もしてないだろ」


 俺がじとっとした目で睨みつけるとセレスティアはわざとらしく目を逸らした。そして彼女が言葉を発しようとした瞬間、フェリックスがすかさず割り込んだ。


「まあまあ!いいだろ、セレスティアは普段理事長代理としてこの協会の業務を一手に引き受けてくれてるんだからたまには息抜きさせてやらないと……」


 そう言って彼は俺の肩を掴んできた。確かに、セレスティアが普段協会のためにどれだけ尽力してくれているかを考えるとこれ以上我儘を言うわけにもいかないと思い、仕方なく彼の言うことに従った。


「わかったよ……じゃあメミニでも誘うか」


 俺がそう呟くと、ちょうどメミニがロビーへやってきた。


「あっ、ちょうどよかった!メミニ!今から俺と一緒に人探しの任務に行ってほしいんだけど……」


 俺が声をかけると彼女はいつも通りの眩しい笑顔で答えた。


「はい、勿論です!それでどこに行けば良いですか?」


 メミニの言葉にフェリックスは笑顔で頷きながら言った。


「今回の依頼は北西にある山岳地帯の温泉街ルーナ・プレーナ。町長が3日前虹の風が吹いてから行方不明になってるから捜索して欲しいそうだ」


「……温泉街、ですって?」


 セレスティアが食いついた。彼女は顎に手を当てながら考え込んでいる。


「……ルーク、さっきは忙しいと言ったけど不思議なことに急に忙しくなくなったの。だから今回の任務は私も同行するわ」


 そう言ってセレスティアは立ち上がるとこちらに向かって歩いてきた。


「いやお前温泉入りたいだけだろ……まあいいけど。じゃあ今回は俺とメミニとセレスティアの3人で行こうか」


 俺がそう言うとセレスティアとメミニは笑顔で頷いた。


「いいなー俺も温泉入りてーなー。よし、今度休暇取って行く!絶対行くぞ!」


 フェリックスが羨ましそうにこちらを見ている。


「じゃあ早速出発しよう」


 俺がそう言って歩き出すと皆も続いて歩き出した。目的地は温泉街ルーナ・プレーナ、町長の捜索だ。どんな任務だろうとセレスティアやメミニと共に戦えることが心強くて仕方がなかった。


 ***


「……ここがルーナ・プレーナか」


 俺は目の前に広がる光景に思わず感嘆の声を漏らした。ルーナ・プレーナは温泉で有名な観光地で、山間の緩やかな斜面に建物が立ち並ぶ風情ある街並みが印象的だった。


「わぁ……!すっごく素敵な場所ですね!」


 メミニも目を輝かせながら辺りを見回している。セレスティアも興味深そうに辺りを観察していた。


「そうね、こんなに情緒ある街並みなんて久しぶりだわ。さあ、早く町長さんを見つけましょう!」


 セレスティアがそう言って歩き出したので俺達もその後に続くことにした。


(めちゃくちゃ張り切ってるけど多分さっさと終わらせて温泉入りたいだけだろうな……)


 俺はそう思ったがあえて口にはしなかった。


「とりあえず依頼人の副町長に話を聞いてみるか……」


 そう言って俺達は町の中心部にある町役場へ向かったが、町役場には鎧を着込んだ人達が大勢いて何やら忙しなく動き回っていた。


「……あれは?」


「騎士団の人達ですね……どうしてこんなところに?」


 困惑している俺達を余所にセレスティアは人混みの中に歩みを進めていきその中の一人に声をかけた。


「ソルじゃない。騎士団長様が部下を引き連れてこんな観光地にいるなんて、何かあったの?」


「セレスティアじゃないか、久しぶりだな……実は3日前にこの町の近くの山で地形変化が観測されてな……ほら、あそこの山だ。この町の複数の住人からあの山が明らかに以前より高くなっていると報告があったんだ」


 彼が指差した町役場の窓からは険しい山肌が見える。


「何か上のあたりだけ黒っぽくなってるな……?」


「そう、あの山頂付近が丁度報告のあった地点だ。この辺りは火山帯だから、噴火の予兆の可能性を考えて地質調査のため騎士団が派遣されたというわけだ」


「えぇっふ、噴火ですか!?だ、大丈夫なんですか?」


 メミニが不安そうな表情を浮かべている。俺も内心では同じようなことを考えていた。


「まあ噴火に関しては今までの記録を見る限りその可能性は低いだろう。しかしあの地点で何か異常が起こっているのは確かだ。だから今のうちに原因を突き止める必要がある……お前達の方は虹の風に関する任務か?」


「ええ、そうよ。町長さんの捜索任務……ついでに紹介しておくわね、この二人は協会の新人よ」


「あ、えっと初めまして……メミニと言います……」


「ルークだ。よろしく頼む」


 俺達がそれぞれ自己紹介するとソルはにっこりと微笑んで見せた。


「そうか。俺はソル、アクィラ騎士団の団長を務めている。今回の依頼も大変だろうが頑張ってくれ」


「ああ、ありがとう」


 俺は礼を言った。


「ああ、念の為聞いておきたい。地形変化が起こったのは3日前に虹の風が吹いた直後なのだが……何か関係があると思うか?」


「虹の風が地形に影響を与えた事例は今のところ聞いたことがないわね。偶然の可能性が高いと思うわ」


 セレスティアがそう言うとソルは安堵の表情を浮かべた。


「そうか、ならいいのだが……では、我々はそろそろ出立する……失礼。お前達!行くぞ!」


「「「はい!団長!」」」


 そう言って彼は部下を引き連れて去っていった。


「じゃあ私達も依頼人に会いに行きましょうか……すみません、魔女協会の者です。町長捜索の依頼で参りました。詳細について教えて頂きたいのですが……」


 セレスティアは副町長らしき男性に話しかけ、依頼人の情報を尋ねた。


「ああ、遠路遥々ようこそいらっしゃいました。どうぞ、おかけください」


 彼はそう言って俺達に椅子を勧め、お茶を出すと話し始めた。


「町長は3日前に突然『あの山に展望台を作ろう!新たな観光名所として宣伝するのだ!これでこの街は更に盛り上がるぞぉ!早速下見に行ってくる!!』と言って山に登ってから帰ってこず、連絡も取れないのです……町長は山を登り慣れてるし、この街は温泉だけではなく登山目的の客も多く訪れていますから警報装置も設置済みで、登山中に虹の風が吹いてもすぐ逃げ込めるよう登山道のあちこちに小屋が建てられているので初めは虹の風が吹いても誰も心配していませんでした……」


 副町長はそう言って一度言葉を切った。


「それが、虹の風が止んで夜になっても町長が帰ってこないので、怪我や病気で動けなくなったり滑落してしまったのではないかと捜索隊が組まれたのですが……どこを探しても見付からず、もしや何らかの理由で小屋に逃げ込むことができず虹の風を浴びて変異してしまったのではないかと……それで魔女協会にご依頼をさせて頂いたのです」


 副町長はそう言って眉間に皺を寄せた。


「なるほど、事情はわかりました。あとは私達にお任せください!」


 そう言ってセレスティアは力強く頷いて見せたので俺達は早速町役場を出て捜索を開始したのだった。


 ***


 それから数十分後、俺達は登山コースを歩いていたのだが……


「ひぃ……はぁ……ちょ、ちょっとルーク……もう少し速度落としてよ……」


 登山用のウェアを着たセレスティアが息も絶え絶えといった様子で訴えてきた。


「でも、のんびりしてたら日が暮れちまうだろ!町長の匂いは上の方からしてるんだ。それにこの山はそこまで高くないしもうすぐ頂上だから頑張れ!」


「うぅ……」


「セレスティアさん、大丈夫ですか……?スポーツドリンクです、どうぞ」


 そう言って同じく登山用のウェアを着て、軽快な足取りで山登りしているメミニはカバンから水筒を取り出した。


「ありがとう、頂くわ……」


 セレスティアは差し出された水筒を受け取ると勢いよく飲み始めた。


「……ふぅ〜!生き返るわ〜…」


「じゃあ出発するぞ!」


 そう言って俺達は再び歩き出した。


「……なあ、俺思ったんだけどお前その背中の羽で飛べたりしないのか?」


「ふぅっ……ほへぇっ……この羽ね……飛ぼうと思えば飛べるんだけど……歩くよりも疲れるから……はぁっ……あまり意味ないのよ……」


 セレスティアは苦しげな声でそう答えた。


「ふーん、そうなのか」


「セレスティアさん!もう無理せず飛行魔法使っちゃいましょう!」


 メミニがそう提案するとセレスティアは弱々しく首を振った。


「ありがとう、メミニ……でも魔力消費が激しい飛行魔法はいざという時のために温存しておかないと……」


 そう言いつつも彼女は一歩歩くごとに息を切らしていた。


「……セレスティア、意外と体力無いというか、お前にも弱点ってあったんだな……なんか意外」

「私も人間なのよ……ふぅっ……」


 セレスティアはそう言うと大きく息を吐いた。

 そうこうしているうちに頂上が近付いてきた。同時に前方に複数の人影が見える。あれは……


「騎士団だ!」


「あっ、本当だ!ソルさんもいますね」


「おーい!」


 俺が叫ぶとソルがこちらに気付いた。


「おお、君達か……何故ここに……」


 彼は驚いた様子で俺達を見た。


「町長の匂いを追って山を登ってきたらここまで来ちまって……そっちは何か収穫あったのか?」


 俺がそう尋ねると彼は少し困ったような表情を浮かべて答えた。


「いや、特には無いな……ただ気になる点が一つあってだな……」


 そう言ってソルはしゃがみ込み黒ずんだ地面に手を当てる。


「それは……?」


 メミニが不思議そうに尋ねるとソルはこう答えた。


「この周囲の地面は普通の岩ではない。まるで鋼鉄のように硬く、見たこともない素材だ。何とか削り取った一部を持ち帰り、専門機関で本格的な調査をしなければ詳細はわからないが……おそらくこの一帯はこの山の土ではなく、別の何かでできている。」


「別の……何か?」


「人工的に作られたものってことですか?」


 メミニが聞くとソルは頷いた。


「推測の域を出ないがな……しかし、こんな山奥で一体何のために……?」


「あっ、そうだ!なあソル、この一帯の調査中に町長見なかったか?俺達町長の匂いを辿ってここまできたんだけど何か変なんだよ……」


 俺がそう聞くとソルは腕を組んで答えた。


「いや、見ていないな。地形変化が起こっている範囲は我々がくまなく調査したが部下達からもそういった報告は受けていない。匂いを辿れるのならすぐに見付けられそうなものだが……何が変なんだ?」


「町長の匂い……この一帯のあらゆる場所からするんだ」


 俺はそう言って改めてクンクンと鼻を鳴らして周囲の匂いを嗅ぐ。


「町長さんがこの辺をあちこち歩き回った形跡があるってことですか?町長さんもこの変化した一帯を調べていたんですかね……?」


「いや、そうじゃない。うーん、上手く言えないけどまるで町長が何人もいて、周囲を囲まれてるみたいな……そんな感じがする……なあ、メミニはどう思う?」


「えっ……?わ、私はあまりよくわからないです……ルークさん、不気味なこと言わないでくださいよぉ……」


 メミニは少し怯えた様子でそう言った。


「うーん、そうか……」


 俺は少し考えてから言った。


「……まあとりあえず俺達で改めてこの周囲を探してみよう」


 そう言って再び歩き出そうとした俺をソルが静止した。


「いや、そろそろ日が暮れる。町長のことは心配だが捜索は一旦打ち切ってそろそろ下山した方がいい。そこまで高くない山とはいえこのままではお前達も二重遭難しかねない。我々もちょうどこれから下山するところだったんだ」


「今登ってきたばかりなのにもう降りるの!?しかも町長も見付かってないのに!?私、もう無理ぃ〜」


 疲れ果てて会話もできずに座り込んでいたセレスティアが駄々っ子のように抗議した。


「そもそもセレスティアがちんたら歩いてるから頂上まで来るのが遅くなっちまったんだろ」


「なんですってぇ!?」


 セレスティアは鋭い目つきで睨んでくるが疲れ切っていていつもの迫力がない。


「お前は相変わらず体力が無いんだな、俺がおぶってやろうか?」


 ソルがそう言って背中を向けて屈み込むとセレスティアは少し迷う素振りを見せたが、立ち上がって服に付いた土埃を払った。


「……必要ないわ。転移魔法を使いましょう。全員まとめて街まで運ぶから、騎士団も全員こっちに集めなさい」


 そう言ってセレスティアは立ち上がって両手をかざした。


「いいのか?そんな事に魔法を使って……」


 ソルが心配そうに尋ねると彼女は首を振った。


「街に戻って温泉入って寝れば魔力も回復するわ……今は一刻も早く帰りましょう」


 そう言ってセレスティアは呪文を唱え始めた。


「『デポルターレ!』」


 俺達の足元に魔法陣が浮かび上がり、光に包まれた次の瞬間には俺達は温泉街に戻ってきていた。


「セレスティアさんすごいです!!転移魔法は行き先のイメージを完璧に固めないと発動できないうえに人数と移動距離が増えるほど消費魔力が跳ね上がるのに……こんなに大人数を一度に転移させられるなんて!」


 メミニが目を輝かせてセレスティアを褒め称えた。


「ふふ、勝利の魔女を甘く見ないことね……」


 そう言ってドヤ顔するセレスティアだったがすぐにふらついて倒れそうになったので俺が慌てて支えた。


「おい、無理すんなって」


「うー、ルークぅ……もう一歩も動けないわ……温泉まで連れてってぇ……」


「……わかったから早く立て」


 俺がため息をついてそう言うと、向こうから副町長が小走りで駆けてきた。


「ああ!良かった!騎士団の皆さんも魔女協会の方々も、そろそろ日が暮れるので心配してたんです!ご無事でしたか!……それで、地形調査と町長の方は……何か手掛かりはありましたか?」


 副町長が期待に満ちた眼差しで尋ねてくる。


「えぇ……と……」


 俺が口ごもっているとソルが代わりに答えた。


「いや、残念ながら我々は何も見つけられなかった」


「……そうですか」


 副町長は落胆したように肩を落とした。


「すみません……」


 メミニが申し訳なさそうに言うと副町長は首を振って苦笑した。


「いいえ、君のせいじゃないですよ……あなた達を呼ぶ前に我々自身で調査しても何も分からなかったんです、そんな簡単には行かないでしょうね」


 そう言って再び山の頂上に視線を向けた副町長にソルが声をかける。


「明日、日が昇ったら改めて調査を再開します。街の皆さんにもご協力をお願いするかもしれませんが……宜しくお願いします」


「ええ、勿論です。快く協力させていただきます」


 副町長は安心した様子で微笑んだ。


「さあ、今日はもう遅い。宿まで案内しますので皆さんゆっくり休んでってください。また明日宜しくお願いします」


 俺達は副町長の案内に従って宿へと向かった。


 ***


「やあ旦那。この人達に部屋を用意してやってくれないか?山の件と町長の件で呼んだ騎士団と魔女協会の方々だ」


「よお副町長、お疲れさん。もちろん最上級の部屋を用意させて貰うよ」


「ありがとう、助かるよ。」


「では皆さん、こちらへどうぞ」


 宿の主人がそう言って俺達を案内するのについて行く。


「副町長さんよ、町長は見付かったのか?」


「いや、まだ見付からない。この分だと本当に変異してしまったのかもなあ」


「あのたぬきジジイ、本当のたぬきになっちまって今頃山の中で悠々自適に暮らしてるんじゃねえのか?」


「そのうちひょっこり街に降りてきて温泉入りに来たりしてな!」


「がははは」


 宿の主人と副町長は冗談を言い合い、談笑している。


「何か、今までの行方不明者捜索任務と違って悲壮感がないというか……いや、町長がすごく慕われてるんだなってのは分かるんだけど何か調子狂うな」


 俺がそう呟くと主人が振り返って笑った。


「はっはっは!あのジジイはなあ、普段から無茶ばかりするから、何かあっても『まあいつもの事だ』と皆慣れっこになってしまったのさ。だからそんなに心配はしていないんですよ」


「なるほど……」


「さて、部屋に着きましたよ。ここでゆっくり休んでください」


 宿の主人がそう言って扉を開けると、そこには豪華な内装の広い部屋があった。


「うわぁ……すごい!こんないいお部屋に泊まってもいいんでしょうか?」


 メミニは目をキラキラさせている。


「もちろんだとも。遠慮せず使ってくれて構わないよ」


「ありがとうございます!!」


 メミニは嬉しそうにしている。俺も内心かなりはしゃいでいた。


「我々は隣の部屋だから、何かあったら声をかけてくれ」


 ソルもそう言って騎士団の皆と隣の部屋に入っていった。


「それではごゆっくり」


 副町長もそう言って出て行った。俺達3人だけが部屋に取り残される。


「ふぅ〜……やっと一息つけるわね〜」


 セレスティアはソファに腰掛けるとぐったりと倒れ込んだ。


「私も流石に少し疲れました……」


 メミニも同じようにソファに倒れ込む。俺は二人を見ると苦笑しながら言った。


「こういうときはこの身体の利便性を実感するな……山登りしたのに全然疲れてないや」


 セレスティアはしばらくソファで脱力していたが突然勢いよく立ち上がり「温泉っ!!」と叫んでタオルや着換えを抱え込んで浴室の方へ走り去って行ってしまった。


「あっ、ちょっと待ってくださいよ!」


 メミニも慌てて後を追いかける。


「おいおい……まだ飯も食ってないのに……」


 俺は呆れながらも二人の後に続いたのだった。


 ***


「ここの露天風呂は、『変異してしまった家族と一緒に温泉に入りたい』って意見を聞いた町長が『それならいっそ混浴にしちまおう!』って言い出して、かなり風変わりな温泉にされちまったんだが……結果的にそれが大当たり、観光客にも地元民にも愛される温泉宿になったんです。こうして私もよく入りに来てるんですよ」


 副町長が湯に浸かりながらそう語る。


「そうなんですか。そのおかげでこうして俺も温泉を楽しむことができてありがたいです」


「私も今度はお姉ちゃんと一緒に来ようっと」


 俺達はのんびりと湯船に浸かりながらその話に耳を傾けていた。実際、俺以外にも動物を連れて一緒に温泉に入っている客が多くいて、和やかな雰囲気が漂っている。


「タオルを巻いて入ってもいいのもありがたいですね。流石に恥ずかしいので……」


 メミニは頬を染めながらそう言う。


「しかもこの温泉は貿易商会の総帥が取引先の拡大のためこの街に視察に来た際、この温泉で出逢った地元の娘と意気投合、そのまま嫁にしちまったって逸話があって『玉の輿の湯』なんて呼ばれてるんですよ」


 副町長はそう言って笑った。


「ふふっ、それは面白い逸話ですね。だからそれにあやかろうと女性客が多いのかしら」


 セレスティアも微笑んでいる。


「……セレスティアも結婚とか玉の輿に興味あるのか?」


 俺は何故か少し動揺してそう尋ねた。


「まあ、私も一応女の子だし?それに……もし結婚するなら相手はルークみたいな人がいいなあ」


「……は!?おまっ……何言って……」


 俺は思わず赤面してしまう。セレスティアはそんな俺の顔を見て悪戯っぽく笑った。


「冗談よ!本気にしないでよね!」


「ったく……お前なぁ……!」


 俺はため息をつくと、恥ずかしさを誤魔化すためメミニに話しかけた。


「メミニはどうなんだ?結婚したいとか思わないのか?」


「えっ!?わ、私ですか!?」


 彼女は慌てた様子で言った。


「私は……その……恋愛とかまだよく分からなくて……でも結婚するなら考え方や気が合う人がいいなあと思います」


「そっかぁ……メミニなら素敵な人と出会えると思うよ!」


 俺がそう言って微笑むと、彼女は顔を赤らめた。


「あっ、ありがとうございます……」


 そうして話していると露天風呂に屈強な男達がぞろぞろ入ってきた。


「騎士団の人達か……流石に鍛え上げられてるな」


 俺は感心して言った。俺も元の姿に戻って、大人になったらああいう身体になりたいと思う。そのためには今から鍛えておいた方がいいんだろうか。でも変異した状態で鍛えて意味があるのかな?そんなことを考えているとソルが話しかけてきた。


「君達も温泉を楽しんでいるようだな。」


「おう、すごく気持ちいいぞ」


 俺がそう答えるとソルもかけ湯をして湯に浸かり、気持ち良さそうに伸びをした。


「うむ、確かにこれは良い湯だ……日頃の疲れが癒されるな」


 彼は目を瞑って呟くように言った後セレスティアに声をかけた。


「フェリックスは元気にしているか?協会の人達に迷惑をかけてはいないか?」


「元気過ぎて困るくらいよ。この前なんかね、報告書の入った分厚いファイルにコーヒーぶちまけて中身全部茶色に染めちゃったのよ」


「あいつは騎士団にいた頃から落ち着きが無かったからなあ……」


「そうよ!ほら、覚えてる?前にスカラー渓谷で野営訓練したときもフェリックスが〜」


 そう言ってそのままセレスティアとソルは俺の知らない思い出話に花を咲かせ始め、俺は一人取り残された気分になる。

 ソルはちょっと渋めのイケメンで、こうして見ていてもセレスティアとお似合いだよなぁ……なんて考えて、そんな自分が嫌になる。俺はセレスティアとどうなりたいんだろう。結婚したい?でも今の俺の姿じゃそんなの無理だし、元の姿に戻れたとしても、きっと子供としてしか見てくれないだろう。そもそも俺にはソルみたいに腕っ節や経済力もない、そんな俺がセレスティアの横に立てるわけがないじゃないか。俺は自虐的に考え込んでしまう。


「ルーク?どしたの?のぼせた?」


 突然声をかけられて我に帰ると、セレスティアが心配そうに俺の顔をのぞき込んでいたので俺は慌てて取り繕った。


「あ……いや、何でもない」


「本当に?何か顔色悪いわよ」


「本当に大丈夫だってば」


 そんなやり取りをしていると騎士団の一人が突然メミニに近づいて声をかけた。


「ねえ君、メミニちゃんだっけ?町役場で見たときからかわいいな〜って思ってたんだよね〜。俺はサクスム。ねえ、この後俺と一緒に土産物屋巡りしない?」


「あっ抜け駆けずりーぞ!俺も声かけようと思ってたのに!」


「えっ!?あの……その……こ、困りますぅ……!」


 メミニは戸惑っていたが、セレスティアが助け舟を出す。


「こらっ!うちの子に手出すんじゃないわよ!」


「お前達、そこまで体力が有り余っているならこのあと俺が特別に剣の稽古を付けてやろうか?」


 ソルが鋭い眼光で睨みつけると、男達は「勘弁してくださいよ団長!」「冗談ですって!」と言って引き下がった。


「ったく、油断も隙もないわね」


「すまないな。男所帯なもので、どうしてもこういうノリが抜けないんだ」


 ソルが苦笑しながら言うとセレスティアはため息をついていた。


「それは分かるけど、限度ってものがあるでしょうに」


「あの……私、そろそろのぼせて来ちゃったのでお先に失礼しますね」


 メミニがそう言って立ち上がったので俺も「じゃあ俺も上がるかな」と言って湯から上がるとセレスティアが手を振って言った。


「私はもう少し浸かってから上がることにするわ」


「そうか、じゃあまた後でな」


 その後、俺達は部屋に戻って美味しい料理に舌鼓を打ち、温泉街を散策した後、早めに床に就いた。

 翌朝、あんなことが起こるなんて夢にも思わずに。


 ***


 ふかふかの布団の中で、俺は心地よくまどろんでいた。しかし突然激しい衝撃と共に地鳴りが響き渡り、俺は飛び起きた。


「なんだ!?」


「じ、地震!?それともやっぱり噴火ですか!?」


 隣に寝ていたメミニも目を擦りながら叫んだ。慌てて窓の外を見た俺は最初状況を理解できなかった。


「何よあれ……」


 セレスティアが呆然と呟く。

 窓からは昨日登った山が見えていた。その山頂の"地形が変化した"と言われていた部分、そこが隆起してまるで生き物のように動いている。そして、その"生き物"はゆっくり山を下り始めた。"生き物"が歩を進めるたびズシン……ズシン……と地面が揺れる。


「なあ……あれってもしかして……」


 俺が呆然と呟くとセレスティアは顔を真っ青にして言った。


「虹獣……!」


「えぇっ!?つまり、あの地形変化が起こった一帯そのものが虹獣に変異した町長だったって事ですか!?」


 メミニが驚いて叫ぶ。


「とにかく、あれを止めねえと……!いや、街の人達の避難が先か……!?」


 俺達は急いで着替えて部屋を出るとちょうど隣の部屋からも鎧を着込んだ騎士団が飛び出してきたところだった。


「あれは虹獣か?まさか町長が……?」


「おそらくそうだと思う。虹獣は捕獲が原則だけどあの大きさだと流石に難しいわね……とにかく、まずは住民の避難を最優先にしないと」


「それはこちらに任せてくれ。サクスムの部隊は住民の避難誘導を頼む。残りの者は俺と共に虹獣を止めに行くぞ!」


「了解!」


 ソルの号令で俺達は一斉に走り出した。


 ***


 外に出ると虹獣は既に山の麓まで下りてきていた。俺達は虹獣が街まで到達する前に止めようと、山に向かって駆け出す。


「あの巨体をどうやって止めるんだ?」


 俺が尋ねるとセレスティアが答えた。


「攻撃するしかないでしょうね……町長の意識が残っていれば対話で穏便に済ませられるかもしれないけど、全身が変異してしまっているしその可能性は低いでしょうね」


「戦闘は避けられないか……総員戦闘準備!遠隔武器を持っている者は頭部を狙え!近接武器を持った者は足元を攻撃しろ!ただし踏み潰されないように気を付けろ!」


 ソルが叫ぶ。虹獣はこちらに向かって歩みを進めておりこのままでは街に到達するのも時間の問題だ。そして俺達は虹獣の足元に辿り着いた。


「足元まで来たら尚更でかさを実感するな……こんなの本当に倒せるのか……?」


「念の為、一度町長に呼び掛けてみましょう」


「そうだな、それで止まってくれれば戦闘も避けられる」


 俺達は大声を上げて町長に呼び掛ける。


「おーい!町長!止まってくれー!!」


「町長さん!!聞こえてますかー!!お願いです!止まってください!!」


 しかし虹獣は俺達に目もくれず進み続ける。


「くっ……やはり無理か……!」


「仕方ないわね……!こうなったら力尽くで止めるしか無いわ!……メミニ、私達も魔法で応戦するわよ」


「はい!」


 二人が魔法を放つと虹獣の胴体に当たる。しかし、全く効いている様子はない。虹獣は多少煩わしそうな素振りを見せつつも気にせず歩みを進めている。


「これは思ったより厳しい戦いになるかもね……」


「うおりゃあ!喰らえ!……くそ!なんて硬さだ!」


 騎士団の攻撃も、虹獣の体表は硬い鱗に覆われていてなかなかダメージを与えられない。


「ルーク、あんたは下がった方がいいわ!こんなのに噛み付いたらあんたの牙が折れちゃう!」


「大丈夫だ!俺には秘密兵器がある!」


 俺はそう言うと腹部のベルトから以前貰ったナイフを引き抜くと虹獣に向かって斬りつけた。


「うおりゃあ!!」


 ナイフは軽々と虹獣の硬い鱗を切り裂く。


「おお!流石アダなんとか製のナイフ!このまま同じ箇所に攻撃を続ければ内部にもダメージを与えられるはずだ!」


「ルークさん凄いです!」


 メミニも目をキラキラさせながら俺を褒めてくれた。


「少しずつだが確実にダメージは入っている!攻撃の手を緩めるな!」


「でも団長!こいつ全く止まる気配無いですよ!それにもう街の手前まで……!」


 その通りだった。虹獣は街まであと数百メートルという所まで接近している。このままじゃ間に合わない……!


「くっ……どうすればいいんだ……!」


 俺が歯噛みしていると、虹獣の動きが突如ピタリと止まった。


「……止まった?」


 セレスティアが目を丸くして言う。


「……何だ?どうしたんだ一体……」


 俺達は戸惑っていたが、突然虹獣は「ガァアアアアア!!!」と街に向かって大きな咆哮を上げた。周囲の空気がビリビリと震える。そして虹獣は進行方向を変え再び歩き出す。


「今のは何だったんだ……?まあ、街から逸れたのは良かったけど……」


「今度はどこへ向かっているんでしょうか……?」


「この方角は……サーフェスという港街があったはずだ。このままではサーフェスが危ない。何としても止めなければ」


 ソルが険しい顔で言った。


「私達だけじゃ明らかに戦力が足りてない。協会から増援を呼ぶわ」


 セレスティアはそう言って通信機を取り出し協会本部へと通信を始めた。


「……フェリックス!え?『温泉楽しんでるか〜?』じゃないわよ!緊急事態なの!町長は超巨大な虹獣に変異して街から南西の方向に移動中。別件で街に来ていた騎士団と協力して止めようとしてるけど虹獣の表皮は硬い鱗で覆われていて攻撃が通りにくく戦力が足りない状況よ。手の空いている魔法使いをこっちに寄越して。進行方向にサーフェスがあるから念の為サーフェスにも人を送って避難指示をお願い!」


 セレスティアはそう言って通信を切った。それから俺達は虹獣の後を追う。


「何で町長はサーフェスに向かってるんだろう?それともサーフェスじゃなくてその先の海に行きたいのかな?」


 俺は疑問に思ってセレスティアに聞いた。


「分からない……でも、サーフェスは貿易が盛んな港街で住民の数も多いから、このまま街に突撃されたら大惨事になるわ。なんとしてもここで止めないと」


 セレスティアはそう言って少し焦りを見せる。騎士団が足を重点的に攻撃し続けたおかげで虹獣の歩みは大分遅くなり協会から来た魔法使い達も合流し、戦況は少しだけ好転した。しかし虹獣は相変わらず止まる様子を見せずどんどん進んで行く。


「くっ……このままじゃ埒があかない……!セレスティア!」


 ソルの呼び掛けにセレスティアが応える。


「仕方ないわね……威力が高過ぎて周囲にまで被害が及ぶうえ町長の命を奪ってしまうかもしれないし、魔力も空っぽになるからできれば使いたくなかったんだけど……みんな!大規模魔法を撃つから詠唱が終わるまで時間稼ぎをお願い!メミニ、二重詠唱で威力を上げていくわよ!」


「はい!私もお手伝いします!」


 二人はそう言うと魔力を高め始める。


「任せてくれ!行くぞお前ら!」


「騎士団の意地を見せてやる!」


「俺達だって戦えるんだ!」


 ソルの号令に騎士団員達が再び虹獣に向かって行き次々と攻撃を仕掛ける。


「よし!俺もやるか!」


 俺は虹獣の前方に回り込むと、ナイフを構えて虹獣の身体を駆け上がる。そして跳躍して虹獣の頭部に何度もナイフを突き立てる。


「うおおお!!喰らえええ!!!」


 虹獣は身体中に猛攻を受け大きく身体を揺らした。


「ルーク!危ないから一旦そこから降りてくれ!」


 下から聞き慣れた声が聞こえてきて、何だかすごく嫌な予感がした俺は慌てて虹獣の頭から飛び降りた。


「ハッハッハ!ヒーローは遅れてやってくるのさ!食らえ!トビウオちゃん5号!」


 そう言って飛び出してきたアウェスが手に持った筒状の何かから虹獣に向けて砲弾を発射した。砲弾が虹獣の顔面に直撃し爆発を起こすと虹獣がよろめきながら後退る。


「今のは……!?」


「フッ、これは僕の開発した新発明さ!名付けて『トビウオちゃん5号』だ!持ち運び可能な大きさの大砲に魔石で推進力を得た小型爆弾が搭載されていて、着弾すると爆発する仕組みになっているのさ!」


 アウェスはそう言って得意げに笑った。


「なるほどな……でもそのネーミングセンスはどうにかならねえのか?」


 俺が呆れて言うとアウェスは心外そうに言った。


「何ぃ!?この素晴らしきネーミングセンスが理解できないとは……ルーク、君はまだまだ子供だね」


「うるせえ!それより今の攻撃で町長は怯んでるみたいだぞ!この隙に一気に畳みかけようぜ!」


 俺達は再び虹獣に攻撃を仕掛けた。しかし虹獣は体勢を立て直すと再び前進を始めた。


「クソッいくら何でもしぶと過ぎんだろ!」


 そしてついに港町サーフェスが目視できる位置まで来た頃、セレスティアが声を上げる。


「大規模魔法を撃つ準備ができたわ!周囲を巻き込む可能性があるからみんなは少し離れてて!」


「……分かった、皆距離を取ってくれ!」


 俺は騎士団と魔法使い達と共に急いで虹獣から離れる。それと同時にセレスティアとメミニが魔法を発動させた。


「「『メテオリティス!』」」


 その言葉と同時に空から轟音が響き火球がいくつも降ってくる。その火球は虹獣に次々に命中していき、流石の虹獣も体勢を崩しそのまま倒れ込んだ。


「やったぞ!」


「動きが止まった!」


 俺達は勝利を確信し勝鬨を上げたが虹獣は這いつくばったままズルズルと身体を引きずりそれでもなお進もうとする。


「どうして止まらないの……?何故そこまでして進もうとするの……」


 セレスティアは困惑した表情を浮かべる。その時だった。港街サーフェスの方から二人の人影が走り寄ってくる。


「おーい!セレスティア!」


「あれは……フェリックスと……誰?」


「お父さん!!」


 フェリックスの連れていた女性がそう叫びながら虹獣に駆け寄る。それを聞いて俺達は目を丸くした。


「え?あの人は町長の娘さんなのか……?どういう事だ……?」


 俺が呟くとフェリックスが答えた。


「町長がどうしてサーフェスに向かってるのか気になってさ。町長とサーフェスの関係を調べてみたら、町長の娘さんが少し前にサーフェスに本部がある貿易商会の総帥と結婚してサーフェスに移り住んでいたんだ。それで、もしかしたらって思ってサーフェスに行って娘さんを探して事情を説明して一緒に来てもらったんだ」


「そういう事だったのね……」


 セレスティアが納得したように呟いた。


「お父さん、私が急な結婚で街を出て離れて暮らすことになったから心配だったの?でも、大丈夫だよ。私ちゃんと幸せに暮らしてるから……だから、安心して」


 彼女はそう優しく語りかけた。その言葉を聞いた虹獣は大人しくなってそのまま動かなくなった。


「……死んだのか?」


 俺が呟くとソルが答えた。


「まだ息はある。眠っているだけのようだ」


「町長さん、ただ娘さんに会いたい一心でサーフェスに向かっていたんですね……」


 メミニが呟いた。


「結構大変だったんだぜ?瞬閃転移機使ったとはいえルーナ・プレーナで町の人達から聞き込みして、その後サーフェスに移動して今度は娘さん連れ出すため奔走してさ。いやー間に合って良かったぜ。お前ら俺に感謝しろよ〜?」


 フェリックスが得意げに胸を張る。


「うんうん、今回のMVPはフェリックスに譲るよ。トビウオちゃん5号もいざ実戦投入してみたらまだまだ改善点があるのが分かったしね!そうだ、帰ったらお祝いのパーティーしようよ!名付けて『英雄フェリックスを讃える会』なんてどう?」


「おっ、それいいねえ!酒をたんまり用意してくれよ」


「お前らなぁ……まあ、助かったけどさ……ん?」


 俺は呆れてフェリックスとアウェスのやり取りを見ていたが突然悪寒を感じて思わず振り返る。サーフェスの方からリズが走って来るのが見え俺は思わず小さく悲鳴を上げ身構えたが、リズはそんな俺を見て「ルークちゃん、撫でてあげたいのはやまやまだけど今は町長を診るのが先だから後でねぇ〜」と言ってそのまま虹獣の所へと向かう。いや別にいつもみたいに出会い頭に馬鹿力で抱きしめられなかったことに対してちょっと肩透かしだとか物足りない気持ちなんて感じていない、断じて。

 リズに続いて医療部も到着し全員で町長の全身をチェックしていく。


「体表と筋肉組織、顔面の骨の一部と内臓の一部に損傷は見られるけど命に別状は無いみたいだねぇ〜。医療部の皆が表面の傷はあらかた処置してくれたから、魔力が余ってる魔法使いは町長に回復魔法をかけてあげて〜」


 リズがそう言うと何人かの魔法使い達が魔法をかけた。虹獣は穏やかな寝息を立てて眠っているようだ。その様子を見て俺は安堵のため息を吐く。


「良かった……」


「あの……父はこれからどうなってしまうんでしょうか……」


 娘さんが不安そうに聞いてきた。


「ん〜……虹獣は魔女協会の監視対象にはなるけど、協会で保護した後もいつでも会えるようになってますし、虹獣が暮らす環境にも気を使っているので大丈夫、安心していいですよ〜」


 リズがそう答えると娘さんは安心したように微笑んだ。


「ありがとうございます……魔女協会の方々には本当に何とお礼を言ったらいいか……」


「いえいえ、我々は困っている人を助けるのが仕事ですから〜」


 リズは自信たっぷりに答えた。


「では、父のことは魔女協会の方々にお任せします。お父さん、これからは寂しくないように頻繁に会いに行くから待っててね」


 彼女はそう言って虹獣の頭をそっと撫で、改めて俺達に礼をするとサーフェスへと帰って行った。


「とはいえこの大きさだと流石に協会本部で保護するのは無理ね……リズ、どうしましょう?」


「んーそうだねぇ〜このまま町長さんが人を襲ったり町や村を踏み潰す心配がないなら本部じゃない場所にいてもらって定期的に様子を見に行くのでも大丈夫そうだけどぉ〜……肝心の場所が問題だねぇ〜」


 確かに今の町長は小高い山くらいの大きさがある。街中にいてもらうなんて到底不可能だし、かといって広い場所でも周囲に街道や町のある場所だと危ないかもしれない。


「騎士団の方達なら地理に詳しいですよね。どこか良い候補地はありませんか?」


 メミニがそう聞くと騎士団の騎士達は顔を見合わせ話し合う。


「ふむ、そうだな……この辺りならハエレーレの森か、あるいはスカラー渓谷辺りが良いと思うが……」


 ソルが候補地を挙げたときだった。虹獣が目を覚まし起き上がって「ガァッ!」と一声鳴くと元来た道を戻り始める。


「あ、ちょっと待って!」


 慌ててそれをセレスティアが引き留めようとするも虹獣は構わずに進んで行く。


「なあ、多分町長が向かってるのって……」


 俺がおずおずと言うとセレスティアは頷いた。


「おそらくもう街に突撃することはないと思うけど、一応まだ警戒しながら見守りましょう」

 俺達は町長の後を追った。


 ***


 日が暮れ始めた頃、ようやくルーナ・プレーナに辿り着いた町長はそのまま元いた山に登り、山頂に辿り着くとそのままドッシリと腰を下ろして座った。


「ふむ、あそこなら街からも離れているし監視もしやすいな」


 ソルが安堵したように言うとサクスムが街の人達と共にこちらに駆けてきた。


「おっ、団長も皆さんも無事でしたか。こっちも、まあ町長が道を逸れたんで当然なんですけど被害ゼロで済みました。お疲れ様っす!」


「町長は結局あそこに居座ることになったか。あのジジイに常時見下ろされてると思うと落ち着かないが……まあ仕方ねえな」


「本人は『町長としてこれからも街を見守り続けていく』などと意気込んでそうだがな。まったく、この調子だとまだまだ長生きしそうだ」


「しっかし町長の奴、『嫁を早くに亡くして男手一つで育てた娘がやっと嫁に行くんだ!寂しいはずがあるか!むしろせいせいするわ!』だなんて言ってたが結局会いに行きたくて仕方なかったんじゃねえか」


「全く変異しても手の掛かるジジイだな」


 街の人達は口々に町長の事を罵倒しながらもその表情は明るい。恐らく誰もが本心では町長のことを憎からず思っているのだろう。


「まあ、これで一件落着だな」


 ソルが言うと皆が頷いた。


「よっしゃあ!せっかくだから温泉浸かってから帰ろうぜ〜!」


「賛成ぇ〜」


「たまには息抜きもいいよね」


「魔力も空っぽだしずっと町長を追ってたのでもうクタクタです〜。皆さん元気ですねぇ……」


「じゃあ俺温泉一番乗り!」


「もう、そんな急がなくても温泉は逃げないわよ、ルーク」


 それからしばらくして、俺達はルーナ・プレーナで一晩を過ごした後、協会本部に帰ったのだった。


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