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誇り高きパンチラメイド

 日本橋オタロードの南端にそのメイドカフェ&バーはあった。

 当時、そこは三階建てのビルで、入り口は階段で登った二階、二階と三階を内階段でつないだ形で営業していた。

 そこに通い始めたのは、ちゃんとしたカクテルが飲めて、数ある高価なウィスキーが飲めるからだった。

 当時、二階のカウンター席は営業せず、三階でコーヒーと本格的なカクテルを売り物にして営業していたと記憶している。

 高くて珍しいウィスキーが飲めるのはありがたかった。が、そこの唯一の欠点は喫煙可能店だったことだ。

 我々、酒愛好家の天敵はタバコだ。

 一杯三千円のウィスキーを、ショットグラス片手にちびちびと味わっている時、横から一本百円もしない安タバコの臭いがして香りを台無しにされたときには殺意すら覚えたものだ。

 ちなみに、殺意を抱いたのは横で間違った酒の蘊蓄を得意げに語るバカ客がいたときとこの時だけだ。間違った蘊蓄に対しては、「バカラ」や「バカルディー」というカクテルを頼む、という対抗策があるのだが、煙に対しては悲しいかな何の対抗手段も取りえない。

 で、どうしても喫煙客がいない開店直後に入店し、一番高いウィスキーを頼むということになる。それも、隣りに煙をふかす客が来ないかとびくびくしつつ。今のように禁煙店が増えたのは、愛酒家にとっては夢のような話なのだ。

 さて、三階には広いテーブルがあった。

 モンハン(モンスーターハンター)が流行り始めた頃、お店がWi-Fiを導入した。すると、店の雰囲気ががらりとかわった。モンハン族が広いテーブルを占拠するようになったのだ。

 我々愛酒家は、十五分に一杯はアルコールを補給する。が、モンハン族は、コーヒー一杯で長時間ねばる。そして、終始無言だ。酒場のガチャガチャした雰囲気はなく、そこだけがゾンビの集まりのようだ。

 いきおい私も声をひそめて注文することになる。声を上げるのがいたたまれない雰囲気になったのだ。

 その後、店は改装して二階をメインの営業場所に変え、三階は土日くらいにしか使わなくなった。モンハン族も店を去って、落ち着いた――というかバーらしい雰囲気が戻って来た。


 さて、本題はその頃の話だ。

 二階から三階に行くにはちょっと急な階段をのぼらなくてはならない。

 そこのメイドさんはミニスカートだったので、案内される時、必然的にスカートの中身がちらりと見える。見えたとしても、普通は黒いドロワーズを履いているので、問題はない。

 けど、一人だけ頑として白パンで通している子がいたのだ。

 ある時、カウンターに立っているマスターにその話をした。

「ちょっとまずいんじゃないですかねえ」

 マスターは苦笑しつつこたえた。

「あの子、いくら注意しても、ドロワーズを履かないんですよ。信念があるらしくて」

「はあ。まあ、集客に結びついているのならそれでもいいんじゃないですか」

「ははは」


 話はこれだけである。

 その店はそののち堺筋沿いに営業場所を変えて今も続いている。ただ、高くて珍しいウィスキーは姿を消して昔のような贅沢な飲み方はできなくなってしまった。

 あのパンチラメイドさんは誰だったのだろう。チェキのない店なので、もはや記憶の霞の彼方である。

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