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逆祀り

 そのメイド喫茶は老舗だったが何回かオーナーがかわっていて、私は現在のオーナーO氏とは知り合いだった。

 O氏はメイド喫茶の改革に熱い情熱を抱いていて、プロのシェフを入れて料理を名物にしたしっかりとした店を作ろうとしていた。私もその思想には大いに感銘を受けたものだ。

 けど、おそらくは家賃と人件費に敗れたのだろう、シェフは去り、開店時間はずさんになり、だんだんとダメな店になっていった。それとともに私の足も遠のいていった。

 そんなある日、昔なじみのメイドさんと道でばったりと出くわした。

「最近、さっぱりお客さんが来ないんですよ。ちょっと寄って、アドバイスしてもらえませんか」

「う、うん」

 営業の一環だろうとは思ったが、久しぶりにその店に行ってみたいという気もあって快くOKした。

 エレベーターを降りると、本当にどんよりとした気が満ちていた。

 内心びくつきつつお店に入る。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 メイドたちも心なしか生きが悪い。最盛期を知っている私も、その過疎ぶりには驚かされざるを得なかった。

「何か、わかりました?」

 何となくイヤな気配がする。そちらを見ると原因はすぐにわかった。冷蔵庫の上に段ボールで作ったおもちゃのような神棚が置かれていたのだ。

 しかも祀り方がよくなかった。

 鳥居の前にご神体に見立てた熊のぬいぐるみが置かれている。

「こりゃあかんわ。逆祀(さかまつ)りになっている」

 ぬいぐるみの奥に、沼のように運気を吸い取る気配がしている。

「あの神棚は誰が作ったの。すぐに撤去しなさい」

「えっ?」

 メイドさんは心底驚いたようだった。そして、小声で言った。

「あれ、私たちじゃ撤去出来ないんです。オーナーが設置していったので。私たち、毎日開店前に柏手を打って商売繁盛を祈願しているんですよ」

「そもそも冷蔵庫の上に載せるというのはよくないし、鳥居の配置もおかしい。全くの空虚を拝んでいるようなものだ。あそこに変なモノノケがとりついていてもおかしくはない。オーナーに言ってすぐに撤去してもらいなさい」

「はあ……」

 メイドさんはいぶかしげだった。

 その後、その店に行くことはあまりなかったのだが、偽りの神棚はいつの間にかなくなっていた。


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