無人のメイド喫茶
大阪・日本橋で経験した実話です。
あれはメイド喫茶ブームが頂点だった頃のこと。
私は休日に新しいメイド喫茶を探して大阪は日本橋をうろついていた。
とあるビルに新しい看板を見つけたので、エレベーターで上がってみた。
そこはワンフロア一店舗で、エレベーターを降りると数歩先にはお店の入り口がある。
入り口は開け放たれ、営業中の札がかかっていた。
清潔感のある、社員食堂のような感じの店だった。
入り口から先に進むと、右側が厨房になっていて、目隠しののれんがかかっていた。
ちらりとのぞくと、パスタを茹でるためなのだろう、大きなズンドウが湯気をあげていた。
休日のご飯時にしては珍しいことに他に客はおらず、メイドの姿もなかった。
「すいませーん」
私は声をかけつつ奥にすすんだ。
いくつかテーブル席があり、メニュー、紙ナプキン、砂糖壺などのセッティングはすんでいた。
私は席を選ぶとメニューを開き、注文を決めた。
テーブルの上の鈴を振る。
奥から寝ぼけた誰かが出てくるようなこともなかった。
……まさか、メイドさんが倒れている?
私は再度厨房をのぞきに行ったが、誰かが床に倒れているというようなこともなかった。
……コンロもつけっぱなしだったし、店の人は、ちょっと買い物にでも行っているんだろうな。
私は十五分ほど席でぼーっとしていた。
そして、別の店を探すためにそこを後にした。
後日、そのメイド喫茶へ行ってみると、閉店した旨の告知がドアに貼られていた。