02【冒険者】
僕はギルドがある町へ続く道を一人で歩いていた。
日差しが気持ち良くなんだかピクニックに来ているような気持ちだ。
歩いていると森の方で何かが動いた気配がした。
「ん? 今何か居たような……」
森の方に何かが見える。
動物? いや、何かが違う。
そもそもここが日本もとい、僕の住んでいた世界じゃないのはなんとなく分かる。
何かが居る森をジーッと見ているとそこから出て来たのは巨大な鹿だ。
図鑑で見たヘラジカに似ている。
しかし僕の知っている鹿は頭に大きな角が2本あるだけだがあの鹿は鼻の頭にも大きく鋭利な1本の角がある。
「なんか嫌な予感がするんだけど……」
そう思ったのも束の間、その鹿は僕を見つけるとこちらに向かって走って来た。
危険を感じた僕は町へ急いで走った。
「ちょっ! なんでこっちに来るの!?」
慣れないこの身体で走るが胸が揺れて上手く走れない。
そうこうしているうちに僕と鹿の距離はどんどん縮まっていく。
やばい。流石に体力の限界だ。
鹿は速度を落とすことなく真っ直ぐこっちに向かってくる。
もうダメだと思った瞬間、どこからか飛んできた矢が鹿の足に刺さった。
“ギャォーーーッ!!”
鹿は聞いたことのないような悲鳴を上げ、その勢いのまま転倒し辺りは砂煙が立ちこめた。
すると次々矢が飛んできてそれらが鹿の体や足に当たっていく。
そして一本も外すことなく十本くらいの矢が刺さった。
鹿は足をやられ上手く立ち上がれなくなっている。
「あなた大丈夫? 危ないところだったわね。もう大丈夫よ」
振り向くとそこには大きな弓を持った少女が立っていた。
その姿はまるでRPGに登場しそうな姿だ。
「あの――……」
「ちょっと待って。今、止を刺すから」
そう言って少女は力いっぱい弓を引き矢を放った。それが鹿の眉間に当たると同時に鹿は弾けるように消えた。
その場には刺さっていた矢だけが散らばった。
「え? 鹿はどこへ消えたの?」
「どこって魔素に還ったのよ。魔物なら当然でしょ? そもそもあなたこんな所で何しているの? 見た感じ武器を持って無さそうだけど」
「あの、えっと……町のギルトって場所に行こうとしていて」
「それならちょうど私も行くところだから一緒に行きましょ」
「あ、うん。えっと――」
「自己紹介がまだだったね。私はレイサ・マクダウェルよ。レイサで良いわ」
「僕は神泉渚。渚で――」
自己紹介をしているとレイサは突然僕の胸を触って来た。
擽ったいような電気が走ったような感覚が身体を通り抜けた。
「ひゃっ!? いきなり何!?」
「いや、僕って言うから男の子かと思ったのよ。でもその胸は本物みたいね」
「当たり前だよ……」
「あはは、そうよね。ごめんなさいね。それじゃ改めてよろしくね、ナギサ」
「よろしくレイサ」
僕はレイサと一緒に町へ向かった。
取り敢えず分かったことはここが僕の住んでいた世界ではなく異世界と言う事。
僕の身体は確実に女の子になっている事。
この世界には“魔物”と呼ばれる動物とは違う生き物が居る事。
そして冒険者になることで魔物を狩りそれに見合った報酬が手に入るらしい。
読んでいただきありがとうございます
最近涼しくなってきたと思ったらまだまだ暑いですね
早々のブックマーク感謝です
次回もお楽しみに