12【目標】
エルフのフィオナさんと魔法の練習をした日の午後。僕は家に帰る準備をしていた。
もう少し居たかったが帰らないとレイサたちが帰ってきてしまう。
ここの事は内緒だからバレないようにしないと。
「このまままっすぐ行けば町が見えるから」
「フィオナさん。色々お世話になりました」
「また時間があるときにおいで。もちろん独りでね」
「はいっ! それじゃ―――っ!?」
家を出ようとした時、何か嫌な予感がした。
重く苦しい感じ。これは魔物の気配だ。
フィオナさんもそのことに気付き僕と一緒に家を飛び出した。
「フィオナさんこの気配って……」
「魔物ね。しかも相当強い魔力を持っているわ」
「でも結界があるからここには来ないですよね?」
「そのはずなんだけど……」
魔力の反応がある方を見て見ると森の奥から何かがこっちに向かって歩いて来ている。
近づくにつれその正体が見えて来た。
「あれってもしかして」
「えぇ、ゴーレムね。しかもそこら辺のゴーレムより倍以上あるわ」
ゴーレムの高さは10メートル以上ある。
僕は杖を出し構えた。
この家は結界で見えないはずなのにゴーレムは明らかにこの家に向かっているように見える。
「このままだと結界を破って家にぶつかるわね……ナギサ、あのゴーレム止めるわよ」
フィオナさんはゴーレムに向かい手を翳すとそこから水玉が現れた。これが水属性の魔法みたいだ。
現れた水は勢いよく放たれゴーレムの脚に当たった。
脚の一部は砕け少しよろけたがすぐに石片が集まりだし砕けた部分が再生されていく。
フィオナさんは何度も水魔法を放つがその都度ゴーレムは再生していく。
僕も応戦しようと雷を出したがゴーレムの身体は無傷だ。
このままだと僕たちの魔力が無くなってしまう。
「あのゴーレム再生速度が異常ね。こうなったら一気に砕くしかないわね」
フィオナさんは風属性の魔法を使い始めた。
鋭い風の刃がゴーレムを刻んでいくが硬すぎて効果が無さそうだ。
するとゴーレムは僕に向かい手の平から巨大な岩を飛ばしてきた。
「ナギサ、危ない!」
フィオナさんは強力な防御魔法を使い大きな魔法障壁を何十にも重ねて展開し岩を防いだ。
だが岩の威力が強く魔法障壁が砕けてしまった。
その瞬間、ゴーレムはその巨大な手でフィオナさんの身体を掴んだ。
「きゃっ!!」
「フィオナさん!」
ゴーレムに身体を握られたフィオナさんは腕を出すことが出来ず魔法が使えなくなってしまった。
僕は精一杯の雷をゴーレムの手に放つがまるで歯が立たない。
その間にもフィオナさんは苦しんでいる。
こんな森の奥深くに助けなんて来るはずがない。
どうしたら良いんだ……。
頭が痛い。鼓動が早くなっていく。苦しい……。
「誰か……助けて……」
目を瞑り願うとどこからか「俺の魔力を分けてやろう」と声が聞こえた。
この声は聞いたことある。僕は咄嗟に目を開けるとそこはあの何もない空間で目の前にはローブの男が立っていた。
「っ!? 魔力を分けてくれるんですか?」
「君の身体が俺の魔力に耐えられるのならの話しだが。どうする?」
その質問に対して僕は迷うことなく答えた。
僕はどうなってもいい。今はフィオナさんを助けたい気持ちでいっぱいだ。
「貰います! フィオナさんを助けたいんです」
「そうか。それなら君にこれを渡そう」
ローブの男は身の丈程の杖を取り出すと僕に渡してきた。
その杖はこの世界に来る前に見た杖と同じだ。先端に付いている青い宝石が輝いている。
「これを僕に……?」
「君なら師匠を助けるとが出来る」
「師匠? それって―――」
気が付くと僕は元の場所に居た。
辺りにはローブの男は居ないが僕は受け取った杖を持っていた。
杖からは凄い量の魔力が身体に流れ込み力が漲って来る。
不思議と今ならあのゴーレムを助けることが出来るかもしれない。
「フィオナさん! 今助けます!」
僕は杖をゴーレムに向けた。
頭の中に色々な魔法が過ぎった。雷属性の魔法以外にも何か出せそうな気がする。
まずはフィオナさんを助けるため僕はゴーレムの腕に風属性の魔法を放った。
風の刃はゴーレムの腕をまるで野菜を切るかのように綺麗に切り落した。
フィオナさんを風の魔法で受け止め地面に降ろすとすぐに周りに防御障壁を張り、回復魔法を使った。
意識があり無事みたいだ。
「ナギサ、ありが……っ!? その杖――」
「後は僕がやります……」
不思議と今なら何でもできる気がする。
杖に魔力を流し正面に翳すとゴーレムの足元に巨大な魔法陣が現れた。
「これで終わりだよ」
杖を振り上げると一瞬にしてゴーレムが氷漬けになった。
その魔法は本来あるはずのない氷属性だ。
凍ったゴーレムに亀裂が入り音を立てて崩れゴーレムは跡形もなく消えた。
「た、倒した……? よかったぁ……」
急に力が抜け僕はその場に座り込んだ。
慣れない魔法に身体が追い付いていないみたいだ。
それを見たフィオナさんは覚束ない足取りで僕の所まで来てくれた。
「ナギサ、大丈夫?」
「はい、フィオナさんも無事でよかったです」
「無茶はダメよ。それにその杖は……」
「ローブの男から貰ったんです。それにフィオナさんの事を師匠って言っていましたよ?」
「やっぱりあの人なのね。私の唯一の弟子であった人間。名前はハルト。確か出身地はキューシューって言っていたかな? 聞いたことない街の名前だったから」
「ハルト……キューシュー」
やっぱりだ。ローブの男もといハルトさんに出会ったときから何か違和感があったがハルトさんは日本人だ。キューシューとはたぶん九州地方の事だろう。
「ナギサは何か知っているの?」
「いえ、なんでもないです。あっ、でも資料には何百年も前に生きていたって……」
「そうね……ナギサこっちに来て」
フィオナさんについて行くとちょうど家の反対側には岩を削って作った小さなお墓があった。
墓にはまだ新しい白い花が添えられていた。
「これってもしかして……」
「ハルトはこの世界を護るため魔物の王を倒したときに一緒に消滅してしまったのよ。でも消える直前に私に俺を超える魔導師が現れるからよろしくって言っていたのを思い出してね。それがナギサなのね」
「僕がハルトさんを超える魔導師……」
「私でも倒せなかったあのゴーレムを倒したからナギサはとっくにハルトも私も超えているわ」
「ハルトさんの代わりにこの世界を護らせて下さい。いえ、護ってみせます!」
フィオナさんは一瞬驚いた顔をしたがニコリとほほ笑み「よろしくね」と言った。
そうは言ったもののこれから忙しい日々が始まりそうだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




