妄想入院
妄想入院
何年か前に花粉症に一度だけなりました。
その次の年からは平気になりました。
今年はなぜか、目が痒く、鼻水も、二股蛇口の水のように、ジャージャー出ます。
産婆さんで産湯を使い、これまで入院なんて一度も無かっただけに、健康な体には感謝、なんですけれども。
ふと、治る病気前提で、入ってみたい。
入院なんてするもんじゃないよ、三日もいたら飽きるよ、と言うことなかれ。
入院したら、見目麗しい看護士さんが、担当につく。
まるで全身、漂白剤に浸かったような真っ白けで、病室の窓側に立つと、日に照らされて、赤い血潮が透けて見えるよう。
「僕らはみんな生きている♪」つい、口ずさむ。
やがて僕らは、恋に堕ちる。
「田中さん、いけません。患者さんとは恋愛禁止なんです」
「僕の気持ちが受け入れてもらえないなら、この窓から、飛び降りますっ」
すると彼女は観念したように、言うのです。
「田中さん、ここは、一階です」
「2016年5月5日」




