俺は痴漢じゃないし、女装癖も無い(2)
「どこだ、ここは…」
いつも電車から見ている風景と違う……違う駅か?
と思って駅の方を後ろを振り返ったら駅が無くなっていた。
「えっ駅が無くなっている?」
俺は何か恐ろしいものを見たかのように固まっていた。
そうしていると、俺の手を掴んだまま女子高生が大声で叫び出した。
「カルミラ様、シムール王女をお連れしました、門を開けてください」
はぁ?ちょっと待てよ…
「(シムール王女をお連れしました?)って誰のことだ?」
しかし考えている暇は無かった、女性の大きな声が響く。
「ご苦労だった、ガルミナ殿」
その声と共に、ゴゴゴゴゴ~ッと何かが開く音がする。
音のする方向を見ると、何と空間が歪んでいた……
歪んだ空間の隙間からお城のようなものが姿を現してきた。
(そんな馬鹿な……これは夢か、そうだ悪夢……悪魔の城にでも連れて来られたという悪夢なんだ……)
そう言えば女子高生の手であるにかかわらず振りほどいて逃げることも出来なかった……
この子は女子高生なんかじゃないのかも……恐怖で震え始めていた。
手を掴んだままでニコニコした女子高生が話しかけてきた。
「久しぶりのお家ですね、嬉しいですかシムール王女様」
すると女子高生仲間だろうと思っていた女子が、手を掴んでいる女子高生に話しかけてきた。
「いいなガルミナ君は、俺ももう少し気を付けていれば見つけられたんだけどな……」
(おかしい、何かがおかしい、俺とかガルミナ君とか、女子高生の日本語は乱れている……)
「羨ましいだろう、だが譲らんからな、シムール王女様に求婚できる優先権1番は誰にも譲らん」
女子高生は俺の方を向いてにこやかに話しかけてきた。
「王女も今回の功績と俺の気持ちを受け入れて頂きましてですね、お相手に俺を選んでいただきますようお願い申し上げます」
だめだ、頭が割れるように痛いし恐怖心が膨らんできた……今の状況を理解が出来ない……
(一体何が起こっているんだ?、そうだ夢だ、夢の世界に違いない)
そう確信した俺はほっぺを叩いたり、ひっぱたりしたが目が覚めなかった、というか現実だと思い知らされた。
「何をしているのですか、王女様、早くお城に戻りましょう……
さっさとお着替えしないと人間の恰好のままですよ」
もう何が何だか分からない状況で、大勢の女子高生か揶揄われているような錯覚に陥った。
そして恥ずかしながら少し涙が出てしまったようだった。
はずみで涙声で叫んだ。
「俺は人間だ、それも男だ、王女では無い!!」
その様子を見て女子高生たちは集まって来た。
「涙なんか浮かべて、かわいらしいわ王女様、そこが堪らないところだわ…」
「「「え~っ、見せて見せて・・・」」」
「「うわ~っ本当だ・・・・か~わいい!!」」
「やめてくれ!!」
俺は必死にその場から逃げ出そうとした。
「何処に行くのですか、王女様、今度は逃がしません」
見ると俺と同じくらいの女性が立っていた。
「誰?」
「このカルミラをお忘れですか?」
「まぁあれから40年も経ちますし、その格好から見ても色々有ったのでしょうが・・・
今度は逃がしませんからね、ともかくお城に戻って頂きますから」
そう言い終わるや否やカルミラという女性は俺の片手をもって物凄い力で引っ張っていた。
「ちょ・・・ちょっと、ちょっと、待ってくれ・・・・」
俺の言葉なんか誰も聞いていなかった。