俺の国?女王になるとき(4)
やるせない気持ちにガルミナの胸に顔を埋め、最近の行動を後悔していた。
「俺は本当にバカなんだろうな」
何も知らずバースレイとかいう奴を倒した、その結果目立ってしまった。
もっとも異世界の人間だから、遅かれ早かれ目立っただろう。
だが現状目立つのはまずいだろう、だってこの世界のことを何も知らず、なんの対応策もないまま俺は目立ってしまった。
そう現状は逃げる方法も自分を守る方法もない。
話を聞けば国家を相手にするのだ、それも八つの国家がひとつになった国だ。
戦争という恐ろしい言葉が浮かんだ。
多分相手の軍事力は同じ八か国を相手に出来る想像を絶するものだろう。
それに引き換え、俺には国すら今はないのだ、ましてや軍事力などと呼べるものは何もない。
「俺には何も無いんだ!!」
そう呟くと、ガルミナは俺を抱く腕に優しく力を入れた。
「大丈夫です、王女様、私の持つ者を全て捧げましょう」
やさしく俺に呟きかける。
ガルミナの弟の国に頼めば元素とかの能力があれば八か国同盟に入れてくれるだろう。
そうだ八か国と連合できれば、こちらは九か国となり相手より優勢になれるはずだ。
だが単純な算数で済むはずがない、今の俺は元素とは無縁なのだ。
相手は八か国分の軍隊を持っているんだ、元素の無い国など連合してもひとつの国であるとは認識されず、結果均衡を崩すほどの優勢にはならないだろう。
現実を見れば、今の俺の戦力と言って良いのは、ガルミナとカルミラだけだな。
自然と溢れる涙と言葉……
「俺はバカだ、バカなんだ、そして俺には何もないんだ、ガルミナとカルミラだけが今の俺の支えなんだ」
「「王女様」」
二人はそう言葉を掛け、俺は二人の優しいまなざしを感じた。
強く抱きしめ合うガルミナと俺。
ガルミナの優しい顔を見ると、いっぱい弱音を吐きそうになる。
ダメだ、この二人を……、俺が弱音を吐いてどうする……
弱音が吐けないように、自分の口をガルミナの口で塞いだ。
その時、男同士とかいう言い訳は必要無かった。
俺は素直にガルミナの優しさを感じ取っていた。
弱音を吐いてはダメだ、そうだ何か考え、行動を起こさなければならない。
そうしなければ、あの時のように、この二人にも危害が及ぶだろう。
「すまない、ガルミナ」
そう言うと俺は離れた。
結局二人は落ち着くまで俺を見守ってくれていた、この二人を守らねば。
決意などでは無いだろう、無茶だと自分でも思う、でも……
「泣いている暇は無いな、泣き虫では国は創れないからね」
「王女様」
カルミラが感極まったのか口を押え、涙を見せた。
「ガルミナ、カルミラ、俺たちの国を創ろう
会わなければならない人たちに会うとしよう、そして協力を要請するよ」
「二人とも国を創るのを手伝ってくれ。
お願いだ、二人が必要なんだ」
俺は二人に頭を下げお願いした。
「「大丈夫ですよ王女様、私達はあなたと共に進みます」」
俺の全く知らない国『セグリエ』、その国を復活させる。
本当は、そんなことが出来るとも思ってはいなかった。
でも、この二人と一緒なら頑張れそうな、そんな気になった。
◆ ◆
最初に会うのはガルミナの弟であるガラミナ王。
第一印象はガルミナの深いブルーの瞳より薄い感じのスカイブルーのさわやかな瞳の少年?に見える王だった、もちろんガルミナに似ていた、そうガルミナを若くした感じだな。
この世界の正式な挨拶など知らないから、ガラミナ王には悪いが軽く会釈する挨拶をした。
「お久しぶりです王女様、相変わらずお奇麗ですね」
明らかにお世辞だと思うのだが?
もしかすると今は、俺は女に見えるのかもしれない。
さっき王に会うので鏡を見ていたのだが、女性ホルモンを打たれてから体や顔はふっくらとしていた。
そして髪はこの一週間で長く伸びており、顔はより女性的になって胸もAカップだが着ている衣装のためか存在感を示していた。
恐ろしいことに女装おじさんからニューハーフに近くなっていた。
「お久しぶり……ガラミナ王」
一瞬ガルミナと言いそうになる、全く紛らわしい名前だな、この姉弟の親は……
しかし、これ以上何も言葉が出ない。
ガラミナ王は俺の顔をマジマジ見ていた。
「はい、姉兄と一緒にカリンドの丘へ遊びに行って以来ですね。
私にも『セグリエ』とアクアの元素の力をこの世界に取り戻すお手伝いをさせてください」
ガラミナ王はガルミナに似て優しい男なのだろう、決してずけずけモノを言うこともなくこっちのペースに合わせて言葉を発していた。
傍に国の第一魔導士クラーキスが付いて来ていたがクラーキスはカルミラを見ると言葉を交わしていた、聞くとは無しに聞いていた。
「カルミラ様、本当に王女様を連れ戻す大魔法を成功させるとは、このクラーキスは本当に驚きましたぞ」
「いえ、クラーキス様のご助力とガルミナの強い気持ちによる奇跡だと思います、私など大したことをしていません」
「何を仰いますか寿命を縮める魔法を使うなど、カルミラ様はガルミナ様やその思い人の王女様のことが本当に大事だったのでしょうな、その思いが魔法を成功させたのですじゃ」
クラーキスはカルミラの方を真剣に見ると少し小声で囁きかけた、
「カルミラ様、報告に会った、王女様がお使いになった『力』と言うのは本当ですか?」
「ええ、報告した通りです」
クラーキスは俺の方をマジマジと見ていた。
「やはり元素の力は感じませんな、淫魔法が溢れたという話ですが、紫というのも過去の記録にはありませんぞ」
「やはりそうですか、私も聞いたことが無かったので…」
「私めが思いますにVOIDの力では無いかと思われますぞ」
「「VOID」」
二人だけの会話のはずがそこに居たみんなが反応し一斉に言葉に出した。