俺の国?女王になるとき(3)
「王女様が生きていたことが分かると、世界であなたの国『セグリエ』の復活を待ち望む声が増えてきているのです」
「何のことか分からないよ」
「あなたはこの世界の国同士のバランスを壊すもの、もしくは国のバランスを保つ者です、あなた次第で世界の行く末が決まります」
「この世界のバランス?それは何のこと?、俺と関係があるの?」
「この世界は二十の魔法元素で加護された魔法国で出来ております。
その二十の元素とは五つの主元素とそれに従属する十五の眷属元素により構成されています。
その各国は元素覇気を王が纏うことで国が存続しています」
カルミラは俺の顔を真っすぐに見ていた。
「でもそんな世界で主元素の一つであるソイルの元素覇気を纏うバトリア国王が禁忌を冒したのです。禁忌、それは一人の国王がエレメントオーラを複数纏うこと。彼は近隣国のゴルデル王国を侵略し王を亡き者にしそのエレメントオーラを盗んだのです」
「そんなことが出来るのか、だったら王女が禁忌を冒さないで、ガルミナが禁忌を冒して王女の国のエレメント・オーラを盗めばよかったんじゃないのか?」
「禁忌を冒してまともではいられません、バトリア国王は大トカゲの姿になりました。
本人はその姿が気に入っているみたいですがね。
そしてエレメント・オーラを2つ取得した当初、王は人の意識も無くなり、国内で殺戮を繰り返したようです」
「主元素覇気って恐ろしい物なんだな……」
「それほどの力があるということです。
その後彼は、手に入れやすい主元素の眷属元素を持つ国を、次々と支配し元素を取得しました、その度に人の思考に戻ることが出来たのです」
「凄いな、その王は世界の2/5は彼の手に入ったと言うことだな、眷属元素をもつ王は主元素には抵抗できなかった可能性が高いな」
「主元素の力を使えば眷属元素は効力を失います。周りの、私や王女様の国は協力して阻止しようとするのですが、眷属元素の全ての国は彼に征服されました」
「結果的に2つの主元素覇気と6つの眷属エレメント・オーラを取得したのです。
もっともバトリア国王は、それとは引き換えに眷属オーラの力で人の姿から、15mを超える獣人、いや怪物になっています」
「15mとか怪獣だな……その状況で人の意思があることと王だということが驚きだな。
そんなになっても強くなりたいのか……」
「20年前2つの主元素覇気とその眷属6つの8元素覇気を揃えたバトリア国王はこの世界を征服するためにアクアの主元素覇気を狙い始めました、そう王の後継者がいないことが最も大きな要因でした」
「もしバトリア国王にアクアの主元素覇気を奪われると眷属も含め12もの元素を揃えることになり世界のバランスが完全にバトリア国に傾きます、そうなれば世界は征服されることになります。だから我々は必死に戦いました、でも王女様の国は滅ぼされました」
「俺の両親を殺したのはバトリア国王との戦争だったのか?」
「その通りです、あなたのお父様が消え去る時、いつもの様にバトリア国王がアクアの主元素覇気を奪おうとしたのですが、貴方のお父様が亡くなると不思議なことに王の元素覇気が何処にも属さず消え去ったのです。それだけではありません眷属の元素覇気を持つ王の元素覇気も同時に消え去ったのです」
「元素覇気が消え去った、世界から無くなったと言うこと?」
「分かりません、でも自然現象ではアクアの元素の力は使われていますから無くなったのではなく隠れているという意見の方が多いのです」
「現在この世界には4大元素とその眷属を合わせた十六の元素の覇気しかしかないのです。
その上その半分をバトリア国王が、それ以外を8つの国で持っている均衡状態になったのです。
結果的に王女様の国はバトリア国王が半分を強制的に占領していったのです」
考えて見たら前の世界では元素という概念自体が無かったのだ、つまり彼らのいう力とは俺の知らないものだ。
そうだ、彼らのいう世界のバランスも俺の力では保てないのだ。
「悪いな、俺には世界のバランスを保つことは出来ない、だってそうだろう元素とは無縁なんだぜ」
「貴方がバースレイを倒したことが各国に伝わっているのよ、誰もが貴方に期待しているわ」
「そんな期待に応えることは出来ないよ、俺には無理だよ、怪獣退治は俺の役目じゃないだろ、怖いよそんなの」
そんなことは勝手だと思う、俺には関係ないじゃないか?
まだ王女の目的が男になって元素覇気を継ぐことだという方が分かりやすいじゃないか。
いきなり15mの怪獣相手に戦うのか?
スーパーヒーローじゃないんだぞ?
踏み潰されて終わりだな……
「助けてくれよ、ガルミナ」
なぜか俺はガルミナに助けを求めた。
「王女様、私でよろしければ幾らでもお助け致します」
思った通りの答えだ、でも期待通りではない。
俺が怪獣退治?
それも7つの国と俺?の国を滅ぼした相手と戦う?
そんなこと、俺だけに期待するのは止めてくれ。
なぜ、俺がそんな大それたことをしないといけないんだ。
体が震える……
俯いているとガルミナが抱擁してきた。
「えっ」
「王女様、私は命を懸けてあなたを守ります」
不安の中、安心感が広がる。
俺はガルミナにしがみ付いて彼の胸に顔を埋めた。