俺の国?女王になるとき(2)
「そんなに話を進めても、大体、俺は政治家じゃないんだぞ、国なんか治められない」
今の姿の中で胸を強調するように手ぶりを加え大袈裟に表現する。
「おほほほほ、私が王女に見えますの?どっこい俺は男なんだぜ、誰かと間違えているんじゃないのか?」
「貴方は王女様です、それ以下でもそれ以上でもありません、たとえ男だとしても王女様です」
馬鹿な質問だった。
ガルミナにとっては王女だろうな、そうだろうな、俺はそれ以外の何になると言い張れるんだろう?
元々ガルミナと王女は深く愛し合っていたんだろうと思われる。
そしてガルミナは王子だった、そして王女つまり元の俺は王子の妃になる予定だった。
だが何かが起こったので、王女である元の俺は女を捨てたらしい。
俺のいない間ガルミナは俺の領地を守るために王にはならず侯爵となった。
今の俺は、王女の成れの果て、でも残滓が溢れているのでみんな王女だと言うが、本当は異世界の普通の男だよ。
再会したガルミナは、別れる時に言ったことを守るように、たとえ男の俺であっても王女を愛し続けていた。
そして、ガルミナはなんと守っていた領地を俺に返すと言いだした上、侯爵も捨てて俺の国の一国民になるという。
つまり、俺は女王様でガルミナは一般人になる…
男の俺が女王でガルミナは一般人……
それなら、俺が女王でガルミナは一般人などに出来ないから俺の婿にして王にすべきでは無いか?
そうか、そうすれば元通りだ……
いや、俺は馬鹿だろうか?
俺は男だよ…それで良いのか俺?
大丈夫だ今は胸も大きくなっているぞ
違うぞ俺……そういう問題では無いだろう。
でも、ハッキリ言ってガルミナほどの男なら、好きだと言われて悪い気持ちはしないだろう。
そう言う意味ではガルミナは嫌いじゃないよ……
でも男同士だろ……
悪いな、やっぱり今はこれしか言えない……、
「ごめんやっぱり、俺には意味が分からないよ」
それは前世界の常識を盾にした苦しい言い訳だった。
◆ ◆
少しするとカルミラがやって来た。
「王女様、なぜ勝手に部屋を出るのですか、みなさまがお待ちでございますよ。いくらガルミナ様が愛おしいとしても後にして頂かなければなりません。ガルミナの弟ガラミナ、すいません今は王でした、ガラミナ王も来ますので国を収める者に相応しい対応をお願い申し上げます。」
「ちょっと待て今、国を収める者とか言ったよね?言ったぞ、聞いていたぞ。なんだよそれは、勝手に話を進めるんじゃないよ」
困った、いろいろ話が進み過ぎだ、もっとバースレイが襲撃してきた理由とか教えてくれよ。
しかし本当に紛らわしい名前だなこの3姉弟、親は何を考えて居たんだろう。
そこにガルミナが割って入った。
「まだガラミナ王に会ってなかったのか、領地を分けるにはガラミナ王の承諾が必要だからな、ぜひ最初に弟のガラミナ王に会ってくれ」
「いや、だから俺の国なんか要らないって……」
「「貴方の国が今この世界に必要なんです」」
ガルミナとカルミラ、二人の声が揃った。
「なんで、俺の国なんか必要なんだ……」
「俺が何かしでかしたのか?」
「王女様は世界に新しい国を作り上げ成し遂げることが有ります。」
「何のことか分からないよ」
カルミラが真剣な顔になった。
「今回のバースレイの襲撃で、最早隠すことが出来なくなりました。王女様貴方はこの世界の国同士のバランスを壊すものなのです。」
少しの間が空き、やがてカルミラの口から驚きの言葉が出た。
「貴方次第で世界の行く末が決まります」