俺は痴漢じゃないし、女装癖も無い(1)
男も30超えると体力も落ちてくる、このままではいけないと思いながらも何もできなかった。
そして気付くと34歳になっていた。
まだ彼女も居ない俺は結婚の予定も無かった。
そして、満員電車に揺られて会社に行く。
最近では加齢臭でもするのか?、女子高生達もなんか避けているような感じだ……
それはそれで良いことだ、一番怖いのが痴漢に間違われること。
先日見た光景、女の子が大きな声で「この人痴漢です」と叫んでいた、隣の男は必死で言い訳していたが電車の中だから全ての人の目がその男に集中した。
多分それは全てを失うことに直結していただろう。
そんなことをやっていないのに、手や体が振れることもある。
もしその瞬間に「何やっているんですか」とか言われるとどうするだろう?
「やっていない」
と言い切ることで凌げるだろうか、そうは思えない。
そんなことを考えながら今日も満員電車に、なるべく手を上の方において、電車に立って乗っていた。
さっきから女子高生が突き刺さる様な視線でこちらを睨んでいた。
(俺は関係ない、知らんぞ、何もしていないぞ)
そう思いながらも心配していた、急に叫んだりしないだろうな……
何もしていないのに犯罪者になった気分だった。
次の駅に着いたら一度降りよう、そう決意した。
決めていたので即時実行だ。
次の駅に着き直ぐに降りた。
そのまま隣の車両に移ろうとした時、手をいきなり掴まれた。
手を掴んだのはさっきの女子高生だった。
「何をしているんですか」
「何にもしてないよ……」
少しうろたえる。
「来てください……」
その子は俺の手を引っ張って階段を降りようとする。
いけない駅員室に連れて行かれたら人生終わる。
なぜかそんな時に母親と父親の顔が浮かんできた……
「俺が何をした、何にもしていない!!、放せよ、何するんだ」
怒鳴るように言った。
その子は逆に起こったような顔になって。
「何もしていない?
よくそんなことが言えますね……
良いからいらっしゃい!!」
その声と周りの白い目に怖気づいてしまった。
「いや、だから、何をしたと……」
だめだ、完全に飲まれている……
階段を降りると女子高生の仲間だろうか数名が取り囲んできた。
「やった、佳子凄いわ、ついに見つけたのね……」
「ついに年貢の収め時ね、引き連れていけ!!」
「本当だ間違いないわ、良く見つけたわね」
その子達も勝手なこと言っていた。
「俺はやっていない……人違いだ!!」
無駄だろうが、そう反論した。
「「「今更、そんなこと聞きませんよ」、「いい加減に諦めなさい、もう逃げられないから」」」
彼女達の言葉を聞いて絶望感が広がった……
階段を下りて少し進むと、なぜか外に出た?
警察に連れて行かれる……
再び父と母の顔が浮かんできた。
しかし確かに咄嗟に降りた、いつも降りている駅ではないのだが?
それ以上に全く知らない場所だった。
「どこだ、ここ?」