手紙
君と出会ってちょうど半年、オレは愛しの人に告白された。いきなりのことで心臓が止まるかと思ったが、無事(?)に生きていることが出来たから、こうしてこれを書き残せている。すぐにでも良い返事を返すつもりだったが、なにかが胸にひっかかりできなかった。彼女には少しだけ考えさせてくれ、といいそこで各々の家へ帰った。その時の彼女の表情・仕草は指先一つ一つの細かな動きまでいまだ脳裏に焼き付いてる。いつもの「好き」より真剣な声色。顔を深紅に染め、上目遣い気味に見上げる、期待と不安が入り交じったような笑顔。胸元で震わせながら握っている両手。待ってくれと言ったときの、困惑した表情。彼女にそんな顔をさせてしまった罪悪感を胸に抱きながら帰る足取りは重かった。オレは彼女へ想いを伝えるため、自分の全てをのせ手紙を書いた。これから綴るのは、自己満足なこの手紙と、それを渡してからの後日談だ。
ーーー
甘日ひなちゃん
ひなからの告白、すっごく嬉しかった。きっとこれから生きてく中でこんなに幸せなことは起きないんじゃないかって思うくらい。こうして手紙にして伝えるのは、こうしないと自分の想いは全部伝えられないなって思ったからなの。少し長くなるけれど、良ければ全部読んでもらいたいな。
ひna
との出会いは、今でも昨日のことのように思い出せるよ。君はすごい緊張していて、初々しかったね。それでも頑張って皆に笑顔を振り撒いてる姿は素敵だった。オレは気後れしてほとんど話に行けなかったけど、その頃から応援してたよ。こうして会えたことは運命だったって、思ってる。
毎日を君と一緒に過ごすことで、どんどん魅力を見つけられて、ますます想いは強くなっていった。でもダメ、想いを伝えるのが苦手なオレは君に言葉を伝えることも少なく、遠くから見てるだけで精一杯だった。
この頃からオレの日常は少しずつ変わっていって、段々君と過ごす時間もとれなくなっていた。どう頑張っても空回りしてしまい、時間は足りなく、精神的にも参ってしまっていた。そこから数ヶ月は君と会うのをやめてしまった。
それでも忘れることは出来ず、君には見られない距離からだけど、ずっと目で追いかけていた。
また会いに行こうって思ったのは、君の心の叫びを聞いたから。「時間がないからって会えなくなるのは寂しいよ」って言われて目が覚めた。それからは無理してでも時間を作って、毎日会いに行って声をかけるように頑張った。
それでも、どうしても埋められない空白の数ヶ月。君が一番辛かった時、一番悩んでいたときに「忙しい」なんてだけの理由でそばにいてあげられなかった。こんな自分が情けなく、呪い殺したい位だ。しかしそんなことは出来るはずもなく、きっとこの後悔はいつまでも残り続けるだろう。
君を想えば想うほど、嫌というほど理解させられる他の人の愛の強さ。オレが離れてた時も彼らは君を想い続けてたのだろう。時間が全てじゃない、と君は言うかも知れないけど、それでも彼らとの差は埋まらない。どうしても自分を信じきることが出来ないよ。
君はどうしてオレを選んでくれたの?他にもっと君を愛してる人はいるはずなのに。
君はどうしてオレのことをこんなにも想ってくれるの?想いをほとんど伝えてこなくて、君の中に残るほどではないだろうと思うのに。
もし君と一緒になっちゃったら、他の皆に会う時間が減っちゃうよ?皆と仲良くする君が好きだった。そりゃあ、嫉妬も少しはあったけれど。それでも、そんな君を無くすことはオレには出来ない。君には待っててくれてる人がたくさんいる。そんな人達の想いを知ってしまったら、自分一人だけ幸せになるなんて出来ないよ。君の想いを受け止めきれないのが情けない。あれだけ「何でも受け止める」なんて言ってたのに。だからごめんね。君と一緒になることは出来ない。例え君を傷つけることになってしまっても。
ただ一つ、こんなオレのわがままを聞いてくれるなら、1日だけ特別な時間を過ごしたい。このことは二人の胸のうちに秘めておきたい。
最後になるけど、一番の想いを伝えるよ。
甘日ひな、君のことがずっと好きでした。君と出会えたこと、君を好きになれたこと、こうして君といられたこと、幸せです。
これまでも、そしてこれからも君をずっと愛し続けてます。
ありがとう、ひな。