エピローグ-2
本日は二話投稿します。本日投稿分2/2
本堂の裏から続く森の中の道を歩くこと三十分程度。大した高さではないが、細い山道を登るのは意外と時間がかかった。途中で森の中にぽかりと開けた広間を過ぎてさらに上ると、一番高いところは木々が切れていて、街の全容が見渡せた。
「わあ、綺麗ね」
絶景だった。中国山地を遠く臨み、扇状地に広がる街。山の方から流れてきた川が東から街を貫いて南西方向に走っている。西日で川がオレンジ色に光っていた。こうしてみると、はっきりと「川向こう」の方に活気があるのがわかった。道路を行きかう車が何台も見える。この里山のあたりは静かなものだ。
「いい街よ、人が少ないけど、それは昔から。落ち着いて暮らすにはいいところ」
隣に立った寺の女性が教えてくれた。偉そうな男の子は黙って川を見つめている。
森を出るとすっかり日も傾いていた。女性と男の子に別れを告げた頃、他の子供達はいつのまにかいなくなっていた。もう帰りの時間帯だろう。山門に向かって歩き始めると、箒を持った寺男が近づいてきた。
「どうも。今日は子供達と遊んでもらったようで、すいませんでした。助かりました」
背の高い寺男の顔を見て驚いたが、辛うじて表情には出さずに誤魔化せた、かな。ずいぶんワイルドな寺男だが、物腰は意外に丁寧なんだな、と思った。
「ここは、俺とおひいの他は子供達ばかりでしてね、おひいの話相手にもなってもらって、ありがとうございました」
寺男は頭を下げてきた。いえいえとんでもないです、と答えておいて、山門を出た。おひい? あの女性のことだろうか。そういえば名前を聞くのを忘れていた。まあいいか。再びここを訪れることもないだろう。寺男に挨拶して参道を街に下っていった。日が暮れようとしていた。次の上りのJRはいつだろう。スマホで検索しながら考えた。
それにしても寺には似つかわしくない人だったな。何か訳ありなんだろうか。日本人離れした彫の深い顔付きの上、右眼が潰れてるなんて。まるであのホラ話に出てきた妖怪の用心棒とそっくりじゃない。
これで第一章の区切りになります。お読みいただきありがとうございました。少し夏目友人帳っぽいテイストになりましたが、特に意識はしていません。最初に書いた通り、夢の断片をもとに話をふくらませています。姫とダリウスと妖たちの物語は今後も書いていこうと思っています。またしばらくお時間いただいて、投稿します。