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青春ゲーマー  作者: 伊藤 啓
奮闘編 — eスポ甲子園東京予選リーグ —
9/16

第六感 — Six Sense —(1)

 6月に入り、eスポ甲子園東京予選リーグが開催された。

eスポ甲子園は、6月から47都道府県で地区予選が開催されており、eスポ甲子園東京予選リーグは、東京都に所在する高等学校を対象としたeスポ甲子園の地区予選である。予選で優勝した学校が地区代表として、eスポ甲子園本選に進める。場所は武道館で行い、3日間かけて行われる。


 東京都の学校から、この為にゲーマー達が相当鍛錬を積み重ねてきたが、「本命」は、私立霧島学園高等学校のチームだった。この大会を主催している日本eスポーツ連盟も、この霧島学園高校を注目していた。

 特に、霧島学園高校に在籍している1年の神楽 司は、かなり有力な能力者(アビリティスト)であるという事で、eスポーツ関係者から注目を浴びていた。



 昴高校eスポーツ部も、試合に出る為に早朝からバスで武道館に向かっていた。


「先生、能力者(アビリティスト)について、ちょっと聞きそびれた事があるんですけど。普通の人には、能力(アビリティ)が発動してる事が分かるんですか?」


バスの中で、ケンジが小声で、笠原先生に質問した。

笠原先生は眠そうだったが、「能力者(アビリティスト)」というワードを聞いて、応対した。


「いや、第六感(シックス・センス)を持っていない限り、分からない。普通の人は、ゲームに集中している様に見えるだろう。」


ケンジはそれを聞いて納得している感じだったので、笠原先生はそのまま寝た。

ケンジが先程の質問をしたのには、理由があった。彼は、笠原先生の能力(アビリティ)の説明の際に、見せられた映像で違和感を持っていた。


まるで、プレイヤーが人形にみたいに、空っぽになる感覚。

そんな感じが、ケンジの感覚として伝わってきたのを、今でもケンジは忘れていない。


(今日の予選で、彼の試合を見る。確か・・・・霧島高校1年、神楽 司)


ケンジは、自分の感覚に、ある「疑念」を抱いていた。そして、能力(アビリティ)の説明聞いた際に、「疑念」は、より強いものへとなっていった。そして、それは予選リーグで、神楽の試合を観た時に現実となる。




昴高校eスポーツ部の部員は、武道館に到着し、会場入りした。そして、選手専用の席につき、笠原先生は部員達にルール説明を行う。


「いいか。今回は、1試合2ラウンド制の3本勝負で行う。試合に負けたら、次の人に交代。勝てば、そのまま続行する。3本取ったチームが勝ち、次の試合に進めるシステムだ。そして、今回出場校がかなり多いから、4ブロックに分けて、それぞれトーナメント方式で行う。各ブロックで勝利した学校が、決勝トーナメントを行い、最終的に、本選へ進める。俺たちは、Cブロックで午後に試合を行う。そして、今日は霧島学園高校の神楽が出る。しっかり観とけよ。」


部員は、ルールを把握した後、Aブロックの試合を観戦し、神楽の出番を待つ。



 一方、神楽が所属する霧島高校eスポーツ部の空気は、殺伐としていた。霧島高校eスポーツ部は、eスポ甲子園で連覇経験のある強豪校でもあるが、チームワークは最悪だった。そして、能力者(アビリティスト)でもある神楽が入ってから、さらに悪くなった。霧島高校3年の三浦(みうら) 広平(こうへい)は、eスポーツ部部長として、士気を高めようとしていた。


「いよいよ、予選リーグがスタートした。みんな、気合いを入れて・・・」


と言いかけた時、


「そんな、下らない事辞めましょうよー。時間の無駄ですよー。」


と声がした。霧島学園高校2年の安田(やすだ)だ。安田はゲームの腕は確かだが、陰険な性格をしていた。安田は神楽に向かって、


「どうせ、『色白』が勝っちゃうんだから。」と言い放った。神楽は殺意を感じる目で睨んでる。

三浦は、咄嗟に安田を責める。


「辞めろ!こんな時に、何言ってるんだ!」


安田は、平然としている。


「安田、お前下品だなぁ。まぁ、1回戦で出せば、俺たちのやる事は無いけどな。」


そう語ったのは、同じく2年の権藤(ごんどう)だ。元々凄腕ゲーマーだが、やる気の無い性格をしていた。


「もうさ、俺が来る意味ある?アルビノちゃんのせいで、相当部員抜けちゃったしさぁ。なぁ、アルビノちゃん?」


神楽は、「殺意」で満ち溢れていた。神楽はアルビノ体質で、白髪色白だった。アルビノに関しては、神楽は絶対に弄られたくないデリケートな部分だった。確かに神楽以外の1年は、入部から2週間で抜けた。神楽が強すぎるからというのもあったが、どちらかというと、eスポーツ部の空気が最悪で抜ける人が多かった。


(下等生物め・・・。)


神楽は、手をぶるぶると震わせて、唇を噛み締めている。怒りが爆発しそうだった。


「いい加減にしろ!!」


三浦が大声で怒鳴った。もうこれ以上、揉めると試合に影響する。そうこうしてるうちに、奥の方からスタッフが声をかける。


「霧島学園の皆さん、次、出番ですので、そろそろスタンバイの方をお願いします。」


 最悪の状況の中、霧島学園高校eスポーツ部は、スタンバイを始める。安田は先手を打つように、


「色白ちゃんに、全部やらせようぜ。全戦無敗被ダメージ0(ノーダメージ)の『歩くCPU』にさ。」


と小馬鹿にする感じで言った。神楽は「歩くCPU」と呼ばれるのが嫌いだった。三浦は神楽に、


「・・・・やってくれるか?」


と言った。神楽も状況を察してか、承諾せざるを得なかった。

結局、神楽が一番目を担う事になり、霧島学園高校eスポーツ部はステージに立った。



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