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青春ゲーマー  作者: 伊藤 啓
奮闘編 —友情コンボ—
7/16

友情

 ダイチが格ゲーフロアに行ってる間、ゴウは音ゲーフロアでマサトを探していた。

ダイチとゲーセンに入る時、マサトを見かけたからだ。ゴウは、マサトがプレイしているジェイビートの方に行く。

 すると、ゴウは、マサトを発見した。案の定、ジェイビートをプレイしている。


「俺も、混ぜてくれよ。」


ゴウはそう行って、マサトの隣でジェイビートをプレイした。ゴウは、音ゲーは得意な方ではない。あくまで、マサトと仲良くなる為にやってるだけだ。


マサトは、ゴウに話しかけた。


「あの時、以来だよな。二人でやるの。」


ゴウは、「そうだっけ?」ととぼけてる。


「少し、痩せた?」


マサトは、ゴウに聞いたが、

ゴウは「ま、まぁね。」と答えながら、苦笑いしている。マサトは、


「どうして、俺に構うの?」


と聞いたら、ゴウは、こう答えた。


「俺ら、友達だろ。あの時から。」


マサトは、プレイを辞めて、黙ってしまった。マサトも自分の気持ちがよく分からなかった。


ゴウは、「あのさ・・・」というと、マサトは、


「eスポーツ部の事だろ?興味ない。」と断られた。ゴウは、


「違うよ。」と言った後、マサトに問いかけた。


「お前、なんで格ゲー嫌いなの?」


マサトは、再び黙った。しばらく考えた後、重い口を開いた。


「俺さ、小学校から中学校まで、格ゲーやっててさ。周りから天才ゲーマーって言われてたんだよね。」


ゴウは、驚きを隠せなかった。そういえば、小・中学生向けの格ゲー大会で、圧倒的戦績を残した天才ゲーマーがいたと。


「確か、デュアル9(ナイン)って名前じゃなかったけ?」とゴウが確認する。


「そうだよ、デュアル9(ナイン)。それが、僕の昔の名前(ニックネーム)だった。僕はあの時、勝つ事が全てだと思ってた。」


 マサトは、自らの過去を語り始めた。

マサトの脳裏に、当時の記憶が蘇る。数々の小・中学生向け格ゲー大会で優勝して、「絶対神」という異名も、もらった。当時のマサトは、自分の実力を過信していたのだろう。

そして、ある大会の予選トーナメントで敗北した。格ゲーする度に、敗北の恐怖が蘇った。マサトは、それ以来格ゲーをしなくなり、逃げる様に音ゲーに転向していった。


「それ、逃げじゃん。」


マサトから、過去の事を聞いたゴウは、ストレートに言った。マサトは、ゴウに何も反論出来なかった。そうだ、自分は逃げた。自分は、弱い人間だ。ゴウみたいな強い人間じゃない。


ゴウは、続けて言った。


「もう一度、格ゲーやってみなよ。」


マサトは、黙ったまま聞いている。ゴウは、続けて言う。


「お前のプレイ、今でも通用するって。だからよ、やろうぜ。一緒に。」


マサトは、黙ったままだ。ゴウは、


「一度、eスポーツ部に遊びにおいでよ。先輩に話通しとくから。」


とマサトに言った。マサトは、


「考えておくよ。」


と言った。ゴウは、マサトの言葉に安堵した後、


「俺、ダイチ待たしてるから。じゃあな。待ってるから。」


と言って、音ゲーフロアを後にした。

マサトは、ジェイビートのプレイを再開したが、あまりいいスコアが出なかった。



ゴウは、格ゲーフロアに行き、ダイチと合流した。ダイチは、


「さっき、思いついたんだけどさ。『俺たちだけの技』作ってみない?」


それを聞いたゴウは、妙案だと思った。無双連撃(クリティカル・ラッシュ)の様な、かっこいい技を作れたら最高だし、マサトも、きっと・・・。


ゴウは、「いいなぁ。早速作るか。」と答えた。


「決まりだね。」


ダイチはそう言って、ノートの切れ端をゴウに見せた。


「ゴウがいない間、格ゲーやりながら、考えてた。」


そこには、パンチやキックなどの打撃系攻撃を連続で攻撃する為の方法が書かれていた。


「ゴウ、俺たちでこの技を仕上げないか?」


ゴウの答えは、一つだった。


「おう。やろうぜ。」


こうして、ゴウとダイチはそれぞれ帰宅した後、オンラインで相談しながら、「俺たちだけの技」を仕上げていった。


「・・・・・出来た。」


ゴウはそう言って、「俺たちだけの技」をもう一発放った。ダイチのファイターは、一気に40%のダメージを負った。


「やった。完成だ。」


ダイチは、喜んだ。初めての「俺たちだけの技」だ。


ダイチは聞いた。


「名前、どうする?」


ゴウは、「う〜ん・・・」と考えた後、ダイチに言った。


「こんなのはどうかな?」


ゴウは、自分が考えた「俺たちだけの技」の名前をダイチに伝えた。


「いいね!それで行こう!」


ダイチは快く同意し、名前が決まった。そして、ダイチは言った。


「この技、ゴウが使ってよ。」


「え、俺が?」ゴウは、驚いている。


「元から、ゴウが使うつもりで考えてたんだ。ゴウなら、出来るんじゃないかって。」


「マジか。俺、eスポ甲子園の予選で、バンバン使うぞ!」


ゴウは、そう言って、張り切っていた。



その週の土曜日。ダイチとゴウはいつもの様にPCルームに行き、eスポ甲子園の予選に向けて、最終調整を行なっていた。そこに、PCルームに一人の男子生徒がやって来た。マサトだ。


「お〜、待ってたぞ。マサト。」


そう言って、ゴウは歓迎した。


ダイチも、挨拶した。


「初めまして。遠藤 大地です。よろしくね。」

「初めまして。杉浦 雅人です。よろしく。」


これが、ダイチとマサトの初めての会話だ。


そして、ゴウがマサトの手を握って、バーニングファイターVが付いているディスプレイ所に連れていった。


「マサト、勝負しようぜ。」


マサトは乗り気では無かったが、「一回だけなら」とゴウの勝負を引き受けた。


マサトは、適当に涼を選択し、ゴウは、マックスを選択した。


「Ready....Go!」


マサトは、ゴウのファイターの動きが、今までと違う感じがした。マサトの攻撃を完璧に防御し、隙を見つけては攻撃する。マサトは、少し焦った。そして、強めのパンチを喰らってしまい、スタン状態になってしまった。そして、


「見てみろ!俺たちだけの・・・・」


そう言いかけた途端、腹と背中に激痛が走った。余りの痛みにコントローラーを離してしまい、倒れた。

ダイチ、マサト、ケンジ、ショウゴが駆け寄り、介抱する。ケンジはゴウの様子を見て、咄嗟に判断した。


「救急車を呼ぶんだ!」


ゴウは救急車で救急搬送され、病院で精密検査を受けた。

その後、ゴウが意識目覚めた時、医者がいた。そして、医者から出たのは、ゴウにとって信じ難い事だった。



「剛くん。君の病は、末期の癌だ。」



 医者からは、ゴウは末期のすい臓癌にかかっており、既に手遅れの状態である事、余命が後2ヶ月も持たない事だった。ゴウは医者の勧めもあり、入院することになった。ゴウは、ダイチ達に自分の病気を告白する勇気が無かった。ゴウは、携帯でダイチとマサトにメッセージを送った。


——いやぁ、ちょっと食中毒になっちゃったみたいでさ。しばらく、入院する事になったから。元気になったら、帰ってくるよ。


これが、ダイチとマサトに送る最期のメッセージとなった。



翌日の朝、笠原先生がやってきた。先生には、本当の事を話した。


「先生。みんなには、内緒にしてください。俺・・・・もう長く生きられないみたいなんです。」


笠原先生は、


「・・・・そうか。」


と言い、目に熱い涙を浮かべた。そして、悲しみを堪えながら、


「予選は・・・・ダイチ達に任せるんだ。」


と言った。


「でも、やれる人がダイチとショウゴしかいないし、2人だけじゃ・・・・」


「いるよ。もう1人。もう分かるだろ?」


笠原先生は、そう言った。


ゴウは、その瞬間、大粒の涙を流した。


(マサトだ。マサトが俺の為に・・・・。)


「だから、剛くん・・・いや、ゴウ。諦めるな。」


笠原先生は、ゴウにそう言い残した。そして、ゴウの復活を祈りながら、病院を後にした。


(今の俺には、やることがある。能力(アビリティ)の存在を伝えなけれならない。今回の予選は、かなり厳しくなる。)




 放課後の部活の時間、笠原先生が部員全員を召集した。


「ゴウの件についてだが、しばらく入院する事になった。体調が悪くなったみたいだ。」


マサトは、「本人から、食中毒って・・・聞いたんですけど・・・本当ですか?」と笠原先生に問いかけたが、


「本人が言うなら、そうだろう。俺は、あまり詳しくは聞いていない。」と笠原先生は受け流した。


「さて、こんな状況で言うのもあれなんだが、ここからはeスポ甲子園東京予選の為の重大な話をする。よく聞くんだ。」


eスポーツ部部員が真剣に聞く中、笠原先生は重い口を開いた。


「今から、能力(アビリティ)の説明を行う。」


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