表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春ゲーマー  作者: 伊藤 啓
奮闘編 —友情コンボ—
6/16

無双連撃 — Critical Rush — (2)

 

 eスポ甲子園東京予選リーグまで、残り1か月。そこから、ダイチとゴウの地獄のような特訓の日々が始まった。

まずは、必殺技コマンドを全て覚える事から始めた。ダイチは、涼の必殺技コマンドを覚え、ゴウは、「マックス」の必殺技コマンドを覚える事になった。ダイチは、涼の必殺技である「流星拳」を乱発しがちだった為、「疾風脚」と「聖空拳」を覚え、それを組み合わせて、発動する様にトレーニングを行った。ゴウは、元々攻撃主体型のプレイスタイルだった為、より素早くコマンド入力して、連続して必殺技を発動する様にトレーニングをした。ダイチとゴウの指が痛くなったが、すぐに水道水で冷やしてトレーニングを再開する。

これが2週間続いた後、突然、笠原先生がやってきた。


「おはようさん。さーて、テストするか。」


突然の無双連撃(クリティカル・ラッシュ)のテストが行われた。ケンジとショウゴは、内心苛立っている。

テストは、トレーニングモードでダイチとゴウのどちらかが、必殺技を出す。出している間は、相手は攻撃してはいけない。


「それじゃ、まずは、ダイチからやってみて。」


笠原先生の声かけと同時に、ダイチは必殺技コマンドを入力した。ダイチは、自分の最大限の力で早く入力する。涼は、必殺技を発動しまくっている。これには、ショウゴも驚きを隠せなかった。


「たった2週間で、ここまで・・。」


どうやら、ダイチは成長スピードが速いのだろう。笠原先生も感心している。


「2週間で、ここまでとは凄いねぇ。今日は、ふらっと来ちゃったから、そんなに期待してなかったんだけど。」


と言った時、ケンジとショウゴは、


(せめて、次に来る日にちを、俺たちに伝えておけよ。)


と思っていただろう。今回もいきなりふらっと来て、突然のテスト宣言だ。


「ただ、全体的に粗が目立つ。もう少し、練習した方がいいかな。」


と笠原先生はダイチにアドバイスを送った。

 続いて、ゴウの番になった。

ゴウは、必殺技コマンドを素早く出しまくった。一見、無双連撃(クリティカル・ラッシュ)が完成されているかの様に見えた。ショウゴも、


「凄い!もうこれ、無双連撃(クリティカル・ラッシュ)ですよ!」


と言ってしまうぐらい完成されていた。

笠原先生も、


「確かに。完成されているね。」と言ったものの、内心は違った。


(無双連撃(クリティカル・ラッシュ)から、かつてのゴウのプレイに感じられた勢いが消えている。)


笠原先生は、違和感を持った。なぜ、彼の攻撃から「かつての勢い」が感じられなくなったのか?

無論、それを一番分かっていたのは、ゴウ自身だったかもしれない。

ゴウは、最近になって、胃や背中の方に重苦しい違和感を感じることが多くなってきた。ただ、ずっと起きる訳ではなかったので、そんなに気にする程ではなかった。

しかし、テストの時に違和感が出てしまったのだ。背中が重苦しい。それでも、プレイを続行した。


「はーい、OK!もう、いいぞ。」


この笠原先生の言葉を聞いて、内心ホッとした。精神的に、かなり限界だった。


「まぁ、とりあえず、合格ってとこかな。後は実戦形式で練習して、予選当日まで物にしといて。じゃあ、俺はやる事あるんで。また来るね〜。」と言って、笠原先生はPCルームから出て行った。


(だから、いつ来るんだよ・・・。)


と、全員心の中で突っ込んだだろう。



 部活終わり、ダイチは珍しく、ゴウをゲーセンに誘い、一緒にアキバ駅近くのゲーセンに行った。

ダイチは、当初ゴウと一緒に格ゲーフロアへ行こうとしたが、ゴウは、何かを見かけたのか、


「あ、ちょっと待って。俺、音ゲーフロアに行くわ。ちょっとやりたいゲームがあって。」


と言って、音ゲーフロアに言ってしまった。ダイチは、多分マサトの事だろうと察していた。

ダイチはメッセージで、


「俺、格ゲーフロアに行くから。」


というメッセージをゴウに送り、格ゲーフロアに行った。

格ゲーフロアには、色々なゲームが置いてある。ダイチが、格ゲーフロアを歩いてると、ゲームプレイ音が聞こえてきた。近くに行ってみると、白髪色白で赤い瞳の少年が、黙々と格ゲーをプレイしている。

凄い手捌きだった。コマンド入力が目に見えない程早く、正確に打っている。ファイターは、尋常じゃない攻撃をし、敵を瞬殺している。

 やがて、飽きてしまったのか、その子は、席を立とうとした。ダイチは思わず、


「ねぇ、君。」


と声をかけた。赤い瞳の少年は睨みつけている。


「僕と対戦しない?」


赤い瞳の少年は、動揺している。そして、気を取り直した後、


「やめとけ。」


と答えた。ダイチは、


「どうして?」と聞くが、赤い瞳の少年は、


「・・・・お前は、僕には勝てない。僕は、特別だから。」


とだけ言い残し、何処かへ行ってしまった。赤い瞳の少年は、


(変な奴だったな・・・。)


と思っていたが、同時に。


(・・・・アイツ、なんか気になる。)


とも思っていた。変な気持ちが、自分の心の中で湧いているのを感じた。



 その頃、笠原先生は自宅で一枚のDVDを見ようとしていた。DVDには、


「私立霧島学園高等学校1年 神楽(かぐら) (つかさ)


と書かれている。笠原先生は、早速DVDをパソコンに入れ、再生した。

映像には、白髪色白で赤い瞳の少年が、写っていた。

その映像を見て、笠原先生は驚愕する。そして、上を見ながら、こう呟いた。


「いよいよ、時代が変わっちまったな。こりゃ。能力者(アビリティスト)の時代に。もう、あいつらに、能力(アビリティ)の件、言わないとやばいね。」


eスポ甲子園東京予選リーグまで、後2週間を切ろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ