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リセットウォーズ  作者: 誠也
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9.捜索

 東京に帰ってくると、沖縄とは違う暑さに体が怠さを訴える。しかし、そうばかり言ってはいられない。ここの所、本職の仕事を休み過ぎている。この前までやっていたことがもう終わって別の作業に移っているというのも前回あった。二足の草鞋というのも良し悪しだな。

 昼休みとなり、土産を広げ茶を飲む。仕事仲間達は頻りに誰と行ったんだと問い掛けてくる。大方女と逢い引きをしていたと勘繰っているのだろう。そのせいか男と行ったと伝えても引き下がらない。面倒臭いな。少々煩くなって来た頃に親方が拳骨を放つ。頭を押さえ静かになるそれを見てクスクスと笑っていた所、俺にもその拳骨が飛んで来た。割りに合わない。

 夕方、仕事が終わり部屋に帰る途中スーパーに寄る。茄子と豚肉、これを味噌で甘辛く炒めると旨いんだよな。買い物を済ませ、店を出ると知った顔が見えた。


「渡辺!」

「おお、あんたか!今仕事帰りか?」


 制服姿の渡辺はここいらの見回りをしていたらしい。物騒なことでもあったのかと聞くと、「いたって平和さ。」と欠伸混じりに返す。少し腑抜けているとも思ったが、時間も時間だな。


「そうだ、良かったら明日飲みに行かないか?この前言ったろ?」

「ああ、良いねぇ~。えっと、明日は夜十八時からなら空いてんぞ。」

「じゃあ、その・・・。」

「キャー!」


 話を遮る叫び声がその場に響く。その声の方を振り向くと男が一人前のめりに倒れていた。俺達は直ぐ様男に近寄る。呼吸の状態が悪く、体が痙攣していた。救急車を呼び、男の状態を詳しく見る。すると、渡辺が思い付いた様に辺りを見回した。


「警察です。この方はどうやら虫に刺された様です。皆さんも周りに見たことが無い虫がいないか注意して下さい。」


 周りの野次馬は一時騒然とし、皆警戒体制となる。虫に刺されてこんなことになるのか?

 渡辺は電話機を片手に何処かと連絡を取っている。微かに聞き取れたのは「特定外来生物」という単語だった。何が日本に入ってきたというのだろう。混乱はそのまま、救急車が到着し、男を搬送する。俺達は現場に残り辺りを捜索したが、何も見付けられなかった。

 暫くして、警察の応援が来る。それは物々しい様子で、数十人が片手に殺虫剤を持って。その中で上官と思わしき男が、渡辺に近寄って来た。


「お疲れ様です。先程、三十代男性が倒れ、アナフィラキシーショックと思われる症状が出ていました。例の特定外来生物のヒアリに刺されたのでは無いかと思われます。現在周囲二十メートル圏内まで捜索しております。」

「分かった。聞いたか、被害男性の目撃情報を聞きながら、探すんだ。」


 警察達は複数人に分かれて四方へと散った。

 ヒアリ。渡辺に聞いたのだが、とても小さな蟻で、刺されると先程見た症状が起こることもあり、最悪死に至る。元々は南米の方に生息していたそうだが、航空機や船舶の中に潜り込み、今世界各地に渡っているそうだ。

 もしかして、これも攻撃の一つなのか?危険な生物を日本に潜り込ませ、混沌を生む。あるかもしれない。


「渡辺、俺も手伝わせてくれ。」

「良いのか?んじゃ、頼むわ。だけど、刺されんなよ。」


 頷き、渡辺と蟻の痕跡を追った。日が暮れかける中を懐中電灯を照らしながら。他の蟻は見付けるものの、なかなか目当てに辿り着けない。そんな中、腹が悲鳴を上げた。それを聞いた渡辺は大笑いし、「すまん、仕事終わりだったな。」と左手で謝る素振りをする。

 これは恥ずかしい、少し腹に物を入れたいな。渡辺に言って、近くにあったコンビニに入り、握り飯を二つ買う。コンビニの前にある鉄の柵に腰を下ろし、早速かぶりつく。ああ旨い。

 うっ。飲み込みが追い付かない。茶を買うんだった。すると「ほらよ。」と渡辺が茶を渡してくる。それを取り、流し込む。ふう、助かった。


「がっつき過ぎだ。まあ腹が減ったのは分かるけどよ。桂、今日はここまでにして帰っても良いぞ?もう大分暗くなったし、お前は明日も仕事だろ?」

「そうだな。途中で済まないが、そうさせてもらう。明日飲みに行くって話はまた昼の休みにでも連絡し、痛!」


 右足首に激痛が走る。ズボンを捲って見ると赤く腫れ上がっていた。そしてそこには赤く小さな物が付いていた。


「桂、そいつだ!っといけね、救急車!」


 渡辺の電話で救急車が来た。今度は俺が搬送される。ただの虫刺されというのに物々しい。結局着いた病院では、「これなら大丈夫。」と軽く言われ、手当てを受けた。

 まさか俺自身が刺されるとはついてない。病院を出て、帰る途中電話が鳴る。昴からだ。


「右京聞いたぞ、ヒアリに刺されたんだって?災難だったな。大丈夫か?」

「ああ、問題ない。それにヒアリも駆除できそうだ。」

「そっか、渡辺から感謝状でも貰っときな。」

「昴からも何か無いか?」

「何か?ああ、見舞いの品くらい持ってくよ。」


 ん?思っていた感じと違う。試しに聞いてみると大笑いされた。


「右京、お前考え過ぎだって。俺らの敵は日本を乗っ取ることが目的なんだ。だから、ヒアリなんか入れ込んで日本を住み難くなんてしねぇよ。」


 何だと。まあ、これは俺の勘違いだ。自発的に動いたと思ったらこれか。まだまだ勉強不足だな。急にどっと疲れが出てくる。今日はさっさと寝よう。家路を急いだ。

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