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リセットウォーズ  作者: 誠也
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7.正体

「はぁ!?」


 思わず声が出る。連れてこられた時点で嫌な予想はしていたが。囮に使われるとは。やはり断る方が良かったか。


「昴、お前、いい加減にしてくれ。これが何で組に関係あるんだ!」


 昴の胸ぐらをぐっと掴む。テーブルの向かいに座る二人が慌てる中、昴はいつも通りの口調で答える。


「まあ待て右京。お前が前に聞いてきた俺が何者なのかって答え今教えてやるから。ちょっと奥に行こう。」


 その問いに俺は深く頷く。昴を掴む手を離し、店のカウンターの奥へと進む。そこは一室の居間があり、俺達はそこに上がり込んだ。


「さて話そうか。俺の本当の所属は公安調査庁だ。」


 公安調査庁。答えを聞いたのだが、公安調査庁とは何なのか聞いたことがない。昴はあまりピント来ていない様子の俺に説明を続けた。

 公安調査庁、通称『公安』は国内外でのテロ組織に対する情報収集、分析を行う機関であり、つまり昴は官僚であったということ。今居る松本組については裏社会の情勢を知る為に仮で入ったらしい。因みに親父もこのことは知っているそうだ。その為、仕事の優先順位は公安、ヤクザの順であり、今回松本組の管轄を離れ沖縄に来たのはそう言うことだ。政府とヤクザが繋がっているとは、良いのだろうか?


「話は分かった。だが、何故今回俺が連れてこられたのかその答えがまだ無い。」


 視線を真っ直ぐに昴を向けると、いつもの掴めない様子ではなく、真剣な様子で


「それは俺の勝手な思いさ。右京はあの戦争を経験して今ここに居る。どのくらい壮絶なものだったか、俺も生まれる前だから分かんねえ。だが、お前は知ってるんだ。だから今のこの日本の状況を見て、お前が一番悔しいんじゃないかと思ってな。まあ、元々お前には組とか関係無しで一緒に日本の為に戦おうと思って声かけてんだ。」


 と答えた。

 悔しい・・・か。確かにあの時俺は昴の手を取った。前居た時代の仲間達への後ろめたさと、虚しさの晴らす場所を見つけたと感じて。己を捨てようとしていたのだなきっと。なのに今は、腹を立て生きようとしている。

 それに思い返せば昴の言う通り、ヤクザの仕事だけとは言ってない。つくづく人を嵌めるのが上手い男だ。馬鹿な男だな俺は。


「昴、俺はもう一度お前の手を取る。だから、秘密は無しにしてくれ。」


 右手を差し出すと、「ようこそ。」と言い、昴は手を握り返した。

 テーブル席に戻り、今回の作戦について話す。今回は米軍基地の周りのテントの撤去が目的だそうだ。テントは米軍基地を退去させ様とする者達が無断で置いた物だが、それを退かそうにも抵抗されて上手くいかないらしい。そこで、俺が無知の観光客を装って、敵を惹き付ける。基地側の注意を反らしたと思わせたとき、昴達の手が。テントの向こう、米軍基地にこう情報を流す、「侵入者だ。」と。勿論誰も入っていないが、加工した映像資料を元に冤罪をつくる。俺もろとも拘束させ、拘束を長引かせるように動く。その間に残りの者がテントや横断幕等を押収し、作戦は完了と言うものだ。

 作戦は分かる。物が無ければ行動も起こし難くなるものだろう。だがやはり、俺の重要度が大きい。下手は出来ないな。でも、これなら俺で無くても良い気がする。しかし、話しはそう簡単なものではないらしい。向こうもそれなりに情報を持っており、関係者の顔は晒されているとのこと。相手に情報が無く、観光客を装うことができる普通な容姿に、それなりの体力が有る者。つまりは俺が都合良く動かせる奴らしい。

 決行は十四時。その時間までに思考を巡らせ、どう対応するか幾つか案を立てる。しかし、案を立てた所で相手が分からないのでは何とも無駄なことのようにも思う。はぁ、難しい。

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