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リセットウォーズ  作者: 誠也
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28.新人

 くそっ、またかよ!明かりに照らされた夜の街を歩く俺の後ろを付けてくる奴がいるんだが、バレバレなのに「気付かれていないぞ。」という自信に満ちた顔をしている。ここ何日もこの調子かよ、もういい加減にしてくれ!

 大通りから不意に脇道に入り、その場で相手を待つ。現れた瞬間追ってきた奴を捕まえ、そのままビルの壁に押し付けた。


「おい、お前何のつもりだ!」


 押さえた肩から小刻みに震えが伝わる。暗いからか最初分からなかったが、こいつ女だ。眼鏡を掛けた黒髪ショートのその女から受ける印象はとても裏の仕事をしているとは思えない。こいつ一体・・・。


「あの~、放してもらえませんか?」

「その前に、自分が何者か言え。」

「いや~、それは~。」


 肩をまた強く押し付けると観念してか、上着の内ポケットから手帳を取り出した。これは警察手帳か、成る程ね。俺を追っていたということはマル暴か。にしても俺を知らないってことは新しく来たばかりみたいだな。


「警察の方が俺に何の様ですか?」


 わざとはぐらかす様にそう言ってみる。すると、意を決した様な顔で


「知ってるんですよ!あなたがあの東帝会直系秋川組組長秋川昴だということを!」


 と言ってきた。初々しい感じがしてなんか可笑しいな。ちょっとからかってやるか。


「よく知ってるな。それで、俺をどうするつもりなんだ?」

「それは、その・・。とにかく悪いことは駄目なんです!」


 ハハハッ、怒り方が子供っぽ過ぎだろ。そんな時、気の抜ける「ぐぅ~。」という音が聞こえた。女を見てみると顔を真っ赤にして俯いていた。


「続きは飯でも食いながら話すかい?」


 そう言うと、女の顔は一瞬にして明るくなり、少しして疑う顔に戻った。


「何を言うんですか、どうせあなたの事務所とかに連れて行って変なことするんでしょ!」

「そんなつもりは無いさ。なんならお前が行きたいとこ連れてけよ。まあ、警察署は勘弁な。」


 俺は女から押さえていた手を放す。キョトンとした女をそのままに大通りに出ると「待ちなさい!」と急に思い出した様に俺を追ってきた。

 追ってきたはいいが、行く店を決めかねている女に「そこでもいいか?」とチェーンの牛丼屋を指差して見せた。知った店ならと頷いて返す女。それならと俺は店に入った。

 注文を済ませ、改めて向かい合う。まじまじと見るととても若い、新人警察官だと思うが何歳だろうか?


「それで、何で俺を追ってたんだ?」

「それは、うちの部署にあなたの資料が無かったからですよ。ここ東京で一番の勢力を持つ東帝会の直系である組の組長ですよ、組長。なのにあなたの資料が一切無かったんです。おかしいなと思って、先輩に聞いてもあなたのことは放っておけって言うし。もう自分で調査するしか無いじゃないですか。だから追っていたんです。」


 もう気を許したのか、赤裸々に語ってくれる。逆に、こいつ大丈夫なのかと心配になる程に。そういえば前の居たマル暴の馬場さんのときも似たことされたっけ。まあここまでひどくは無いけど。こいつはその後任って訳か。馬場さんも俺のこと知ってんならちゃんと引き継いでくれりゃいいのに。きっと面白がってんだろうなあのオヤジ。

 さてと、どうしたもんかな。面白そうだし、俺が公安だってこともう少し隠しておくか。


「ちょっと、聞いてますか!」


 おっと、怒られてしまった。


「聞いてる、聞いてる。俺のこと知りたいんだろ?なら、その前にあんたのこと教えてくれよ。人に尋ねる前にまず自分からって言うだろ?」

「仕方無いですね、私は警視庁組織犯罪対策部の和泉です。このエリアの担当になったので、あなたのこと調べてたんですよ。さあ秋川さん、あなたのこと教えて下さい!」


 と、女はぐいっと迫ってくる。


「直球だねホント。まあいいけど。俺はあんたの言う通り、秋川の組長だ。といってもそれ以上言うことも特に無いな。それで俺を逮捕でもするのかい?逮捕状も無く、現行犯でも無いのに?まあ、捕まるようなことはしてないけどさ。」

「そうなんですよ、ここ数日あなたのこと見てたんですけど、本当にヤクザって思うほど何も無くて、今もこうしてお話しできますし。それにあなたのフロント企業の不動産会社も普通だったし、何も知らなければただの若い実業家みたいで・・・。いっそのことヤクザを辞めたらどうですか?」


 やばい笑いが堪えきれない。本当に真っ直ぐな奴だな。向かいに座る和泉がキョトンとする程、その場で爆笑してしまった。ヤクザ相手に面と向かってこんな風に言う奴は中々居ないだろうな。いや、俺がなめられてるのか。それにしても、俺以外の例えば武闘派の連中なんか相手したときにはどうなるのか、一回見てみたい気もする。


「悪いが()()ヤクザを辞めることはできない。まあ、俺はあんたの厄介になることは無いよ。金は置いとくから、ゆっくり食べて帰んな。それじゃ。」


 女の分も金を机に置いて、その場を立ち去る。「ちょっと待ちなさい!」と言いつつも、どうしようという風にその場で狼狽える女をそのままに俺は店を出た。

 面白い奴が来たもんだな。それにしても、俺はこれから面倒ごとに巻き込まれそうなんだが、あの和泉という女に注意した方が良かっただろうか?いや、組の中で揉め事があるって聞いたら逆に突っ込んできそうだな。まあ、引き際くらいはわかるだろ。明るい夜道の中、ゆっくりと家路についた。

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