15.攻勢
買い出しを終え、車に乗り込む。葛西さんの運転により、潜入するマンホールまで行き、マンホール毎に二人ずつ降ろしていく。
降りた後は警戒しながらマンホール中へ。鼻を突く異臭のする暗がりの中へゆっくりと入って行く。携帯している小型の懐中電灯も敵がいるかもしれないと細心の注意を払い、辺りを照らす。安全を確認したら明かりを消し、じっと目をその空間に慣らした。
二人組で七方向から同時攻め入るのだが、場所は下水道。携帯電話の電波は届かない。その為、攻め入る切欠は時間。予め時刻を合わせた腕時計を頼りにその時間を待った。
俺と組になっているのは前と同じく徳本。彼の左手首に付いたその時計の針が動く。戦闘開始だ。
両手にスプレーを持ち継続して噴射する。その臭いが辺り充満するほどに。効いてきたのか、少し先をカサカサと動く黒い物が見えた。このままと目的の場所へ向け、それらを追い込みながら進む。奥へ奥へと進む毎にその数は増し、またこちらに飛びかかってきそうなものも追い返しながら確実に大きなうねりとなっていく。
さすがに見ていて気持ちの良い物では無い。これが奴等を襲うと考えると敵ながら気の毒に思う。隣の徳本の顔もどこか引きつった物であり、この作戦を思い付いた昴の悪さが良く分かる。
更に進み、他の組と合流する。もう近いと言うことだ。右手をスプレーから銃に持ち替える。
すると奥から怒号が聞こえた。下水道に良く響くその声は日本語では無い。既にあれらが到達したか。
黒虎が潜むと言われている空間は出入口が北と南それから東側の三ヶ所ある。その三点を同時に攻めたのだが、あれを黒虎の奴等はどう対応するかも見物だ。逃げる為に三つの内どこから出てくるとしたらその手前で待機する手筈の俺達の格好の的になる。それか空間に留まりあれを殲滅するために銃などの武器を消耗してくれる、若しくは錯乱してくれるのなら、それでもこちらが有利だ。
少しして銃声が鳴り響く。それも数回連発しているだ。声は無く、銃声のみが聞こえたこの状況はまず三十秒待機、それから突撃。周りを見渡すと皆頷く。左手のスプレーも置き、銃に持ち替えた。今だ!
足に何とも言えない感触を覚えながら奥へと駆け足で進む。奥には徐々に明かりと開けた空間が見える。予想以上に広いその空間には部屋中を飛び、走り回る黒い物とその対応に追われる十数人が居た。俺は銃口を向け引き金を引く。移動しながらの銃撃は急所を逸れ、着弾する。先程まで混乱状態だった黒虎の連中も俺達に気付くと、標的を変えた。
奴等の手にも銃があり、応戦してくるのだが、こちらの狙い通り、弾数は無い様だ。奴等はこちらを警戒しつつ、物陰に隠れようとする者、銃を捨て向かってくる者に分かれる。まずは近接戦を仕掛けようという者を重点的に狙う。しかし、視界の悪いこの状況、向かってきた五人の内三人しか仕留められない。残った二人は勢いそのまま殴り掛かってきて、殴られた徳本は後ろに倒れ、受け止めた倉本さんはそのまま殴り合っている。
俺は徳本に馬乗りしている男の頭を撃ち抜く。助かったと息を付こうとする徳本だが、急に顔色を変えて直ぐ様立ち上がる。彼に何があったのか言うまでも無い。
さて、こちらも負傷者はいるものの状況はかなり良い。だが、肝心の孔と連れ去られたうちの組の連中の姿が見えない。一体どこに。
部屋中を見渡すとこの部屋の出入口の一つで、倒れているうちの組の連中が見える。目の前の敵を倒しながら近付くと、そこには致命傷を受けた者が三人倒れていた。床には血が広がり、もう助けられそうに無い。両手にぐっと力が入るのを抑えると俺はその先の通路を急いだ。この先には奴が居る。




