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リセットウォーズ  作者: 誠也
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13.捕獲

 家までの帰り道歩きながら電話をかける。相手は渡辺だ。先程襲ってきた黒虎の連中と京子について説明し、対応してもらう。渡辺は面倒臭そうな反応をしたが「仕方ないな。」と引き受けてくれた。また飲みに行くときにおごるとしよう。

 続いて昴に電話をかける。さっきは話の途中だったからな。昴にはどうやって黒虎を止めるのかを聞く。手伝えるのなら手伝い、早めに方を付けたいからだ。聞くと、ある人物を呼ぶのだとか。昴の知り合いの大物らしいが、その人を呼ぶことにより警察による警備が付き、黒虎はその間表だって動けなくなるとのこと。その動きを止めたときを叩くらしい。

 黒虎の日本での拠点は神奈川の横浜と東京の新宿の二つ。その拠点を攻めるのだが、組の者を呼ぶ気は無いらしい。警備が強い中を動いては組の者が捕まるからだ。その為、公安の伝を使うらしい。相手は指定暴力団。家宅捜索だと言って突入し、牢屋に入れることのできる証拠を見つけて、一網打尽とするのだとか。

 何だか今までの作戦よりも規模が大きい。ただ者じゃ無いと思っていたが、昴の人脈というか力は規格外だ。

 二日間待ってくれと言ったが、たった二日で準備できるのか少々楽しみでもある。

 翌日、親方に連絡し休みを貰う。既に事情を知っており、問題無く休めたのだが、今日一日は部屋で過ごすしか無い。外へ行き、奴等に襲われても敵わないからな。

 部屋でゆっくりと言ってもすることが無い。取り敢えず、洗濯と部屋の掃除をする。軍にいたときは掃除をするにも煩く言われたからか、時間があると普段はやらない所も徹底的にやっていく。

 服に汗が滲み、少し休憩をと思ったときにはそこそこ時間が経っていた。部屋を見渡すと埃や塵は目に入らない。うん、いい感じだ。しかしこれだと・・・。いや、これ以上考えると縁起が悪い。

 さて、飯にしよう。冷蔵庫に何が残ってただろうか?卵に玉ねぎ、キャベツ、椎茸、大根、じゃがいも・・・。味噌汁くらいしか思いつかない。そうだ、確か。冷蔵庫の戸を閉め、台所の収納庫を開ける。あった、鯖の味噌煮の缶詰め。これがあれば米が進む。

 それから簡単に食事を済ませると、今日はテレビを見てゴロゴロと寛いだ。それにしてもこれ程ゆっくりしたのは久しぶりだな。毎日これでは暇すぎるが、偶にはいいものだ。

 夕方となりテレビにはニュース番組が流れる。そこに緊急速報のテロップの後に、「米国アンダーソン国務長官緊急来日が決定」と出た。これが昴が呼んだという大物か。アメリカの国務長官。どうやってそんな人を呼べたのか大掛かり過ぎて分からん。テロップが終わると番組内容を変更してその国務長官についてニュースが流れた。その映像には日本人の壮年の男性に見える人物が映るが、それこそアンダーソン国務長官らしい。何でも日系アメリカ人らしく、彼の祖父が日本人とのことだ。

 国務長官が何故来日するかだが、現在の北朝鮮の情勢において今後米朝で協議をする際に日本の意見を窺うと言うらしい。もっともらしい用件だが、本当はただヤクザの動きを抑えるというのだから少し笑える。

 そんなとき昴から連絡が入る。テレビを見たかと。


「明日は朝から警察が警備に出る。これで奴等も下手に動けないさ。もう大丈夫だから明日から仕事に出てもいいぞ。」

「それは分かったが、何でこれを今までやらなかったんだ?これなら裏組織を一網打尽にできるんじゃ無いか?」

「そりゃ人の問題さ。警備にもかなり人員が要るし、裏組織の数も多いから全てには手を回せないんだ。何回も繰り返してやってると警戒されて、家宅捜索に入っても取り押さえる物を隠されたり、逃げられたりって懸案もある。だからいざってときのとっておきさ。それに、あんな大物そうそう呼べない。分かるだろ?」


 まあ、分からなくも無い。大丈夫とは言われたが取り敢えず明日奴等が捕まるまで用心はしておこう。

 翌日、いつも通り職場に向かう。主な道路にはバリケードと多くの警察の姿が見える。物々しいが、俺にとっては安全地帯だ。いや、俺もヤクザではあるからあまり近寄るのも良くないのか?気にしない方が良いか。渡辺という例外もいることだし。

 職場に出ると、同僚から休み過ぎだと心配されるが、元気な素振りを見せると、無理すんなよと軽く背中を叩かれる。人に恵まれた所で良かった。

 今日の作業は道路の舗装工事なのだが、丁度バリケードから程良い距離であり、ここにも昴の介入があったことが分かる。有難いっちゃ、有難いが。程ほどにしないとこれもまた疑われやしないだろうか。さすがにそこまで考える者はいないかと、作業を進める。

 時折響くパトカーのサイレン。黒虎の拠点はこの辺りではない筈だが、少しビクッと反応してしまう。いつ奴等の所へ乗り込むのか聞いていなかったが、どうなっただろうか?

 そう考えていると、ふと誰かの走る姿が目に入る。それは一瞬だったが、あの銀髪。忘れもしないアイツだ。何故こんな所に!

 仕事を終え、部屋に戻るとテレビをつけた。チャンネルを変えても流れるニュースには国務長官の来日の件ばかり。少し待ってみると黒虎のことについて流れた。

 警察は横浜と新宿の黒虎の拠点を家宅捜索し、銃や大麻等の危険薬物を押収。構成員は銃刀法違反、大麻取締法違反、公務行妨害等何やら多くの罪状で捕らえられていた。そのニュースによると逃げた者も多く、警察が行方を追っているらしい。

 やはり、あの孔も今何処かに潜んでいるかもしれないのか。だが、奴も組織自体がああなってしまえば何もできない筈だ。今は大丈夫だと信じよう。

 それから何事も無く、普通に土工の仕事をして過ごす日々が一週間続いた。逃げているという黒虎の連中も何もしてこず、平和である。しかし、本当にこのまま何もしてこないのか?ただ、ただ気がかりだ。

 更に一週間後、昴から電話が入る。事務所に来いと。

 事務所に行くと、そこには組の皆の姿があった。だが少し少ない。十八人というところか。

 空いている椅子に腰掛けようとすると後ろから頭を叩かれる。


「桂、ご無沙汰だな。ちょっとは事務所に顔出せよ。」


 振り向くと徳本が居た。いつも通り、悩み等一欠片も無い顔をしている。いや、これは失礼だったかな。

 どうにも徳本としては俺に雑用係を押し付けたいらしい。俺が一番下っ端だから仕方ないが、土工の仕事もありなかなか顔を出すのは難しい。やはり、それは受けられないな。いや、実に残念だ。

 それから少しして昴から話が始まった。


「皆聞いてくれ。見ての通り、今日この場に組員の全員は居ない。今居ない奴等だが、連絡が取れなくなっている。」


 なっ!部屋がざわつく。


「恐らく黒虎の仕業だ。奴等警察にパクられたと思ったが、まだ残党が居る。しかも、その中にあの孔も居るんだ。こうなったら奴等を全て押さえないとまた隙を突いて襲ってくる。お前ら反撃に出るぞ、奴等を根絶やしにするんだ!」

「「はい!」」


 結局、黒虎とは直接白黒付けないといけないのか。だが、この方が分かりやすい。やってやるか。

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