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作品の完成度を高める方法  作者: 石宮鏡太郎
5/9

第5話 知識から物語は生まれない

 ――知らないから書けない。

 ときどき言われる言葉ですがわたしは好きではありません。

 創作における物語を否定している気がするからです。


 知識から物語は生まれません。


 神話を思い浮かべましょう。

 神話は知識から生まれた話でしょうか? それとも知恵から生まれた? まさかとは思いますが経験から生まれたのでしょうか?

 神話が生まれた当時、太古の人々は現代のわたしたちよりも知識を持っていたでしょうか。わたしはあまり変わらないと思っています。

 生活の知恵、身の回りの細々としたこと、土の匂い風の匂い、山の香り海の香り草の音、太陽の暖かさ……。それらは時代を越えて同じようにあるのではないでしょうか。

 むしろ現代はインターネットが発達し世界の声を手のひらで聴ける時代。先進国に住まう人々は情報の渦の中で生きています。知っていることは沢山あります。

 知識が物語を生むならばニュースを見て百科事典を引けば済むのではないでしょうか?


 改めて考えます。

 物語を生むのは知識でしょうか?

 それとも経験でしょうか?

 どちらも違うのではないかと思います。

 物語は想像をすることでのみ生まれるのではないでしょうか。

 昔の人々が未知に神々を見いだしたように夜空の星々を見て星座の物語を創造したように。


 想像力については幼児教育でかなり研究されている分野です。

 楽しい気持ちや、何かしらの感動によって強く発揮されることが分かっています。

 物語は想像力から生まれます。であれば想像力は心の動きである情動から生まれると言い換えることができるでしょう。

 物語は常に作者の情動によって生まれます。


 一方で批判されないことを念頭に置く場合は想像力が発揮されない気がします。

 わたしなりに理由を考えましたが、批判されないことは議論の対象となる部分が無いのと同義ではないでしょうか。

 議論の余地がないとは内容がありきたりであったり言いたいことを言わずに黙ってしまっている状態と言えます。

 黙っていて伝わるものなどありません。作者は作品において常に雄弁に語りましょう。リスクのない行動にはリターンもありません。リスクのない作品にリターンはないのです。


 さてここまで知識から物語は生まれないと書いてきました。まるで知識が不要かのようです。知性を批判している、と捉えられかねません。

 知識は必要です。この世のすべての概念を使って作品を創造すべきです。ありとあらゆるものが利用できるのです。ただし知識から物語は生まれない。ただそれだけです。


 知識や経験はこの創作論において大事な部分に関連します。そうです完成度です。

 知識や経験によって物語の構造や説明を改善させることができます。改善によって作品の完成度は高まります。

 想像力で物語の全体像を生み出し、知識や経験で魅力を引き出したり不足した内容を改善する。説明として分かりやすいものにするのも知識と経験の仕事です。

 改善に使用する知識や経験は2種類あるように思います。

 現実の知識や経験。

 作品内世界での知識や経験。

 両方使うこともあれば片方だけ使うこともあるでしょう。また、面白さのためにどちらも使わないという選択肢もあるかもしれません。

 1つの手段に囚われないでください。

 想像力で物語を生み出し、知識や経験で物語が伝わりやすいよう完成度を高めていくうちに新たな発想が浮かぶかもしれません。

 完成度を高めることは物語の成長でもあります。育った物語を枯らさないようにしましょう。


 最後にもう一度書きますが、知識から物語は生まれません。

 物語は常に作者の情動によって生まれるものだとわたしは確信しています。

 素晴らしい物語は情動を目覚めさせ人生に鮮やかな色をもたらします。

 あなたがこれから書く物語は運命の読者と出会いその人生を鮮やかに彩るでしょう。それがあなたの喜びの1つとなることを心から祈っています。

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